季節風「モンスーン」と、猛暑をもたらす「湿ったフェーン現象」のしくみとは?/面白いほどスッキリわかる! 世界の気候と天気のしくみ
更新日:2022/7/20
猛暑をもたらすフェーン現象
山越えの風が猛暑をもたらす
日本では台風一過の日などに35℃を超えるような猛暑を記録することがあります。このような記録的な猛暑をもたらす原因のひとつに「フェーン現象」が挙げられます。
フェーン現象とは、風が山を越え、山から吹き下りるときに風下側の気温が高温になる現象です。
学校でも教わり、よく知られているフェーン現象は「湿ったフェーン現象」と呼ばれるものです。
これは、湿った空気が山を上昇し、山頂付近で雨を降らせて乾燥します。そして風下側には乾燥した風が吹き下りるというものです。
空気は上昇するにつれて気温が下がり、下降するにつれて上がります。しかし、湿った空気のほうが乾いた空気よりも温度の変化がおだやかになります。それは、空気中の水蒸気が水に変わるとき、周囲に熱を出すからです(逆に、水が蒸発して水蒸気になると周囲から熱を奪います。濡れた体を拭かずに乾かすと体が冷えるのはこのせいです)。
湿った空気が上昇しておだやかに気温を下げていき、山頂付近で雨を降らせて乾燥すると、今度は急激に気温をあげながら下降します。これが湿ったフェーンと呼ばれる現象のしくみです。
実は乾いたフェーン現象のほうが主流
あまり知られていませんが、「乾いたフェーン現象」もあります。
これは、乾いた上空の風が山の斜面を下降することで山のふもとが高温になる現象です。地上付近の風が山越えをして吹き下りるのではなく、さまざまな要因によって上空の風だけが風下側で強制的に下降すると、風下側だけ気温が上昇するのです。
最近の研究では、フェーン現象のほとんどは乾いたフェーン現象で、湿ったフェーン現象の割合は1%にも満たないことがわかりました。教科書でよく習う湿ったフェーン現象は意外と発生していないのです。また、乾いたフェーン現象と湿ったフェーン現象の混合型もあります。
寒くなる山越えの風もある
フェーン現象では、山越えの風が高温になって吹き下りますが、ときには山越えの風によって風下側の気温が下がることもあります。このような風を「ボラ」といいます。日本では各地で「〇〇おろし」「〇〇だし」と呼ばれる冷たい風がありますが、それらはボラにあたります。寒気が山の斜面を吹き下りると、下降するにつれて気温は上がるものの、山を越える前の空気の温度自体が非常に低いので、その空気が吹き下りることで風下側のふもとの気温がかえって下がることがあるのです。