ダ・ヴィンチWeb「学生エッセイコンテスト」結果発表! 4位作品『うつになった美大生は街に美術室を作った』

文芸・カルチャー

更新日:2022/6/28

 2022年4月、ダ・ヴィンチWebと、学生のクリエイティブなアイデアを募るプラットフォーム「FLASPO」がコラボレーションし、学生向けエッセイコンテストを開催しました。テーマは『コロナ禍の学生生活』。想像をはるかに上回る多くの応募が寄せられ、しかもそのどれもが力作揃い。編集部全員で目を通し、入賞作品を決定しました。

 今回は、4位に入賞したペンネームりせこさんの作品をご紹介します。

 タイトルは、『うつになった美大生は街に美術室を作った』です。

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2020年、大学2年の秋。私はうつ病と診断された。

授業は一回もサボったことが無かったのに、突然学校に行けなくなった。

一人暮らしもままならず、私は地元に戻った。

 

地元は千葉の決して都会とは言えない、けれども魅力のある田舎とも言えない中途半端な街だ。

私はそんな街が嫌いだった。

 

小さい頃から絵を描くことが好きで、小学生の頃から美大に進学することを夢見ていたが、美術に関心がないこの街では、「美大になんて行ってどうするの?」「稼げないでしょ」と高校卒業までずっと言われ続け、やっと抜け出せたと思っていたのに。

 

大学1年生の頃は楽しかった。東京では美術館もギャラリーもたくさんあって。それなのに。

 

コロナになって外出が制限され、人にも会えず、ついにうつも発症して

またこの街に戻ってくることになってしまった。

 

地元に戻ってからはなんとか進級するために最低限の必修の単位を取ろうと頑張った。

そのうちの一つに「対象エリアを設定して調査し、その結果をもとに表現をする」という授業があった。

今思えばここが全ての始まりだった。

 

調査エリアは近くの商店街に決めた。

この商店街は俗にいうシャッター街で、私は生まれてからそこに人がいるところを見たことがない。

しかし、ずっと地元に住んでいる両親に聞くと「昔は竹下通りくらい人がいたのにね」と信じられないことを言っていた。

実際にそんなに人がいたのか写真を市立図書館に探しに行っても一枚も出てこず、やっと商店街の一人にコンタクトが取れて、何枚か当時の写真を手に入れることができた。

そこには私が初めて見る商店街の姿が写っていた。

 

今の降りているシャッターの上に、当時の賑わっている様子を重ねた油絵を3作作成し、大学で提出したところ「地元で展示はやらないの?商店街の人に見てもらえばいいのに」と言われた。でも前の通り美術に関心のある街ではないためギャラリーなんてない。

 

いや、ギャラリーを作ればいいのではないか?

 

私の祖母の家はコンビニを営んでいたが、数十年以上前に閉店し、そのスペースはずっと物置になっていた。

そこを高校の部活の後輩たちと2週間かけて掃除し、なんとかギャラリーを作り上げた。

 

ギャラリーは9日間の営業で来場者は143人にも上った。

正直こんな街にギャラリーを作っても誰もこないと思ったが、ご家族を誘って何回も来てくださる方や、「懐かしいねぇ」と言ってくれる方が多くて、「あぁ、美術ってこういうことのためにあるんだな」と強く感じた。

 

ところで、そんなギャラリーの名前は「美術室 ねこのひたい」。

アトリエにしてはちょっと狭いけれど、ギャラリーにしてはちょっと広い。

そんなねこのひたいほどの美術室、という意味でつけた名前だ。

美術室は学校にしか存在しない、学生の時にしか入れない空間だけれど、

大人になってもふっと心が軽くなれるような美術室を街に作りたいという願いを込めて。

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 学生の皆さんが書いてくださったエッセイの入賞作品は、今後順次ダ・ヴィンチWebで公開していきます。ぜひご注目ください。

FLASPOとは、学生のクリエイティブなアイデアを募るコンテストプラットフォームです。企業・自治体が学生向けのオンラインコンテストを開催し、学生が解決アイデアを考えることで、アイデア収集・PR・採用など幅広い活用が可能です。
HP :https://flaspo.jp/