生理痛、パートナーとの関係、子どもの有無…女性の心身の悩みを楽にする「女性ホルモンと人生のお話」

健康・美容

公開日:2022/6/29

大丈夫だよ 女性ホルモンと人生のお話111
大丈夫だよ 女性ホルモンと人生のお話111』(高尾美穂/講談社)

 仕事に家事・育児の忙しさ、パートナーへの不満、心の浮き沈み……人によって差はあれど、何かしらのしんどさを抱えて生きている女性は多いだろう。産婦人科医でヨガインストラクター、スポーツドクターとしても活躍し、メディアでも発信する高尾美穂氏は、そんな女性の体と心に寄り添ってきた人物だ。その最新作『大丈夫だよ 女性ホルモンと人生のお話111』(講談社)は、女性特有の困難に、女性ホルモンの仕組みと心というふたつの側面からアプローチする。生理痛やPMS(月経前症候群)、更年期症状に悩んでいる人だけでなく、将来妊娠したい人や、これから迎える「更年期」に暗いイメージを持っている人の助けになる本だ。

 本書の冒頭で伝えられるのは、「大丈夫。女性ホルモンを知れば、自分の人生をデザインできる」という高尾氏のメッセージだ。女性は人生の大半で、女性ホルモンの影響により心や体の不調を経験するという。そこで本書は、女性ホルモンの仕組みや具体的な不調への対処法、そして女性によくある悩みから心を守る方法をわかりやすく伝え、より楽に生きる術を教えてくれる。

 目次に並ぶのは、「生理」や「更年期」、「閉経」など体に関する話題のほか、「子どもがいても、いなくても大丈夫。」「パートナーの悩み」など、女性にとって気になる身近なトピックばかりだ。内容の約半分は、考え方を変える方法や、私生活、仕事のモヤモヤの対処法などの医学以外のテーマということもあり、医学書のような堅苦しさはなく、自分自身の人生と重ねながらリラックスして読むことができる。

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大丈夫だよ 女性ホルモンと人生のお話111

 たとえば、「生理とうまく付き合えば大丈夫。」のパートでは、つらい生理痛やPMS(月経前症候群)の仕組みを丁寧に伝えた上で、がまんせずに、生理をコントロールすることを勧める。医学的根拠から、生理の苦痛は対処すべきということが理解できるため、痛みに耐えるのは当たり前だと思っている人や、薬を飲むのに抵抗がある人も、納得感を持って対処法を取り入れられそうだ。

 また、「パートナーの悩みがあっても大丈夫。」では、セックスレスやモラハラなど、夫婦関係のトラブルについてもアドバイスする。女性と男性の特徴など、医師としての知見も交えながら、コミュニケーションの重要性や、つらい状況を抜け出すための思考の切り替え方まで、多角的に解決策を伝える。パートナーとの関係に行きづまっている人も、視点を変えて、今できる現実的な方法で一歩前に進めそうだ。

 考え方に関する高尾氏のメッセージも、心に響く。「感情に囚われた自分以外の、もう一人の自分がいる感覚を持つ」「理想の自分像を手放すほうが、楽になれるときもある」「選ばなかった選択肢は忘れちゃうぐらいがいい」などの言葉は、ネガティブ思考を止められない、背負い込みすぎてしまうなど、心のクセが理由で疲れてしまっている女性を楽にするのではないだろうか。

 本書は、女性ホルモンがどのように女性の人生に影響を与えるかをまず知っておくという、女性が人生の舵取りをするための軸を伝える。その上で、具体的な悩みを解決するヒントで、視界を妨げる霧を晴らしてくれる。自分の歩みを妨げるモヤモヤが減り、将来へと前向きに一歩を踏み出したくなる、そんな一冊だ。

文=川辺美希