レオナルド・ダ・ヴィンチも左きき! 「英才児に左ききが多い説」は本当か

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更新日:2022/6/27

左対右 きき手大研究
左対右 きき手大研究』(八田武志/化学同人)

 自分のきき手がいつ決まったのかを覚えている人はいないだろうが、確かにきき手はあって、自分の意思で変えられない。巷では右きき・左ききのトリビアが散見されるが、にわかに信じがたいものが多い。

 そのひとつが、「左きき有能説」だ。きき手研究を長年続けてきた著者による『左対右 きき手大研究』(八田武志/化学同人)は、第1章で、さまざまな「左きき有能説」を学術的根拠をもって検証、分析している。

 本書によると、一般には左ききには右ききより“優れた側面”がある。その優れた側面は、日光東照宮の眠りネコの作者である左甚五郎やレオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロなどの手先の器用さ、著名なスポーツ選手の運動技能、そして、英才児の知能などに見てとれるのだという。本記事では「英才児に左ききが多いのかどうか」について、本書の内容をごく簡単にご紹介したい。

 アメリカには英才児を探すプロジェクトがあり、アイオワ大学のベンボウという先生が「英才児には左ききが多い」と主張している、と本書。ベンボウは、アメリカのSATと呼ばれる学力試験のシステムを平均5年早く受験した児童を“英才児(論文中では「知的に極端に早熟な者」という用語が当てられているらしいが)”とみなし、英才児とその親にきき手を確認したところ、両手きき、弱い左きき、強い左ききを含める「非右きき」、特に「左きき」の比率が一般の大学生に比べて高かったという。

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 また、別のイラン人研究者も「左ききは学業成績が優秀である」と報告しており、この報告を支持するものとして、本書は「知能指数が132以上の小学生での左ききの割合が、132未満の小学生での左ききの割合よりも高い」との報告を掲げている。

 では、なぜ左ききが生まれるのか、また左ききが英才児たる影響を与えるかについてだが、本書は第5章でいくつかの説を紹介している。そのうちの興味深い説のひとつが、「左きき脳病理原因説」。ごく簡単にいうと、脳損傷が影響しているという説だ。

 本書による説の紹介を要約すると、次のようになる。

・胎児は胎児期や出産時に脳が損傷する可能性がある

・左右それぞれの手の運動をつかさどる脳部位に損傷を受けると、逆の手の運動をつかさどる脳部位が優位に機能するようになる

・右ききになるはずの胎児の左脳に軽微な損傷が生じれば、右脳に依存するようになるために左手がもっぱら使われるようになる

・脳損傷は左脳でも右脳でも同じ確率で起こるが、もともと右ききの割合が多いため、左手が機能を肩代わりするケースが多くなる

 本書によれば、英才児が得意とする数学では、空間的能力の高さが有利にはたらくといわれる。また、この能力は右脳の領域であり、芸術、さらには布陣や位置関係などを瞬時に読み取る必要があるスポーツでも生かされるそうだ。

 右ききも左ききも運命で決まったようなものだが、本書を読んできき手のトリビアを知れば、自分やわが子の特性をさらに引き出せるかもしれない。

文=ルートつつみ
@root223