さまざまな気象災害をもたらす「積乱雲」。雷やひょうはどうやって発生するのか?/面白いほどスッキリわかる! 世界の気候と天気のしくみ

スポーツ・科学

更新日:2022/7/20

災害をもたらす積乱雲

積乱雲は災害のデパート

 気象を語るうえで欠かせないのが積乱雲の存在です。積乱雲とは、背が高くのびた雲で、「雷雲」という別名が示す通り雷や大雨のほか、ひょうや竜巻などの突風も発生させます。積乱雲といえば、日本の夏にムクムクと発達して夕立をもたらすものというイメージが強いかもしれませんが、日本に大雪をもたらすものも積乱雲ですし、台風や温帯低気圧の寒冷前線も積乱雲でできています。とにかく、さまざまな気象災害をもたらす原因となるものが積乱雲なのです。

強い上昇気流が積乱雲を作る

面白いほどスッキリわかる! 世界の気候と天気のしくみ

 積乱雲は、何らかの理由で強い上昇気流が発生することでできます。背が高いので、雲の上のほうから地上までの距離が長く、雲粒や氷晶が成長しやすいです。そのため、積乱雲由来の雨は大粒になる傾向にあります。

 積乱雲は強い上昇気流によってできますが、雲の中では次第に下降気流が発生します。これは、氷晶がとけたり雲粒が蒸発したりするときに周囲の熱を奪い、冷たい空気が生まれるからです。冷たい空気は重いので、下降気流となります。さらに、雨粒が落下するときに周囲の空気を引きずりおろすので、下降気流はますます強くなっていきます。すると、積乱雲を発達させた上昇気流が打ち消されて弱くなっていき、やがて積乱雲も弱まって、雨もやむのです。夕立は30分〜1時間程度でやみますが、これはひとつの積乱雲の寿命がそれくらいの時間だからです。ただし、ときには大雨が何時間も降り続くこともあります。これが集中豪雨と呼ばれ、積乱雲が世代交代することで起こる現象です。

雷やひょうはどうやって発生するのか

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 積乱雲が発生すると、雷が鳴り、稲妻が走ることがあります。雷の正体は電気ですが、この電気を生むもとになるのは雲を構成する氷晶やあられです。氷晶やあられがぶつかることで電気が発生するのです。こうして雲の内部や雲と地面との間で大きな電圧が生まれると、その状態を解消するために空気の中を電流が流れます。空気は本来電気を通しにくい物質なのですが、電圧が非常に高いと瞬間的に電流が流れるのです。そして、雲と地面の間で電流が流れると落雷となるのです。

 積乱雲からは、ひょうが降ってくることもあります。積乱雲の上のほうは氷晶でできており、それが周囲の水滴をくっつけると丸い形の氷ができます。これがあられです。しかし、上昇気流が強いと、あられがそのまま落下せず、ふたたび上昇して長い間雲の中を漂います。すると、周囲の水の粒をくっつけてますます大きくなるのです。こうして直径5㎜以上に成長したあられを、ひょうといいます。中にはバレーボール並みに成長することもあります。ひょうは落下すると農作物の葉に穴をあけたり、車などの屋根を壊したりするので厄介です。

<第3回に続く>

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