メカニカルデザインの名手が見つめる、安彦良和のクリエイティブ――『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』メカニックデザイン・山根公利インタビュー

アニメ

公開日:2022/6/24

機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島
機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島
全国の劇場にて公開中
© 創通・サンライズ

 名作は色褪せない――1980年代に一世を風靡し、いまもなおシリーズ新作が作りつづけられているガンダムシリーズ。その原点ともいうべき初代TVアニメ『機動戦士ガンダム』の1エピソードが、当時のメインスタッフ・安彦良和の手によって翻案され、劇場版アニメ化された。

 翻案されたエピソードは第15話「ククルス・ドアンの島」。シリーズの前半にオンエアされた1話完結型のエピソードであり、一年戦争を描く『機動戦士ガンダム』のストーリーとは一線を画すような脱走兵と戦災孤児の人間ドラマが、当時から語り草になっていたエピソードだ。この物語を現在のアニメーション技術と、劇場版というスケール感で描いたのが、本作『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島(『ククルス・ドアンの島』)』となる。

 本作にメカニカルデザインのひとりとして参加している山根公利氏は、『機動武闘伝Gガンダム』や『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』などさまざまなガンダムシリーズでメカデザインを提供しているクリエイター。安彦良和監督作品『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』でも、ミリタリーテイストあふれるデザインを手がけている。彼は映画『ククルス・ドアンの島』で安彦良和の描くメカをどのようにアニメ用に起こしたのか。メカデザイナーとしての視点を伺った。

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「雲の上の人」だった安彦良和との出会い

――『機動戦士ガンダム』いわゆるファーストガンダムという作品にはどんな思い入れをおもちですか。

山根:実は僕は、放送当時ロボットアニメにあまり興味がなかったんですよ。『機動戦士ガンダム』が放送されたときは中学生で、その前に『宇宙戦艦ヤマト』を見ていたんです。「ヤマト」は大人っぽい作品で、アニメーションも大人のドラマを描くものになっていくんだろうなと思っていました。玩具的なロボットアニメは役割を終えたんだという印象があったんです。

 それと『マジンガーZ』のオープニングに、なぜか第二次世界大戦に使われたドイツ軍のIV号戦車らしき物が出てくるんです。今なら永井豪のモチーフの一つとして解釈もできるのですが、それを見て、なぜ現代が舞台の作品に古い戦車が出てくるんだろう、この作品のスタッフは真面目にアニメを作っているんだろうか?と戦車好きな子どもだったのが祟って(笑)、ロボットアニメに対して偏見を持ってしまっていたんです。田舎だから富野監督の「無敵超人ザンボット3」「無敵鋼人ダイターン3」も放送されていなかった。だから『機動戦士ガンダム』が放送されているときは、もうロボット物の時代ではないだろうと見ていなかったんです。ところが、まわりの友人が面白いというので、あとから見始めて。そうしたら、SF的にもドラマ的にも違和感なく入り込むことができた。これはすごいなと。特にザクのデザインとカラーリングは素晴らしかったと思いました。

――『機動戦士ガンダム』のアニメーションディレクターだった安彦良和さんには、どんな印象をお持ちでしたか。

山根:「雲の上の存在」ですよね。一緒にお仕事をするということはまったく想像していなかったです。『ガンダム』の制作に関わるようになってからも、スタッフとファーストガンダムのスタッフが打ち合わせで顔を合わせることはまずありませんでした。昔は違ったのかもしれませんが、僕が参加し始めたころは、担当別に必要な打ち合わせだけをして、そのあとは各自で仕事をして。それがまとまって作品になっていく感じですよね。だから、安彦さんが総監督をするというアニメ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』の仕事が来たときも、安彦さんとは直接お会いすることはないだろうと思っていたんです。ところが、『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では、安彦さんとメカデザイナーが打ち合わせをする場がもたれたんです。

――そこで安彦監督と初めてお会いされたんですね。

山根:そうです。顔合わせのような感じでその時は安彦さんと、今西隆志監督と大河原邦男さん、カトキハジメさんと山根というメンバーで。そこで初めて打ち合わせをしました。

 大河原さんとお会いするのも凄く久しぶりでした。僕は『機動武闘伝Gガンダム』(1994年)からずっと今まで多くのガンダムシリーズの仕事にかかわってきましたが、それまでは打ち合わせでお会いしたことがなかったんです。大きなプロジェクトなんだなと感じました。

――そのときは、安彦監督とどんなお話をされたんですか。

山根:安彦さんは当然、僕のことは知らないだろうと思っていたので、自分のことを知っていただくために自分の画集(『山根公利 メカ図鑑』)をお渡ししたんです。「それでこういう絵を描いています」とお話したんです。そうしたら……面白い出来事があって。

――聞かせてください!

山根:僕はこれまでまわりのスタッフにサインをもらったことがないんです。やはりプロとして同じ仕事の土俵に立つ以上、ファンの立場でいてはいけないと思っていますから。でも、安彦さんは雲の上の人ですし流れ的に最後に「安彦さんの著書にサインをもらえませんか?」という話をしたんですよ。そうしたら、安彦さんが「僕のサインは今度するから、山根さんがサインをしてよ」と、お渡しした僕の画集を開かれたんです。それで、すごい緊張感の中、僕が安彦さんにサインをすることになってしまったんです……。逆だろう、と(笑)。

――ははは。

山根:安彦さんは絵描き同士としての挨拶的に、僕との距離を縮めようとしてくださったんだと思います。緊張しましたね……。

漫画やアニメを拝見していると、安彦さんの反骨精神や社会に対する思いを感じる

――アニメ版『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では山根さんはガンタンクやモビルワーカー等も担当されていましたね。安彦さんの作品としては続けて『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』のメカデザインにも参加することになるわけですが、まず原作となるTVシリーズ第15話にはどんな印象をお持ちでしたか。

山根:僕は人のドラマを描いた戦争映画が好きなんですね。だから『機動戦士ガンダム』でも好きなエピソードは「戦場は荒野」(第8話)や「再会、母よ…」(第13話)が好きなんです。さっき僕は『宇宙戦艦ヤマト』が好きだとお話をしたんですが、『ヤマト』には各乗組員の家庭の事情などは地球との通信シーン等で少しだけ垣間見えるだけだったんですが、『機動戦士ガンダム』は市民のドラマを積極的に描いていたんです。『ヤマト』がやりにくかった事を、『ガンダム』は補完している。そこが、僕が『ガンダム』を好きになった理由のひとつだったんです。

 それで、第15話なんですが、先ほどもお話した通り、本放送のときには『機動戦士ガンダム』は途中から見たものですから。第15話は再放送か何かで見たんだと思います。「作画崩壊」なんてよく言われていますが、当時のアニメーションは作画が崩れることなんて当たり前でしたから、気にもなりませんでした。純粋に、おもしろい話だなと思っていましたね。僕が好きな『ガンダム』だなと。

――そのエピソードを安彦監督が翻案してアニメ化するということにはどんな印象がありましたか。

山根:安彦さんのお人柄や手がけられた漫画やアニメを拝見していると、安彦さんの反骨精神や若者の社会に対する思いみたいなものを感じるんです。そう考えたときに、安彦さんらしいものを選んだなっていう感じがしましたね。なので、年齢の幅を広げて子どもがたくさん出てくるというのが安彦さんらしいな、と思いました。前述したように戦争に巻き込まれた市民を描くエピソードは好きだったので、安彦さんがどんな作品にするんだろうと楽しみになりましたね。

――山根さんは『ククルス・ドアンの島』でどんなパートをご担当されたんですか。

山根:最初にリモートで安彦さんやカトキハジメさん、制作の方々と打ち合わせをしたときには、具体的な担当は決まっていなかったんです。安彦さんはまず「ホワイトベースのブリッジの動線を直したい」とおっしゃっていたんです。テレビシリーズの時の廊下の構造的矛盾を気になされていたようでした。実はアニメ版『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN』でも自分がデザインを担当して別の解決方法を取っていましたが、より自然な感じにしたいという事で手直しをしました。

 僕としては、無人島で子どもたちが暮らすためのライフラインをどうするのかが気になっていたんですけど、そこは美術さんが担当してくださるということで。僕が担当したのがホワイトベース関係とガンペリーで、アニメ版『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN』で準備していたものの外装改修や内装作成。ラ・グランパと艦隊、そのブリッジ内装や島の内部、ドアンのボート等ですね。実は、安彦さんは漫画版の『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』で「ガンペリー」を描くときは、僕が『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』(1996年)でデザインした「ガンペリー」をモデルにされていたんです。

――おお、そうだったんですね。

山根:実は『08小隊』のときは、オリジナルの『機動戦士ガンダム』の「ガンペリー」から、デザインを少しだけ変えていたところがあるんですね。具体的に言うと、コックピット正面のガラスの枚数が『機動戦士ガンダム』だと3枚、『08小隊』だと2枚になっています。それで今回の映画『ククルス・ドアンの島』を作るにあたって、オリジナルの『機動戦士ガンダム』がベースになるのだから、「ガンペリー」をオリジナルのデザインの3枚にさせてほしいと、安彦さんにお願いしたんです。そうしたら安彦さんが「窓は2枚のほうが、コックピットが顔のように見えて良いよ」と、そのままになったんです。

機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島
『 機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島 』 ホワイトベース

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『 機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島 』 ガンペリー

機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島
『 機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島 』 場面写真:ガンペリーの正面ガラス

――興味深いです。安彦さんはメカであってもキャラクター性を大事にされるんですね。今回のメカニカルデザインの担当者はどのように決まったんですか。

山根:そのあたりのふりわけは制作サイドに決めてもらいました。アニメ『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN』の流れでモビルスーツ関連は大河原邦男さん、カトキハジメさんが担当して、僕は艦船その他を担当。MS絡みでルッグンはカトキさんにお願いしました。コア・ブースターもカトキさんですね。

――地球連邦軍の高官ゴップの専用艦「ラ・グランパ」は、ゴップのキャラクター性を感じる巨大航空母艦です。こちらはどのようにデザインをされたのでしょうか。

山根:「ラ・グランパ」は安彦さんのラフがあったんです。そのラフを現代のテクノロジーや兵器として説得力があるように、と考えながら決定稿にしていきました。「ラ・グランパ」は移動要塞的な巨大空母で、いわば海上の「ビッグ・トレー」(地球連邦軍の大型陸戦艦)的な存在なのでしょうね。おそらく実在した戦艦大和と同じように、現代の戦争の流れにはそぐわない時代遅れの巨大艦船で、使わなくなっていたものを、オデッサ作戦で海上からの砲撃とミサイルによる地上支援のために、持ち出してきたんだろうなと。そういう、旧来の大艦巨砲主義のような雰囲気を出すために、空母の化け物のような象徴的なデザインになっています。どれだけ大きいんだという主砲をハリネズミのようにたくさんつけて、地球連邦軍の海上拠点はここなんだと一目でわかる。キャラクター的な描写としては満点ですよね。決定稿に至るまで安彦さんからもすんなりとOKをいただきました。

――艦長のゴップのキャラクター性も表しているような艦船ですね。

山根:ゴップの性格的なところの演出もあるだろうし、彼は戦略的な思想も時代遅れであるところがあるようなので、そういうキャラクター性を織り込むことは、デザインにおいて基本的な部分にはなりますね。ちなみにブリッジのゴップの席の後ろは装甲指揮室(シェルター)の壁なんですよね。

――メカデザインにもキャラクター性は必要なんですね。

山根:昔のことですが、僕が『08小隊』で「ビッグ・トレー」のデザインをしたときに、巨大な大砲を装備するのはミリタリー的にもありえないんじゃないかと思って、大砲を外したデザインを描いたことがあるんです。でも、その後に経験を積むにつれて、デザインとはリアリティーそれだけじゃないんだと。メカが出るシーンは決して長い時間ではないですから、一目でキャラクター性や役割がわかるデザインが脇役メカには大事だとわかってきたんです。

――「ラ・グランパ」に関わったのはデザインだけですか。

山根:「ラ・グランパ」は外観が本編に3カット登場しているんですが、依頼が有ってラストのアレグランサ島海域2カット分はこちらで原画を下敷きにして、艦隊込みでそのうえに修正を入れています。周囲の艦船は3種類を過去作品を参考にデザインを作りました。ステルス的な所は現代のトレンドの名残ですね。あと、ディッシュ機内のレビル将軍が見下ろすビッグ・トレー級の2番艦「モルトケ」も描いてほしいということで、絵コンテを元に原画と背景原図を描き起こしました。

――メカ作画もご担当されていたんですね。美術設定的なところでいうと、ドアンの島のミサイル発射場は山根さんのお仕事だそうですね。

山根:あれも安彦さんのラフがあったんです。それをディテールアップした感じでしたね。ラフの段階で、火山のマグマだまりのあとを改造して作ったような地下基地で、70年代のスパイ映画のテイストがあったんです。だから、自分もそのテイストを活かそうと、70年代の核ミサイルサイトのイメージをコンソール等に足していきました。基地内部のパネルの表示やスイッチ類はアナログな感じにして、冷戦時代につくられた基地の雰囲気を出し、ミサイルの発射段階のパネルの用語も指定を任されました。今回映画『ククルス・ドアンの島』の作業の中で一番上手く画面で活かされたと思うところですね。

――70年代の雰囲気は、79年に放送された『機動戦士ガンダム』に染み込んでいるものでもありますね。

山根:一年戦争の間に大きな核ミサイル基地を建築することは難しそうですから、おそらく冷戦時代に放棄された基地をジオン軍は再利用しているんだろうと想像しながらデザインしていました。

――ミサイルも山根さんのデザインですか?

山根:安彦さんのラフとコンテが有りました。発射されてカーマンラインを超えて分離した2段目に翼が有るのは落下時に姿勢制御を想定している感じで、昨今話題の「極超音速ミサイル」の滑空機能を感じさせます。あれは飛行高度が普通の弾道ミサイルに比べて低く、艦隊からの追撃ミサイルが追いつける可能性が有った理由にもなるかなと思えます。うまく現代の兵器技術のトレンドとシンクロできてるのが面白いですね。

――メカニカルデザイン、作画、美術設定まで山根さんのお仕事の幅はかなり広かったんですね。

山根:そうですね。あとドアンが夜に部屋で見ている本と机に、ミサイルの資料図面があるんですが、あれも自分が描いたんです。図面や資料ならそれこそ3DCGで描けばいいと思うんですが、僕のところに発注が来たのでアナログにフォトショップで作成しました。本編ではほんの少し出るだけなので、よくわからないと思うんですが、ソフトを買われた方は静止画で見てみてください(笑)。

機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島
ゴップ専用艦(ラ・グランパ):安彦良和監督デザインラフ

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『 機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島 』 ゴップ専用艦(ラ・グランパ)

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『 機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島 』 場面写真:アレグランサ島海域(山根さん原画修正カット2点)

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『 機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島 』 場面写真:ビッグ・トレー級2番艦モルトケ(山根さん原画・背景原図担当カット)

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『 機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島 』 場面写真:ミサイルの資料

『ククルス・ドアンの島』は、今の時代にハマった作品だと感じる

――今回、モビルスーツ監修はカトキハジメさんのお仕事だそうですが、ククルス・ドアンが乗る異形なザク(通称ドアンザク)についてはどんな印象をお持ちでしたか。

山根:実は、映画『ククルス・ドアンの島』はコロナ禍での制作だったので、打ち合わせや作業はすべてリモートで行われたんです。だから、カトキさんがどんな作業をされていたのかは全然わからなかったんですね。初めて見たのが絵コンテの表紙になっていたドアンのザクだったんです。さすがに、意表を突かれました。半信半疑で絵コンテの表紙にありがちな冗談だと思ったんだけど(笑)、カトキさんらしいアプローチであるとも思いました。アニメ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』のときも、カトキさんは安彦さんの原作漫画の細かな変化をバリエーション違いとして全て拾い上げてデザインをまとめられていました。

 そういうリスペクトの仕方をしてアニメ化に臨まれていて、その流れから考えると、カトキさんが第15話のザクを異形のザクとして解釈するのは、自然なことだなとも思いました。ただ、面白いと思う反面、第15話の「ククルス・ドアンの島」のリメイクという意味では、作画崩壊の象徴ともいわれるザクをそのままにしてしまうのは、制作の理念を歪めてしまうんじゃないかなと不安も有りましたが、映画のテーマの本質に影響がある訳でもない…とも考えられます。異形のドアンザクも面白いし、話題作りにはなったけれど、ノーマルザクのバージョンの映画『ククルス・ドアンの島』も見てみたかったという思いもありますね。

――完成した「ククルス・ドアンの島」をご覧になってどんな印象をおもちでしたか。

山根:3DCGスタッフによるモビルスーツの重量感や動きがすごくこなれていて、とても満足しました。『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』とも違う、昔からある戦闘をいまの技術で見せてくれた感じがあります。安彦さんの考える、時代劇のような勧善懲悪の戦い方が面白くて、富野由悠季さんの『ガンダム』ともまた違う。娯楽に振り切られて作ったんだなと、思い切りのよさを感じました。エンディングも大団円になっていますよね。アムロたちにこれから激しい戦いが待っていることはファンであればみんな知っているのだけれど、平和的に終わっていく。戦災孤児のつらさを、あえてほとんど見せないですよね。悲惨な状況であっても、希望をもって生きていかないといけないということを、安彦さんが伝えたかったのかなと思いました。今の時代にハマった作品だと感じています。

――コロナ禍で完全リモートでの作業だったと思いますが、映画『ククルス・ドアンの島』はどんなお仕事でしたか。

山根:結局、今回は安彦さんとは一度も直接お会いできなかったんですけど、僕が描いたデザインに、安彦さんから直接的な指示もいただきましたし、安彦さんから信頼していただけている感じもありましたので、手ごたえがありましたね。

――ちなみに、安彦さんのサインはいただくことはできたんですか?

山根:まだ頂いてないですね…。もちろん安彦さんのサインは貴重ですが、プロの関係で仕事をしていますからね。サインはまた機会のある時でいいかなと思っています(笑)。

取材・文=志田英邦

▼プロフィール
山根公利(やまね・きみとし)
メカニックデザイナー。1994年『機動武闘伝Gガンダム』や1996年『天空のエスカフローネ』、1998年『カウボーイビバップ』などでメカニックデザインを担当。近作では『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』劇場版『Gのレコンギスタ IV』「激闘に叫ぶ愛」劇場版『Gのレコンギスタ V』「死線を超えて」などがある。

機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島

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