男女の友情、禁断の愛……“20代の青春”をテーマにした2ndミニアルバム『君と僕の唄』で見せる新境地──学芸大青春メンバー全員座談会(後編)
公開日:2022/6/23
2次元と3次元を行き来する本格派ダンス&ボーカルグループ「学芸大青春(ガクゲイダイジュネス)」。2022年3月から開催した全国7都市8公演の4thツアー「PUMP ME UP!!」では、3次元でのパフォーマンスの比重を高め、過去最多の曲数を披露。確かな成長を見せつけた。3周年を迎える9月、10月には、大阪・東京での大型ライブも予定している。
さらに、6月22日には2枚目となるミニアルバム『君と僕の唄』もリリース。そんな彼らに、ツアーの手ごたえを語っていただくとともに、今作の全曲解説をお願いした。後編では、『君と僕の唄』について語り合ってもらった。
“20代の青春”をコンセプトにした、親しみやすい楽曲がそろってます(優輝)
──6月22日に、2ndミニアルバム『君と僕の唄』が発売されました。「僕ら」でも「君たち」でもない「君と僕」というタイトルどおり、一対一でこちらに語りかけてくるようなパーソナルなアルバムですよね。まず、全体のコンセプトを教えてください。
優輝:今回は、“20代の青春”をコンセプトにしています。20代って若いからこそ、いろんな恋愛や友情がありますよね。そういう意味でも、親しみやすい身近な楽曲が多かったので、今回は僕たちとしてははじめて、タイトルも日本語にしました。
将綺:おっしゃるとおり、「君」と「僕」に訴えかけるような楽曲がそろってます。
──ミニアルバムといいつつ、8曲も収録されています。
将綺:スタッフさんに聞き返しましたもん、「え、ミニアルバムですか?」って(笑)。
──では、それぞれの曲についておうかがいします。
・「Easy Peasy」
将綺:「Easy Peasy」は僕たちの内面を表現するような、「君と僕」に訴えかける楽曲になっています。この曲がリード曲だからこそ、ミニアルバムのタイトルが『君と僕の唄』になったような気がしますね。
優輝:今の世の中、苦しいこと、つらいことがたくさんあります。「僕」は、そんな「君」の心のよりどころになりたい。そういう歌ですよね。さらに、次元を超える僕たちの面白さを二重の意味で歌詞に加えています。
勇仁:自分のパートに「遊ぼう」って歌詞があるんです。自分たちのライブに遊びに来れば、苦しいことや悩んでることも忘れるくらい最高の時間にしてあげるって気持ちを込めて歌ったので、ぜひこの曲を聴いてライブに遊びに来てほしいです。
陽介:今回のMVでは、ダンスに演技の要素を加えたコンテンポラリーダンスもはじめて披露しています。メンバーが踊る姿はいつも見てますけど、演技の加わったダンスは新鮮だったので、MVの見どころになってるんじゃないかと思います。
蓮:新しい挑戦ができて、曲もMVもいろんな経験を積めました。
・「My Side」
優輝:男女の友情を描いた曲ですが、いろいろなとらえ方ができますよね。僕らとファンのみなさんの関係性を思い浮かべて、みんなを励ますような楽曲として聴くこともできるし、自分と仲のいい友達の曲としても聴けます。いろいろ楽しんでほしいですね。振付も、登美丘高校ダンス部・バブリーダンスで有名なアカネキカクのakaneさんとセッションしながら一緒に考えました。
将綺:曲名は「My Side」なんですけど、サビでは「I will stay by your side」って歌っているんですよね。僕らは、みなさんの心のよりどころになっている側かもしれないですが、ライブで歌った時に「やっぱりこれって聴いてくれる人がいないと完成しない曲だな」ってあらためて気づいたんです。ファンのみなさんと作り上げた曲だと思っています。
勇仁:MVの撮影は、ずっと風が強くて大変でした(笑)。特に屋上のシーン、歩道橋のシーンがとにかく寒かった。
陽介:撮影のために集合した時には、まだ日が昇ってなかったんですよ。それがテイクを重ねていくごとにだんだん日が出てきて、最後は夕日が沈む中での撮影になっていって。その感じが印象的でした。朝、メンバー5人でセンター街で撮影してるその状況が非日常的で、一生の思い出になりました。
蓮:スクランブル交差点で撮ったのも気持ちよかったです。普段やると変な人だと思われそうだけど(笑)、いい機会でした。
・「雲の切れ間」
優輝:久しぶりのストレートな恋愛曲です。SIRUPさんが所属しているSTYRISM INC.のイケガミキヨシさんが作曲してくださいました。僕はもともとSIRUPさんが好きで、個人的にも大好きな曲になりました。
蓮:作り方がいつもと違って面白かったです。僕はBメロを歌ってるんですけど、レコーディングした歌をエディットして別のメロディーを作ってくださって。それが最後のサビ前に入っているのですが、自分の声なのに自分の歌じゃないような、すごく不思議な感覚でした。
勇仁:レコーディングでは、自由にやらせていただきました。落ちサビ後にフェイクしてるんですけど、仮歌やデモにはフェイクが入っていなくて。レコーディング中に、「勇仁君、ここちょっとフェイクやってみようか」と言われて、その場で生まれたアドリブをそのまま音源にしていただけたので、より一緒に音楽を作り上げてる感じがしました。僕らを信頼していただけてるのかなと感じられてうれしかったです。
・「予報通り、雨。- singing by Ren -」
蓮:この曲は作詞と作曲をしているんですけど、等身大の自分の気持ちを書こうと思いました。みんな非日常なことを求めるけれど、そういうことって意外と起こらないし、もし起きたとしても人間ってすぐ慣れちゃうと思うんです。結局、毎日いつも通りだね、ということを「予報通り」という言葉で表現しました。
今回はトラックも作ったんですけど、ボカロみたいな曲にしたくて。そこでボカロの曲を研究したら、いい意味でちょっとチープな音の作りが多いなと思ったんです。なので、僕がトラックを作る時も、もともとソフトに入っている無料の音源だけを使って、音色が派手になりすぎないようにしました。
・「僕らのNew Day – singing by Yuto -」
勇仁:STYRISM INC.のイケガミキヨシさんにいただいた楽曲です。次のステージに進もう、新しい扉を開けよう、という前向きな歌詞なので、自分もそういう世界観を出せたらいいなと思って歌いました。ディレクションも、今までトライしたことがない歌い方が多くて。例えば、もうちょっと長めに語尾を伸ばしたほうが気持ちいいし、自分らしさが出せると思うようなところも、トラックとの相性を考えてあえて短めに切ったり。いつもと違う歌い方を意識しました。
そんな中で、落ちサビだけは自分の気持ちよさを優先しています。フェイクもその場のアドリブで入れましたね。7パターンくらい連続で録って、それをお任せでアレンジしていただきました。自分の新しい面に気づけたし、自分らしさも出せたんじゃないかと思います。
・「ヨルガオ – singing by Masaki -」
将綺:忘れられない人を思い浮かべながら、禁断の愛を歌った楽曲です。STYRISM INC.のイケガミキヨシさんとのセッションでしたが、同じく作り方が特殊で。最初いただいていたデモと完成したバージョンではちょっと音が違って、完成版ではベースの低音が増えています。
最初、僕は熱い思いで禁断の愛を歌おうと考えていたんですが、「ちょっと力が強すぎる。もっと無機質で、魂が抜けてしまったような、途方にくれるような歌が欲しいです」と言っていただいて。それで、今までにないような殺風景な歌い方をしました。その後、完成した音源を聴いた時、「あ、このベースが(最初から)入っていたら僕はもっと熱く歌っていただろうな」と気づいたんですよね。デモをいただいた時から「後からベースを足します」って聞いていましたけど、実際に重くて低いビートを聴きながら歌ったら、たぶんどれだけ力を抜いてくれって言われても、熱くなってただろうなと思って。そういう意味でも、僕の歌に寄り添ってもらった楽曲でした。さみしさを前面に押し出したので、ポジティブのポの字もないですけど(笑)。でも、内田将綺らしくないことがかえってこの作品の味なのかな、と。今後、ライブでパフォーマンスしたら、なぜこの曲を歌わせていただけたのか、より理解できるのかなと思います。
・「Scene – singing by Yosuke & Ren -」
蓮:ピアノメインのリフ曲を作りたいなって思って、まずピアノから作っていきました。そこからメロディを乗せて歌詞を書くとなった時に、この歌詞が思い浮かんで。デモと実際世に出す時って歌詞が違うことが多いので、まずは自分の思うままに作ってみました。でも、ちょっと大人っぽすぎたので、これはアウトだろうなと思ってたんですよ。それが、意外なことにOKが出て。歌詞を共作したRie Tsukagoshiさんが手を入れたバージョンは、もっと過激になっていたんです(笑)。
陽介に歌ってもらうことは、曲が完成した時点で決めました。陽介はもともと高い声を売りにしてましたけど、「Sugar」ではサビの低いところを歌っていて、それがすごくよかったんです。この曲も陽介に歌ってもらったら、新しい面を出せるかなと思いました。
陽介:問題作ですよね。蓮の人選によって、僕も新しい引き出しが増えたなと思います。これまでの曲は、歌う時に等身大の自分が7割くらい入っていたんです。でも、この曲に関しては、素の自分じゃないのがポイント。演じた人格で歌いました。とにかくイメージをしまくりましたね。その……エッチな……(笑)。でも、下品ないやらしさじゃないんですよね。ひとつの作品となるように、イメージをしっかり保ちながら歌いました。
・「Chilling Day -singing by Yuki -」
優輝:最初にトラックとメロディをいただいたんですが、「好きにやっていいよ」と言っていただき、メロディと作詞をやらせていただきました。今回のミニアルバムは「20代の青春」がテーマなので、僕は何を歌うのがいいかなと考えて。やっぱりラップに力を入れているので、ヒップホップ、ラップを大切にしたいなと思いました。
学芸大青春のラップは、かっこよかったり、オラオラだったり、爽やかだったり色が違うんですけど、今回は等身大の自分をぶつけたいと思って。泥臭くても、自分の思いをまっすぐ伝えるのもヒップホップだなと思ったんです。今、大変な世の中だからこそ、頑張りすぎちゃう人って多いだろうなと僕は思っていて。僕もひとつのことに熱中すると、それしか見えなくなって空回りしちゃうことがよくあるんです。でも、一回忘れて気を抜いたり、リラックスして他のことを考えたりした時に、意外と光が見えることがあるんですよね。それをまっすぐ歌詞にしました。普段は曲によって自分を作っていましたけど、この曲は素の自分に近いですね。
レコーディングスタジオの勇仁、むちゃくちゃノッてました(陽介)
──他のメンバーが歌っている曲で、気になったものはありますか?
優輝:僕は「予報通り、雨。」ですね。最初に聴いた時、椎名林檎さんの曲みたいだなって。ちょっとあやしげな雰囲気があるコードが、蓮の声と合ってるなと思ってたので、初めて聴いた時は思わず「めっちゃいいよ!」って言っちゃいました。
蓮:実は椎名林檎さんのコードを参考にしてるんです。
将綺:蓮だからこそ成り立ってる曲だよね。カラオケで「歌えよ」って言われても多分歌えない。
陽介:勇仁の「僕らのNew Day」もよかった。僕と蓮のコーラスがちょっと入ってるんですけど、先に勇仁がレコーディングしているのを僕らは待機してたんですよ。そうしたら、勇仁の姿がちょっと見えて。
勇仁:普段のレコーディングスタジオだとブースの中が見えないけど、今回は違うスタジオだったからね。
陽介:そうしたら、ドア越しに見える勇仁がむちゃくちゃノッてて(と、突然踊り出す)。
勇仁:え、そんな動いてた?
陽介:すっごいノッてた。だから「え、勇仁ってこんなにノリながら歌ってるんだ!」って、新しい発見でした。めっちゃ楽しそうに歌ってるなって。
勇仁:そうなんだ。言われて初めて気づいた。
陽介:あとは、優輝の「Chilling Day」もよかった! 楽曲の中には、聴こうとして聴く曲と、聴き流せる曲ってあるじゃないですか。「Chilling Day」は、どっちもイケる曲だなと思って。なんか曲を聴きたいけど、聴き入りたくはない。チルラップだと、そういう時にも聴けるんだよね。僕、優輝のラップの良さは、チルラップにあると思います!
優輝:陽介から「優輝はかっこいい系も合うけど、優しいからチル系も合いそうだよね」って言われたんだよね。それもあってチルっぽい曲を書こうかなと思ったので、めっちゃうれしい。
個人の強みを伸ばし、それをグループの力にして青春の輪を広げられたらなと思います(将綺)
──話は変わりますが、ダ・ヴィンチWebではみなさんのコラム連載もスタートしました。書いてみた感想はいかがですか?
陽介:楽しいけど難しい!
勇仁:自分はもともと文章を書くのが得意なほうじゃないんです。むしろ苦手というか、勉強自体がそもそも好きじゃないんですけど(笑)。作文に苦手意識があったので、最初はお話をいただけてうれしい気持ちと、自分にできるかなって不安がありました。ただ、自分は歌とか音楽について書かせていただいているので、コラムを書くにあたって自分の中で歌や音楽に向き合う時間が作れるんですよね。それがすごくいい時間で、ありがたい経験させていただけてるなって思ってます。
将綺:僕は、テーマを海老に絞ってよかったと思いますね(笑)。もっと広いテーマだったら、毎回悩んでたと思う。ただ、今までは近所の決まったスーパー2軒くらいしか行かなかったんですけど、意外と海老がなくて学芸大学中のスーパーを回りました。むきエビを買うならここ、ブラックタイガーはここって、ある程度把握できるようになった(笑)。
蓮:僕は勉強嫌いだったんですけど、学生時代から文を書くのはけっこう好きで。小論文とか書くも好きだったんですよ。ただ、今ブログもやってるので、書き方のスイッチを切り替えるのが難しかったです。僕は出身地の広島をテーマにしてるんですけど、陽介みたいに広島をバカにするヤツに、絶対広島の良さを伝えてやろうと思って書いてます。
陽介:頑張ってほしいね。
将綺:なんでちょっと上からなんだよ(笑)。
蓮:ツアーで広島に行った時に、陽介が「あ、ラウンドワンあるよ」って笑ってくるんですよ。広島にラウンドワンがないと思って馬鹿にしてくる(笑)。
優輝:ガチで失礼!(笑)
──優輝君が寮の日常を綴ったコラムもいいですね。特に、2回目の「ライブ当日の朝。」は、臨場感があってとても面白かったです。
優輝:男5人で共同生活してるグループってなかなかないと思うので、僕たちだからこそ書けるコラムにしたかったんです。こういう書き方をすれば面白くなるのかなって、勉強にもなってます。これからラップを書くうえで、生きてくるんじゃないかなって。
──今後のコラムも期待してます。最後に、学芸大青春3周年に向けての抱負、今後の展望についてコメントをいただけますか?
将綺:4thツアーを終えて、ひとりひとりが成長を感じる反面、課題も多く見つかりました。今回のミニアルバムで楽曲制作に携わってるメンバーがいたり、準備段階のメンバーがいたりしますが、これからも個人の強みを伸ばし、互いに足りないところを補いつつ、それをグループの力にしてもっともっと青春の輪を広げられたらなと思います。
──いつになく落ち着いたトーンですね。
将綺:ミニアルバムの「ヨルガオ」が大人な曲なんで。こういう雰囲気、自分から出していかないとなって。
陽介:キモっ!(笑) じゃ、次、勇仁!
勇仁:3周年記念ライブでは、今まで応援してきてくれた人全員を喜ばせたいですね。「応援してきてよかったな」って思ってもらいたいし、「この先も応援していきたいな」って思ってもらえるようなパフォーマンスを5人で作り上げていきたい。日頃の感謝、自分たちの思いを全力で表現する2日間なので、ぜひ楽しみにしていてほしいです。
陽介:応援してくれるみなさんが主役だと思って、ライブを楽しんでほしいです。お客さんのためのライブなので、自分が一番楽しんでほしい。「私のためのライブ」「私が主役」って思ってもらえたらうれしいです!
蓮:ライブに向けて準備するのはもちろんですけど、「ピアノダンス」というコンセプトを体現するようなかっこいい曲、かわいい曲、素敵な曲を届けられるように頑張っていこうと思います。
優輝:9月、10月は、今までよりもさらに大きい会場でのライブになるので、これから日本中に青春を届けるためにも、みんなの心をがっつり掴んで「また行きたい!」って思えるライブにしたいです。今まで応援してくださった方への恩返しのライブになったらいいなと思うので、この3年間の楽曲をできるだけ多くパフォーマンスして、感謝や僕たちの思いを届けたいです。期待してください!
取材・文=野本由起 写真=中野敬久
ヘアメイク=yuto