「独学」を極めるための55の技法を徹底解説し、24万部を突破した『独学大全』のポイントを紹介

ビジネス

公開日:2022/7/15

ロングセラーや話題の1冊の「読みどころ」は? ダ・ヴィンチWeb編集部がセレクトした『独学大全 絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』(読書猿/ダイヤモンド社)の書籍要約をお届けします。

こんな人にオススメ

・何か学びたいことがある人
・勉強方法について迷いがある人
・自分を変えたいと思っている人

3つのポイント

・歴代の独学者たちが開発してきた有効な学習法をブラッシュアップして紹介
・あらゆる分野・トピックに共通して役に立つ汎用性
・それぞれの項目は独立しているので必要な箇所から読むことができる

(プロフィール)
読書猿(どくしょざる)
独学者・著述家。ギリシア時代の古典から最新の論文、個人のTwitterの投稿まで、さまざまな“知”を独自の視点で紹介して人気を博すブログ「読書猿 Classic: between/beyond readers」主宰。昼間はいち組織人として働きながら独学に励み、これまでに著書として『アイデア大全』『問題解決大全』(フォレスト出版)を刊行。本書は3冊目の著書となる。

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 本書は学ぶ機会や条件が整っていなくても、自ら学ぶことを選んだ独学者を支え、援護するための手引書。ヒトの認知と行動についての「仕様」に基づいて、学び続けることを助ける55の技法を紹介していく。

第1部 なぜ学ぶのかに立ち返ろう

 第1部では計画実行や継続に関わる非認知スキルとこれに関わる技法を取り上げる。まずは、そもそもなぜ自分が学ぼうと思ったのか、「学びの動機付けマップ」でそのきっかけを書き出してやる気の資源を掘り起こす。続いて、自分の知っていることと知らないことの境界を探る「可能の階梯」、現状と目標をつなぐルートを作っていく「学習ルートマップ」で目標を描く。

 動機付けを高めるには、実現したい目標を数値化して、そのサイズを100分の1や1000分の1にして具体的に手の届くものにする「1/100プランニング」やとにかく2分間だけ作業を始める「2ミニッツ・スターター」が有効だ。学びの時間を確保するための技法には、セルフモニタリングによって行動を改善する「行動記録表」、1日24時間のうち一部の行動は制限されるが自由にできることもあるグレー時間を把握して有効活用する「グレー時間クレンジング」、25分作業と5分休憩を1セットにして集中時間を増やす「ポモドーロ・テクニック」がある。

 学びを継続するためには、成長曲線が尻すぼみになる“中級の壁”を超えなくてはならない。そのためのユニークな技法が「逆説プランニング」で、これは“失敗を目標にする”ことで計画倒れの悪循環から抜け出すというもの。その他、スマホを見るなどのすでに習慣になっている行動に簡単な学習をセットにすることで新たな習慣化を目指す「習慣レバレッジ」、学習など増やしたい行動である“ターゲット行動”とその邪魔になっている“ライバル行動”を表にして可視化する「行動デザインシート」、小さな行動で構わないから学習の進捗を記録することで学習への意欲を得る「ラーニングログ」も活用したい。

 自分の意志だけでは独学は続かない。自分の外に“サボらない”ための環境づくりをしよう。「ゲートキーパー」は日常生活で繰り返し会う人(家族、同僚、友人など)に来週までにやるべき事項を書き出した“コミットメントレター”を手渡す、あるいはSNSに投稿するという技法。レターを受け取った人は返事をしたり確認したりする必要はなく、これだけで学習の動機付けが強くなるのだ。実際に会うことができない人物を師と仰いで「師匠ならどうするか」と問うことで独学の指針とする「私淑」、複数人で1冊の書物を読んで共有する「会読」も独学を支える環境になるだろう。

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第2部 何を学べばよいかを見つけよう

 独学では何を学ぶか、どのような教材を使うか、どんなやり方で学ぶか、すべては独学者に一任される。それは自由だが、大きな困難でもある。第2部ではこの点に焦点を合わせ、自分の知らないことを探し求めるための技術、調べもののスキルとノウハウを紹介する。

 自分が何を知っていて何を知らないのかを明らかにして“知識の棚卸し”をする「カルテ・クセジュ」、自己問答の「ラミのトポス」によってこれから学ぶ分野やトピックを明確にできる。ひとつのトピックを複数の視点/分野から眺めて多角的にとらえるためには図書館分類を用いた「NDCトラバース」が有効だ。これによって図書館全体を横断して書物を読んでいくことが可能になる。

 資料を探し出す方法も“単純な思いつきでググるだけ”ではなく共起フレーズや除外フレーズを絡めるなど「検索語みがき」が重要。また知りたい項目について「それは何の一種か」「それは何に属するのか」と階層的に上位概念を調べていくことで知識の分類や調査ツールを活用する「シネクドキ探索」、起点となるひとつの文献の参考文献を手がかりに次々と文献をたどっていく「文献たぐりよせ」、リサーチしたいことについて“既知=すでに知っていること”“欲知=知りたいこと/見つけたいこと”“調査法=どのように知ろうとしているか”を表にして埋めていく「リサーチログ」も、資料を探していく上で役立つテクニックだ。こうした技法を用いて“知っていること”と“知らないこと”を更新していくからこそ、我々の調べものは前に進むことができるのである。

 書物(文献)を探し選ぶためのツールとしては、第一のレファレンスツールである「事典」、先人たちがすでにまとめた“知りたいことがどこにあるか”を教えてくれる「書誌」、入門書+事典+書誌を兼ねたオールインワンの「教科書」、自分の求める書物・自分を待っている書物と出会うための技術「書籍探索」、より新しくより詳しくより広い知が集まった最前線である論文を読むための「雑誌記事(論文)調査」を紹介。

 集めた資料をどのように整理すればいいのかという疑問に応える技法には次のものがある。テーマごとに分類した書物から抜き出した目次を使って表を作ることで複数の書物の内容と構成を一望化する「目次マトリクス」、入手した文献から参考文献リストを転記し表にして文献間の参照関係とその価値や評価を浮かび上がらせる「引用マトリクス」、自分のテーマに関する文献から著者や書誌情報などの基本データや研究の詳細についての要素を抜き出して比較対照を行う「要素マトリクス」である。こうした整理をすることによって孤立した“点の読書”から文献のつながりを追う“線の読書”になり、最終的には読者自身が独自の線を編み上げていく“面の読書”になる。

 第2部の最後に紹介するのは、デマやトンデモ知識、陰謀論にハマらないための情報の吟味に関する技法。「タイム・スケール・マトリクス」では、ある主張に対して“過去・現在・未来”と“上位・同位・下位”のそれぞれについてどのようなことが起こるかを検討し、その整合性をチェックする。「四分割表」では吟味したい主張や知識を“XならばY”の形にして事例やデータを集めて考えの偏りを修正していく。「トゥールミン・モデル」は相手の話や読んでいる文章から“事実”と“主張”を切り分けて両者をつなぐ“理由”を検討していくことで主張の根拠を図解的に理解する手法である。

第3部 どのように学べばよいかを知ろう

 第3部では具体的な「勉強のやり方」についてまとめられている。認知科学や学習科学の知見に基づいた学習法によって目指すのは学びの強化だ。まずは再読。本を読むということは、つまるところさまざまな読み方で繰り返し再読することであり、再読によって読書は点から線になっていく。そのための読み方は次の通り。目をページに落としたままできるだけ早くページをめくる「転読」、読むべき部分だけを読んでいく技術「掬読」、文献の章見出しを“問い”に変換しながら読む「問読」、読書を自分で決めた設定時間内に制限することで習慣化する「限読」、実は読書技術の革命だった「黙読」、読書理解度の改善効果がある「音読」、読んでいるところを指しながら読む「指読」、気になるところに線を引いたり付箋を貼ったりしていくことで思考の基盤とする「刻読」、読んだ内容を段落ごとに短くまとめていくことで理解度をセルフモニタリングする「段落要約」、一定量のテキストを頭に記憶してから書き出す「筆写」、自分にとって最も価値のあるテキストに解説を加えていく精読の到達点「注釈」、外国語を精度を上げて訳読するための「鈴木式6分割ノート」、文献を抜き書きしたノートにコメントを書き込みつつ読み返していくことで自分だけの知的財産を作る「レーニンノート」。以上、13種の読む技法を紹介。

 続くのは学習の要である“覚える”ための技法だ。ここで重要なのは記憶の術より“マネジメント”である。どのように記憶するかをプランニングする「記憶法マッチング」は記憶についての考え方を変えて“メタ記憶”を鍛える。健忘症治療の技術でもある「PQRST法」は予習・質問・精読・自己暗唱・テストという手順で文章を記憶する。学習の前後で知っていることと理解していることを図にしていく「プレマップ&ポストマップ」は記憶をネットワーク状に推進する。普段から慣れ親しんだ“場所”を“鍵”にして記憶したいもののイメージと結びつける「記憶術」は古代ギリシア発祥の伝統的な手法だ。「35ミニッツ・モジュール」は学習を35分間1セットにして復習を組み込むことで記憶を定着させる。

 そして独学にはつきものの“わからない”を克服するためには3つの技法がある。まず課題に向き合うときに自分の思考を声に出して録音し、それを聞き直す「シンクアラウド」。次に自分が“どのようにわからないのか”を不明型・不定型・不能型に分けて確認する「わからないルートマップ」、3つ目が一度解いた問題を時間の制約をつけたり、誰かに教えたりするなどして繰り返し解く「違う解き方」である。

 最後となる55番目の技法は、自分の独学法を生み出す技法「メタノート」。これは問題演習や学習内容を書くのではなく、独学の中で得られた気づきを記録するための専用ノート。この記録が唯一無二、自分自身の『独学大全』になるのである。

文=橋富政彦

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