【外部配信テスト】ダ・ヴィンチ編集部が選んだ「今月のプラチナ本」は、かまど、みくのしん『本を読んだことがない32歳がはじめて本を読む 走れメロス・一房の葡萄・杜子春・本棚』
公開日:2024/11/21
あまたある新刊の中から、ダ・ヴィンチ編集部が厳選に厳選を重ねた一冊をご紹介!
誰が読んでも心にひびくであろう、高クオリティ作を見つけていくこのコーナー。
さあ、ONLY ONEの“輝き”を放つ、今月のプラチナ本は?
※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2024年11月号からの転載です。
かまど、みくのしん『本を読んだことがない32歳がはじめて本を読む 走れメロス・一房の葡萄・杜子春・本棚』
●あらすじ●
今まで本を読んだことがない32歳のWEBライター・みくのしんが、友人でありライター仲間のかまどの力を借りつつ、太宰治の「走れメロス」を読破する―100万人以上の目に留まる大ヒットとなったWEBメディア「オモコロ」発の記事がついに書籍化。「走れメロス」に加え、「一房の葡萄」「杜子春」、そして話題の作家・雨穴による書き下ろし短編「本棚」の読書体験が綴られる。
かまど●福岡県出身。株式会社バーグハンバーグバーグでディレクター、ライターとして活動中。WEBメディア「オモコロ」で多数の記事執筆に携わる。
みくのしん●東京都出身。前述の「オモコロ」ライターとして活躍後、バーグハンバーグバーグに入社。現在、オモコロ副編集長を務める。
編集部寸評
“自由”を自由に楽しむふたり
小説は自由に読んでいい。誰もが言うけれど、自由ほど厄介なものはない。みくのしん氏と同様、私も小説に苦手意識を感じていた時期がある。エッセイやノンフィクションはむしろ好んでいたのに何故か。それは小説が“自由”だから。みくのしん氏は奔放な想像力で、物語を驚くほどに視覚化して咀嚼する。“自由”さゆえに逸脱しても、かまど氏の献身的なサポートを得て着実に核心へと迫ってゆく。ふたりを通じて初めて小説に没入した日を思い出した。同時に、普段の読書を顧みて自省する。似田貝大介 本誌編集長。暑いと無性にカップ麺を食べたくなるんです。何故でしょう。今年は残暑が続くので、買い置き分が底をついてきました。冬が恋しい。
打算なきエキサイティング読書に身を任せろ!
小説を読むとき、恥ずかしながら常にちょっと下心を抱いてしまう。賢くなりたいとか、悩みを解決するヒントがほしいとか、自分のイデオロギーを補強してほしいとか。でもみくのしんさんの捨て身でエキサイティングな読みっぷりを追いかけているうちに、そういった打算が遠のいて、ひたすら読むことの快楽に身を任せられるようになってくる。いちばんのお気に入りは「杜子春」の回。笑わせて、ぶちあげて、最後に泣かす(お母さん!)。ああ小説って、やっぱり楽しい!!西條弓子 かまどさんの優しい伴走者っぷりがまた素敵。なんてイカしたなバディなんだろう。推せる。冒頭回のメロスとセリヌンティウスのよう(?)。
全力読書のすすめ
読書体験が人それぞれであることはわかっているつもりだった。プラチナ本の選考会議ひとつとっても、編集部のメンバーが薦める本や理由が全員同じになることなんて一度もない。じゃあ、実際のところどうやって読んでいるんだろう。それを逐一実況してくれるのが本書だ。みくのしんさんが泣いたりティッシュをちぎったり拳を振りかぶったりしながら、一文一文を全身で味わい尽くしている姿はアトラクションを体験しているよう。「本に正しい読み方なんてない」ことを体現した一冊。三村遼子 ミステリー特集のために「DETECTIVE X CASE FILE #2『ブラックローズ』」を先行プレイ。白熱した3時間を過ごしました。詳しくはP50へ!
本の読み方にも人柄はにじみでる
人がどんな本を読んでいるかは知ることができても、どんな読書をしているかは知る機会がなかった。かまどさんの包み込んでくれるような並走のもと、音読し、相槌をうち、一行一行と全身で向き合うみくのしんさんの読書スタイルがまぶしい。文章のどこにみくのしんさんの感情が揺さぶられるのか、自分も並走しているような気持ちで読み進める。感情を爆発させ、時には涙するみくのしんさんの読み方は優しい。本の読み方にも人柄や生き方って出るんだな、とあらためて気づかされた。
久保田朝子 ふるさと納税の広告が出てくるようになったなと思ったらもう10月……。今年の返礼品を選びつつも、時の流れがはやすぎて身に沁みます。
自由に本を読むということ
みくのしんさんは、本の一行一行を丁寧に読み進めていく。時にツッコミを入れたり、涙を流したり、まさに一喜一憂しながら。そんな彼の姿に、さまざまな本と出合い、物語世界に浸る喜びを改めて思う。一方で、読書に慣れてしまった自分がいることも。正しさに囚われがちな私には、彼の自由な読書は、どこか羨ましく、眩しくも感じられる。でも、だからこそ、本書内で度々語られる言葉が刺さる。「本に正しい読み方なんてない」。本を読む幸せを噛みしめつつ、さて、今日も一冊。
前田 萌 箱根に行きました。車で行ったのですが、駐車場の空きがない……! 観光地だからこその難点ですね。でもドライブも楽しいので悩みどころです。
こんな読書の仕方があったなんて!
「お前、読書向いてるよ」。これは作中で本好きのかまどさんが、これまでに本を読んだことがなかったみくのしんさんに向けて放った言葉だ。完全に同意である。一文ずつ一喜一憂しながら読み進めるみくのしんさんの生き生きとした読書を見て、本が好きだと思っていた自分自身を疑いたくもなってくる。私も同じ作品を読んだことがあるはずなのに、この2人と一緒に物語を辿るともっと広い作品の景色が見えてくる気がするのだ。ぜひ本作を読んで、読書の深みにハマってみてほしい。
笹渕りり子 フラダンスを習い始めた。新しいことを学ぶのって楽しい!と思いながら、目の前の鏡を見ると珍妙な動きをしている自分がいて先が思いやられる。
こんなふうに本を読んでみたい!
誰かと読んだ本の話をすることはあれど、誰かが本を読んでいるところに立ち会うという経験はないのではないか。そんな経験ができる本作は始終新鮮そのもの。「どっち!? これはいけた!? どっち?!」「こんなのもう映画じゃねえか!!」「俺の気持ちも知らないで!!」……これは本当に私の知っている古典名作なのか? こんなに面白く読めたのか!と驚嘆。作品の魅力を再発見でき、本は自分の好きなように読めばいいのだということを改めて教えてくれる一冊。読書家の方にもおすすめです。
三条 凪 本の内容について感想を語り合うことはあったが、これからは「どんな風に読書をしているか」も聞いてみようと思った。意外な発見がありそうだ。
「世界はまだこんな本を隠し持ってたのかよ!!」
読書の良いところが詰まった一冊だと思う。読書の魅力は、さまざまな文章や言葉が、時代や国などありとあらゆるものを飛び越えて、今を生きる自分に語り掛けてくるということだ。不変の教えや美しさに気づき、軽やかにアップデートされた思想に感動を覚える。みくのしんさんが物語に対してそうしたように、私も彼の放つ一文一文を噛み締めるなかで、本の面白さを語るのが、それもまた本であるということに無限の幸せを感じる。きっとこの一冊もいつか違う場所の誰かに届くのだろう。
重松実歩 かまどさんのコメントにほっこり。「誰も怒らないよ。読書ってそういうものだから。」それぞれが自由に楽しむ、これもまた読書の大好きなところです。
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