少女漫画のお約束のひとつ!『ひるなかの流星』『ガラスの仮面』…後々のストーリー展開から、重要だった“気絶シーン” 4選!
公開日:2022/8/17
※本記事にはネタバレが含まれます。ご了承の上、お読みください。
少女漫画のお約束のひとつ、気絶。ヒロインを強制退場させたいときや、いつも元気なヒロインが倒れることで一展開作りたいときなどに、しばしば見られるテクニックです。ここでいう気絶とは、フッ……と意識が遠のいて倒れてしまうだけではありません。風邪で意識が朦朧としたり、自立歩行できなくなることも含みます。
気絶の原因はさまざまですが、大体はたまたま一緒にいた片思いの相手が助けてくれたり、当て馬が見つけに来てくれたりするので、大事にいたることはありません。
しかし、どんな気絶パターンでも、共通するのはヒロインが気絶することで、物語がグッと前に進むということです。
多くの場合、一話以内に回復していますが、現実世界で気絶したら、一大事です。倒れ方が悪いと大怪我する可能性もあります。大変危険です。そう考えると、ヒロインたちは、物語のためにめちゃくちゃ体を張っているとも言えます。
そこで、物語の中で“重要な気絶”をしたヒロインたちを紹介したいと思います。それをきっかけに恋が生まれた……そんな素敵な気絶エピソードをどうぞ。
※以下より、ネタバレが含まれます。
保健室でグッと距離が縮まった2人!『執事様のお気に入り』
物語は、主人公の氷村良(ひむらりょう)が、全寮制の名門高校、私立双星館学園に編入するところから始まります。広すぎる校内で迷子になっていると、薔薇の木陰で眠っている執事・神澤伯王(かんざわ はくおう)を発見。
このとき良はくしゃみをしながら「あー寒いなー」とつぶやいています。始まってまだ2ページ。さっそく体調不良の予兆です。そしてその後のティータイムの最中、ついに良はクラっと気絶。そのとき、すかさず良を抱きとめたのが伯王でした。
保健室で2人きりになり、身の上話をする良。「ふーん、面白い女」という顔で見ている伯王。良の気絶があったからこそ、2人の距離は縮まったのです。まさに“重要な気絶”です。
この人が私の運命の人!?『ひるなかの流星』
両親が海外に赴任することになり、東京で暮らす叔父の家で暮らすことになった主人公の与謝野すずめ。
しかし、超田舎育ちのすずめは、東京の駅に着いた途端、あまりの人の多さに絶句してしまいます。人にぶつかられたり、怪しい人物から声をかけられたり、さっそく都会の洗礼を受けるすずめ。
急いで逃げたはいいものの、気がつくとまったく知らない住宅街。地元では、名前を言えば誰の家でもすぐ行けたのに、東京でそんなローカルルールが通用するはずもありません。
そして、一息つこうと立ち寄った公園で空を見上げていると、だんだん意識が遠のいていき、気絶してしまうのです。
このときすずめを助けてくれたのが、後々、担任教師として再会する獅子尾先生です。背中におんぶされたすずめは、朦朧とした意識の中、獅子尾先生の首筋にあるほくろを見て、「流れ星」と言います。
すずめが自分にとっての“ひるなかの流星”を探していくストーリーなので、獅子尾先生のほくろを見るのは物語的にマスト。すずめの恋は、気絶から始まっていたといっても過言ではありません。
看病してくれた人は誰!? 『ハツ*ハル』
チャラ男の海(かい)とリコは、犬猿の仲。凶暴なリコに苦手意識を持っていた海ですが、2人で居残りをしていたときに事件は起きます。窓の外を見ているリコに、「好きなやつでも見てるのか」と海がからかうと、リコの顔が真っ赤に。その瞬間、海の恋心にスイッチが入るのです。
いきなりかわいく見え始めたリコに、モヤモヤが止まらない海。そんなとき、リコが風邪をひいてしまいます。放っておくこともできず、海はリコをおんぶして家まで送り届けることに。結局海は、明け方までリコに付き添ってあげるのです。
しかし、リコは熱で意識が朦朧としていたので、誰が看病していてくれたのか覚えていません。リンゴをむいてくれたのも、別の人だと勘違い。一方で自分の気持ちを確信した海は、リコに猛アタックしていきます。
気絶によって、恋のすれ違いが生まれたパターンですね。
待ち受けていたのは地獄…!『ガラスの仮面』
演技の天才である主人公・北島マヤも、意識を失って倒れたことがあります。
大河ドラマに出演し、一躍国民的な人気女優となったマヤ。これからさらに活躍の場を広げていこうとしたタイミングで、悲しい知らせが入ります。それは、行方不明だった実母が亡くなったというもの。
しかも、母が亡くなったのは大都芸能の社長・速水真澄の仕業だと知り、マヤは絶望に打ちひしがれます。自暴自棄になったマヤは、不良の誘いに乗って海辺で飲酒。そのまま眠りこけ、舞台『シャングリラ』の初日に穴を空けるという大失態をおかしてしまうのです。
駆けつけた速水社長が、マヤを抱きかかえながら言う、「目覚めれば…おそらく地獄が待っている…!」は作中屈指の名台詞です。
実はこれ、新人女優がマヤを陥れるために仕掛けた罠。卑怯なやり方に激怒したのが、ライバル女優の姫川亜弓さんです。そして亜弓さんの代表作ともいえる『カーミラの肖像』へと続きます。マヤの泥酔昏倒事件がなければ、亜弓さんの名演技が見られなかったということで、重要な気絶に加えることにします。
こうして並べてみると、いかに気絶が重要な役割を担っているか、よくわかりますよね。とりわけ恋愛漫画では、気絶なしには恋が始まらなかったパターンもあるわけですから、「また気絶かい」なんて思ってはいけないのです。今後、ヒロインが気絶したり、体調不良で意識が朦朧とし始めたら、姿勢を正して読んでください。それは何か重大なことが起きる前フリなのです。
文=中村未来