発達凸凹っ子にありとあらゆる「療育」を。「抱っこを嫌がる」「ベビーカーが止まると大泣きする」困り感のある娘と母の「療育」の日々
公開日:2022/7/14
小さな子を育てていると、子どもの「発達」は特に気になるもの。母子手帳の「発達の目安」と違うと不安になって、健診で相談した経験がある方もいるかもしれない。「様子をみましょう」との診断でなんとかなるならいいけれど、中には育てにくさでママの心身がヘトヘトになってしまうケースも…そんな場合には、もしかすると「療育」に相談してみるのもアリかもしれない。
「療育」とは、発達の悩みがある子が社会人として自立できるように、医療と教育をバランスを保ちながら並行してすすめること。実は各自治体には「療育園」といった個々に応じた発達支援を行う場が設置されており、お子さんの発達の凸凹に苦労しているご家庭の心強い味方になっているのだ。
とはいえ、なかなか具体的なイメージがわかなかったり、中には「療育」に偏見を持っていたりする方もいるかもしれない。そんな方には療育のリアルがわかる『発達凸凹っ子に英才療育?してみた 生後0日からの子育てバトル』(古都コト子/飛鳥新社)をおすすめしたい。長年教育に携わってきた発達子育てインフルエンサーの著者が、発達障害のある娘さんを育てた体験を綴った本書は、生まれたばかりの我が子に違和感を覚えた日から療育園との出会い、そして療育園を卒園するまでのバトルと成長の日々を正直に描いた「超早期療育レポ」マンガだ。
著者の娘のコト子ちゃんは生後0日から触れるだけで大泣きして「抱っこ」もろくにできず、ベビーカーはちょっとでも止まると大泣きと、かなり育てにくい子だった。自治体の子育て相談では「普通ですよ」と言われたものの、一向によくならない状況に困りはてた著者はネットで知った療育園に思い切って相談することに。園長先生から「困り感が強いようなので発達検査を受けやすい年齢になるまでうちに通ってみては」とすすめられ、著者は娘の将来のメリット・デメリットを熟考し、それでも「この子の助けになるなら」と家族で納得して療育園を利用することに決めたのだった。
もちろん通ったからといって、いきなり状況がよくなるわけではないが、それでも周囲の「理解」に助けられ(「ひとりじゃない」「大変さをわかってもらえる」という状況はだいぶ力になるようだ)、毎日一歩一歩すすんでいくうちに、気がつけば「こんなことができるようになった」が増えてくる。とはいえ、うまくいったと思ったらほかの問題が出てきたり…その苦労の日々を知ることは、きっと同じような悩みを持つ方の励みにもなることだろう。
「どうして私はあんなに小さな娘に『普通』を求めていたのだろう。(中略)『普通』を目指して始めた療育で、娘や同じ園の子どもたちを見て行くうちに、『その子らしさ』を大事にする姿勢を改めて学びました」と著者。タイトルに「英才」とつくのは、はじめての発達検査でコト子ちゃんの能力の凸凹を知り、それまで以上に「コト子ちゃんにあった支援」を考えるようになったことにちなむ。「普通」にこだわるのではなく、その子の凸をさらに伸ばし、凹を補う…子どものやる気を引き出し「生きる力」につなげるという意味では、たしかにほかの英才教育と同じなのかもしれない。
当時の心境を「開き直った」と描く著者だが、親が現実を受け入れ、前向きになることで、子どもの未来の可能性も変わってくることを本書は教えてくれる。正解はわからなくても、この子のためにできることをすればいい。悩んでいるのはあなただけじゃない――困りごとの多い子育てを抱える多くの人に、そんな勇気も与えてくれることだろう。
文=荒井理恵