鷲見友美ジェナ「グループに甘えていられない。個人活動で鍛えられました」声優図鑑
公開日:2022/7/4
キャラクターの裏に隠された自分自身をありのままに語る、ダ・ヴィンチWebの恒例企画『声優図鑑』。第289回に登場するのは、『プロジェクトセカイ カラフルステージ!feat.初音ミク』の白石杏役、『ファントムオブキル ロストラグナロク編』のアルマス役などを演じ、仮面ライダーGIRLSとしても活動する鷲見友美ジェナ(すみ・ともみジェナ)さん。
「お父さんが映画好きで、休みのたびにレンタルビデオを借りて、お菓子を食べながら1日観ていました」という10代の頃を振り返りながら、グループ活動を経て足を踏み入れた声優業界でのお仕事、そこで学んだことなど、多岐にわたってお話をうかがいました!
映画の吹き替えで声優さんのすごさを知りました
——2013年に東映公式ガールズユニット「仮面ライダーGIRLS」として芸能界デビューしていますね。それまでの道のりを聞きたいのですが、小さい頃や学生の時に夢中になっていたことはありますか?
鷲見:ブリトニー・スピアーズさんがすごく好きで、特にかっこいいダンスに憧れて、テレビの前で真似して踊ったりしていました。CDやライブDVDも初めて買ったし、ポスターを貼ったり、携帯の待ち受け画面にしたり。小学校3〜4年生の頃ですね。
——もともと海外のアーティストに興味が?
鷲見:両親が洋楽好きで、いつもお休みの日にジャクソン5とか音楽を流していたので。
——子どもの頃に描いていた夢は?
鷲見:ディズニー・チャンネルが好きで、そこに出ている女優さんの声をあててみたいっていう憧れがありました。長期の休みは母親の出身地でもあるフィリピンに行くことが多くて、その時に英語版の『ハンナ・モンタナ』とか、ヴァネッサ・ハジェンズが出ているようなティーン向けのドラマをずっと観ていたんです。日本に帰ってからも観させてもらっていたら、日本語の吹き替えなのに違和感がなくて。そこで初めて声優の存在を知って、すごいなと思いました。
——吹き替え版の役作りに感動されたんですね。すごいと思ったのは、どんな声優さんでしたか?
鷲見:『ハンナ・モンタナ』の主人公を演じるマイリー・サイラスの声をあてていた白石涼子さんとか。ジャッキー・チェンの声をあてていた石丸博也さんも。ジャッキーが好きで、いろんな作品を吹き替え版で観ていたから、逆に向こうの言葉でしゃべるNGシーンやインタビューを観た時にすごく違和感があって。声をあてているのが石丸さんだと知ってから、私もそういう人になりたい! と。
——吹き替え版がスタンダードになる感じ、すごくわかります。ジャッキーの映画はどんな作品を?
鷲見:『ラッシュアワー』とか『香港国際警察』とか。ジャッキーってコミカルな印象がありますけど、『ニューポリスストーリー』はシリアスな場面が多くて、つらそうに泣いているようなジャッキーを観たら沼に落ちちゃって(笑)。それから『ツイン・ドラゴン』とか過去の作品も観るようになりました。石丸さんって、ジャッキー本人からも「日本語の吹き替えは石丸さんだよね」っていうくらい認知されているのがすごいですよね。
——2021年から今年にかけて、吹き替えのお仕事もされていますが、吹き替えでこれから演じてみたい役柄はありますか?
鷲見:それこそディズニー・チャンネルで流れるようなティーン向けドラマの主人公とか。でも一番は、ジャッキーの娘か部下の役を演じて、ジャッキーと共演するのが夢です!
アニメデビュー作で自分の未熟さを実感
——デビューのきっかけは仮面ライダーGIRLSですが、2017年頃からは声優のお仕事も増えていますね。
鷲見:小さな頃から漠然と芸能の世界に憧れていたので、大学に入る前にタレントの養成所に入って。そこで学んでいる時に声をかけてもらって、仮面ライダーGIRLSのメンバーになったんです。もともと漫画やアニメが好きだったので、『東映公認 鈴村健一・神谷浩史の仮面ラジレンジャー』のアシスタントを担当させてもらうようになってから、「昔は声優に憧れていたんだよな」「せっかくこの世界に足を踏み入れたのなら憧れていた道に進みたい」という気持ちが強くなりました。
——ゲームやアニメなど声のお仕事で印象に残っている作品を教えてください。
鷲見:やっぱりアニメのデビュー作になった『ケムリクサ』です。ゲームではひとりで声をあてていましたけど、ベテランの先輩方と掛け合いをした時に自分の未熟さを実感して。「ちゃんと学ばなきゃ」と思って、いろんなワークショップや、緒方恵美さんの私塾に通い始めるきっかけになりました。
——お仕事をしながら私塾に1年間通っていたと。『ファントムオブキル ロストラグナロク編』のアルマス役も代表作のひとつになっています。
鷲見:声優のお仕事をさせてもらってからすぐに出会った作品で、その頃はグループでの活動が多かったから、ひとりで現場に入って生放送やロケを体験して、ものすごく鍛えられました。今まではグループの先輩に頼ってしまっていたけど、甘えられていられないなと。
——向上心の高さが伝わってきますね。お仕事の中で「できるようになった」と実感することもありますか?
鷲見:この前嬉しかったのが、『けものフレンズ3』に出させていただいた時に『ケムリクサ』の音響監督の方と再会して、「少女のイメージが強かったけど、中世的な声も出せるようになったんだね」と言われたんです。まだまだ勉強中ですけど、いろんな現場で先輩方の演技を見させていただく中で、自然と吸収して成長できていたことがあったとしたら、嬉しく思います。
——現場で学んでいることは多いんですね。先輩方やほかの声優さんと現場でコミュニケーションを取ることも?
鷲見:最初の頃はグループのメンバーだという甘えがあって恐縮していましたけど、そういう気持ちは相手にも伝わってしまうし、周りの方もつまらないだろうなって。せっかくその場に呼んでいただいているなら、友だちになれちゃうくらい仲良くなれたらハッピーだなと。そのほうが、お仕事も含めて円滑にいきやすいのかな、と感じてます。
『うる星やつら』のおユキさんが好き
——好きな本や影響を受けた漫画があれば、教えてください。
鷲見:高橋留美子さんの作品はどれも好きで、特に『うる星やつら』が大好きです。はちゃめちゃなラブコメディで、登場人物がすごく多いのに全員が引き立っていて。どのキャラクターが出ている場面もおもしろくて、くだらないことでフッと笑ってしまう幸せなお話だなと。アニメを観てから漫画も全巻揃えました!
——いちばん好きなキャラクターは?
鷲見:おユキかなあ。みんなキャラクターが濃くて大好きなんですけど、おユキはその中でもクールで、怒ると人を凍らせたりするんですよ。それがカッコよくて、おユキさんすごいなって。
——高橋留美子さんの作品でほかに好きなものは?
鷲見:ずっとアニメを観ていたのは『犬夜叉』。あとは『らんま1/2』と『めぞん一刻』。『境界のRINNE』もアニメを観てました。
ヒーロー作品は絶対に映画館で観ます
——突然ですが、鷲見さんがいつもしているような「3つのルール」を教えてほしいです。
鷲見:1つは、ヒーロー作品は絶対に映画館で観る! サブスクの時代ですけど、映画館で見るとカッコ良さが全然違うので。4DXで観たりすると本当にカッコいいですね。最近観たのは『シン・ウルトラマン』。ウルトラマンは初めて観ましたけど、ふだん観ているのは仮面ライダーはもちろん、MarvelやDCも好きで必ず映画館で観てます。
——さすがです! 2つ目のルールは?
鷲見:グループを大事にする! 仮面ライダーGIRLSは結成11年目で、最近は個人活動が増えていますけど、今までやってこれたのはメンバーがいてくれたから。これから個人活動が多くなってもグループのお仕事もちゃんとしたくて、個人のお仕事をしている時もグループのことをいつも頭の中に置いています。メンバーは全員言うと思いますけど、自分たちから辞めたいと言うことは絶対にないと思ってます。
——結束の固さが伝わってきますね。3つ目のルールは何でしょうか。
鷲見:人の縁を大事にすることです。たとえアフレコが数ヶ月で終わったとしても、その後もご飯に行ったり、悩みを打ち明けたり、そういう関係性を築くことって、学生の時はすぐにできましたけど、今ではそういう存在がいるだけで幸せ度数が変わってくると思っていて。親しい人を作るのが好きですし、ずっと会える環境のお仕事じゃないからこそ、人の縁を大事にしていますね。
夢を叶えるのは簡単じゃない。だから初心を忘れずに
——今、声優になって良かったと感じることは?
鷲見:自分が憧れていた作品に出られるかもしれない世界線にいることが、まず嬉しいですね。頑張って、運が良ければジャッキー・チェンと共演できるかもしれないし、石丸博也さんみたいに、もはやジャッキーにとって一心同体みたいな存在になれる可能性もあるというのが喜びです。それに、「私、ブリトニーの声やってるよ」って言えたら、どれだけカッコいいか(笑)。
——理想的な世界線ですね(笑)。さらに目標に近づくために、これからどんな気持ちでお仕事をしていきたいですか?
鷲見:日々初心を忘れないことだと思います。私にとって目標を達成することは夢のようなお話なので、簡単に到達できるとは思っていないし、常に自分の身の程を知ってお仕事したいと思ってます。
——最後に、ここまで読んでくれた方にメッセージをお願いします!
鷲見:まだまだ私のことを知らない方がほとんどだと思うので、この記事を読んでくださっているみなさんはとても大切な存在です。みなさんに支えられながらお仕事をする中で、少しでも勇気や感動をお届けできるように頑張りますので、これからも見守っていただけると嬉しいです!
——鷲見さん、ありがとうございました!
次回の「声優図鑑」をお楽しみに!
鷲見友美ジェナ
◆撮影協力
撮影=山本哲也、取材・文=吉田あき、制作・キャスティング=吉村尚紀「オブジェクト」