日本の東西南北の端はどこ? 人気講師による、社会科知識を網羅した“超濃縮”教養本
公開日:2022/7/11
今年度入学した高校1年生から「地理総合」「歴史総合」「公共」が必修科目となったことをご存じだろうか。「地理総合」とは地理の基礎を学ぶ科目で、実は地理が必修になったのは戦後日本では初だそうだ。「歴史総合」は日本史と世界史の近現代部分を一緒に学ぶ科目であり、「公共」は政治・経済と倫理の基礎を学ぶ科目である。以前のように「日本史だけ」「世界史だけ」と選択していた時代より、学ぶ範囲がグンと広がったのだ。
しかし多面的な知識を得ることは、学生のみならず社会人も必須である。2022年2月24日、ロシアのウクライナへの軍事侵攻で、なぜこの戦争が起こったのか、地理や歴史、政治・経済などの知識を絡ませないと理解できないことを痛感した方も多いことと思う。だが必要な情報を組み合わせてアウトプットできるようになるには、最新の地理、歴史、公共に関する幅広い情報や知識をインプットすることが必要だ。
そこで勧めたいのが、小学生~高校生向けにプロ講師がオンラインで授業を行うリクルートの「スタディサプリ」で、すべての社会科のジャンルを教える、日本一生徒数の多い社会科講師・伊藤賀一先生の新著『1日1ページで身につく! 歴史と地理の新しい教養365』(幻冬舎)だ。
本書は「世界史」「日本史」「歴史総合」「地理」「政治・経済」「公共」「倫理」の7つのジャンルに分けられた365項目についての解説が収録されている。1ページに1項目、本文は500字ほど。図版などもあり、内容も平易で非常にわかりやすい。これを毎日1ページ(約2分で読める作りだ)読み続けて頭に叩き込んでいくと、1年で分厚い総合的な最新知識と教養が得られる作りになっているのだ。
第1週は「日本と領土」についての項目からスタートする。第1日のジャンルは「地理」、内容は「日本の領土の東西南北の端とは?」だ。日本地図を広げ、日本の端がどこにあるのか、あなたは正確に指し示せるだろうか?(ちなみに北は北海道、西は沖縄県、東と南は東京都だ)。
続く第2日は「歴史総合」の「欧米列強はなぜ日本に接近してきたのか」で、江戸時代にやって来た外国船についての記述があるのだが、それだけでは終わらないのが本書の特徴だ。実は欧米列強よりも先に日本へ来たのはロシアの船だった(冬でも凍らない不凍港を探す目的と、ラッコを中心とする毛皮の交易相手を求めていたそうだ)という話も盛り込まれており、こうしたテストにはおそらく出ないであろう豆知識や情報を絡めながら、記憶に残るよう教えてくれるのが伊藤先生の授業なのだ。一見無駄に思えることほど記憶に残るものだが、それがトリガーとなり、大事なことが強く脳内へメモリーされるのだ。
これ以外にも「文明はなぜ大河沿いに成立したのか」「海岸の敵を奇襲する源義経はアリだったのか」といった歴史から「エンデミック、エピデミック、パンデミックの違いとは?」「国際連合の役割と課題とは何か」「世界最大の面積を持つロシアの政治体制とは?」という現代の関心事、さらには「フロイトの精神分析学とは何か」「田中角栄と同じく重要な首相田中義一とは?」「中小企業は本当に『中小』なのか」などなど、幅広い知識を誇る伊藤先生が選びに選び抜いたトピックスがギッチリ詰め込まれている。
もちろん1日3ページでも10ページでも、自分に合ったスピードで進めてOKだ。またどこから読んでも大丈夫な作りになっているので、自分なりの学習スタイルで進めていけばいいのだが、川にまつわる話や日中関係というように同じジャンルの内容がまとまって掲載され、前の項目で説明された内容を土台にして踏み込んだ内容が説明されるので、できれば順に、ひと項目ごと読み進めていくことを勧めたい。世界の歴史と情勢が頭の中でぐんぐん整理され、基礎的な知識と教養がしっかり身につくことだろう。
文=成田全(ナリタタモツ)