【検証用】テスト記事20241224
公開日:2024/12/24
二人の若い紳士しんしが、すっかりイギリスの兵隊のかたちをして、ぴかぴかする鉄砲てっぽうをかついで、白熊しろくまのような犬を二疋ひきつれて、だいぶ山奥やまおくの、木の葉のかさかさしたとこを、こんなことを云いいながら、あるいておりました。
「ぜんたい、ここらの山は怪けしからんね。鳥も獣けものも一疋も居やがらん。なんでも構わないから、早くタンタアーンと、やって見たいもんだなあ。」
「鹿しかの黄いろな横っ腹なんぞに、二三発お見舞みまいもうしたら、ずいぶん痛快だろうねえ。くるくるまわって、それからどたっと倒たおれるだろうねえ。」
それはだいぶの山奥でした。案内してきた専門の鉄砲打ちも、ちょっとまごついて、どこかへ行ってしまったくらいの山奥でした。
それに、あんまり山が物凄ものすごいので、その白熊のような犬が、二疋いっしょにめまいを起こして、しばらく吠うなって、それから泡あわを吐はいて死んでしまいました。
「じつにぼくは、二千四百円の損害だ」と一人の紳士が、その犬の眼まぶたを、ちょっとかえしてみて言いました。
「ぼくは二千八百円の損害だ。」と、もひとりが、くやしそうに、あたまをまげて言いました。
はじめの紳士は、すこし顔いろを悪くして、じっと、もひとりの紳士の、顔つきを見ながら云いました。
「ぼくはもう戻もどろうとおもう。」
「さあ、ぼくもちょうど寒くはなったし腹は空すいてきたし戻ろうとおもう。」
「そいじゃ、これで切りあげよう。なあに戻りに、昨日きのうの宿屋で、山鳥を拾円じゅうえんも買って帰ればいい。」
「兎うさぎもでていたねえ。そうすれば結局おんなじこった。では帰ろうじゃないか」
ところがどうも困ったことは、どっちへ行けば戻れるのか、いっこうに見当がつかなくなっていました。
風がどうと吹ふいてきて、草はざわざわ、木の葉はかさかさ、木はごとんごとんと鳴りました。
「どうも腹が空いた。さっきから横っ腹が痛くてたまらないんだ。」
「ぼくもそうだ。もうあんまりあるきたくないな。」
「あるきたくないよ。ああ困ったなあ、何かたべたいなあ。」
「喰たべたいもんだなあ」
二人の紳士は、ざわざわ鳴るすすきの中で、こんなことを云いました。
その時ふとうしろを見ますと、立派な一軒いっけんの西洋造りの家がありました。
そして玄関げんかんには
RESTAURANT
西洋料理店
WILDCAT HOUSE
山猫軒
という札がでていました。