吉武千颯「音痴だったから…歌わない日ありませんでした」【声優図鑑】

公開日：2022/7/19

　キャラクターの裏に隠された自分自身をありのままに語る、ダ・ヴィンチWebの恒例企画『声優図鑑』。第290回に登場するのは、『ラブライブ！スーパースター‼︎』の聖澤悠奈役などを担当し、歌手として『デリシャスパーティ♡プリキュア』のED主題歌「DELICIOUS HAPPY DAYS♪」などを歌唱する吉武千颯さん。

テレビでは圧倒的な歌唱力と表現力で『プリキュア』の主題歌を歌い上げる吉武さんですが、もともとは音痴だった…と意外な事実。小学生から競争が当たり前の環境にいて、負けず嫌いだったことが、今の素敵な歌声につながっているそうです。

歌い始めた頃はめちゃくちゃ音痴でした

——声優と歌手の両方で活躍していますね。

吉武：もともと表現することが好きで、最初はダンスから始まったんです。3歳頃からバレエを習っていて、小学5年の頃から毎日のようにスクールに通ってました。どハマりしちゃって。高知から広島に引っ越した時に、親が探してくれたのがアクターズスクール。周りの子は芸能界を目指す子ばっかりだったから、私も刺激を受けて、歌とダンスばかりしていました。

——どハマりするくらいの、歌とダンスの楽しさとは？

吉武：むずかしいですが…たとえば感謝の気持ちとか、日頃なかなか伝えられないことを歌と踊りで表現できるところ。私自身、高知にいる時に通っていたスクールの先生の表現力に感動して。見ているだけで涙が止まらなくなるくらいパワーがあったんですよね。私も誰かに何かを届けられるパワーのある人になれたらいいなと。

——歌も、もともと好きだったんですか？

吉武：好きでしたが、歌い始めた頃はめちゃくちゃ音痴だったみたいで…。最初にトレーニングしてくれていた先生に久しぶりに会いに行ったら、「あんなに音痴だったのにね」って言われました（笑）。スクールのオーディションで歌う時も、マイクを持つ手がガタガタ震えてしまって、どちらかというと苦手意識がありました。

——そんななか、これだけ美しく歌えるようになるのはすごいです。

吉武：私はダンスが得意っていう周りの認識があったのか、グループで立ち位置を決めるときに歌の振り分けがないことがあって、それがくやしかったし、小学生の頃からずっと習い事のバトルの中で育ってきたからなのか、負けず嫌いで。だから、毎日歌わないことはなかったです。家でずっと歌っているから、「ちょっと静かにして」って親に言われることもありました（笑）。

——そして今では歌手に…。

吉武：自分でも歌を仕事にするなんて思ってなかったです。でも、今は歌うことが大好きだし、歌詞に込められた想いを自分なりに表現することが好きなので、まだまだ課題はありますけど、ここまで頑張ってよかったなと思います。

——ちなみに、今の課題とは？

吉武：私の声の印象だと、もっと高いキーが出ると思われがちですが、そんなに得意ではなくて。でも、自分で限界と決めている音域を超える曲をもらっても、本番では歌わないといけない。それを続けていたら少しずつ音域が広がってきたんです。これからもっと広げていきたいですね。

声がヘンっていう自覚はあったけど…

——アクターズスクール広島はアイドルを多く輩出していますが、お芝居や声優のお仕事に出会ったのは？

吉武：歌手やアイドルに憧れていたんですけど、事務所やプロジェクトのオーディションになかなか受からなくて。そんな時、スクールの方に「そんな声なんだから声優さんは？」と言われて。もともと転校が多くて、自己紹介をするだけで真似されていたし、声がヘンっていう自覚はあったんですけど(笑)。

——傷つくこともあったでしょうね。

吉武：高校の途中くらいまで、悩んでいた時期もありましたね。でも、声優を目指してからオーディションに受かったので、自分の声が武器になることを知ってからはイヤじゃなくなりました。人とはちょっと違うキーだし、「囁くようにしゃべるね。その声での歌唱が想像できない」と言われることもあるので、そこはアピールポイントなのかも（笑）。

——2018年頃から声優のお仕事がスタートしていますが、影響を受けた作品は？

吉武：初めて主題歌を歌わせていただいたテレビアニメ『スター☆トゥインクルプリキュア』です。小さい頃から観ていた作品に携われることがめちゃくちゃ嬉しくて。『プリキュア』って大人にとっても大事なことがいっぱい詰め込まれた作品だなって思います。

——どんなところに、そう感じますか？

吉武：たとえば、今の『デリシャスパーティ♡プリキュア』はご飯がテーマですけど、このご時世だからこそ誰かとご飯を食べて「美味しいね」って会話できたり、思っていることを分かち合えるのは大事なことで、家族や友だちの大切さを実感するんです。どのシリーズにも、大人が忘れかけているような深いメッセージが込められている気がします。

——さすがは長く続く作品だと感じます。小さい頃に初めて観たシリーズは？

吉武：最初に観たのは初代の『ふたりはプリキュア』で、ずっと大好きだったのはキュアブラック。いまだに、おばあちゃんの家にグッズやおもちゃが置いてあります。

——歌を真似して歌うようなこともありましたか？

吉武：やっぱり同世代の子とカラオケに行くと、みんな『プリキュア』の主題歌を入れるんですよ。みんな知っていて歌えるから（笑）。歌はずっと記憶に残り続けるんだなって思います。

——ご自分でも、聴く人の記憶に長く残る歌を歌いたい、という理想を持っているんでしょうか。

吉武：もともと、小さい頃に観たアニメや聴いていた歌が大人になってからも心の中に残ることに感動して、声優を目指そうと決めたので。『プリキュア』で歌わせていただくようになってから4年目に突入しましたが、物語が伝えたいテーマを歌を通しても伝えていきたい、と思いながら歌わせていただいてます。

——声優としては、『ラブライブ！スーパースター!!』の聖澤悠奈役が代表作のひとつになっています。

吉武：担当させていただいている子と一緒にステージへ立つのが初めての作品で、特に悠奈ちゃんとは似ているところが多かったから、一緒にステージへ立った時は最高に楽しかったし、悠奈ちゃんのことを考えている時間が好きなんです。

——たくさんお客さんがいて緊張しちゃいそうですが…。

吉武：自分史上初の人数でした！でも、出る前は緊張しても、出てしまったら急に楽しくなるタイプなので（笑）。お客さんが入っていない状態で一度ゲネプロをしているから、そこに大勢のお客さんが入ってくれた喜びのほうが大きかったです。客席のキラキラが見えた時の喜びは大きかったです！

——聖澤悠奈と似ているところ、というと？

吉武：家族も似てるって言ってくれるんですけど…自分で言うのは恥ずかしいですね（笑）。素敵だなと思うのは、元気な印象が強いのに、じつは周りをよく見ていて、他のメンバーにもアドバイスできるところ。私自身も周りの人たちに支えられている感謝の気持ちを忘れたくないから、悠奈ちゃんのように振る舞えるといいな、と思ったりします。

寝る前に大食い完了まで見届けます

——好きな漫画やお気に入りの本を教えてもらえますか？

吉武：小さい頃に読んで感動した本は、『犬と私の10の約束』。生き物の大切さが感じられる作品で、小学校の頃、本を読んで泣いたのは初めてだったと思います。上京してからも大事にしていて、いまだに読んで泣いちゃいますね。映画化もされていて、その頃TSUTAYAで何度も借りて見返していた、大好きな作品でした。映画も、何回観ても泣いちゃう（笑）。

——子どもも大人も泣ける本、気になりますね…。では次に、吉武さんの3つのルールを教えてください。

吉武：なんだろう…。1つ目は、朝早くから仕事がある日は、朝あったかい飲み物を飲むこと。カップの味噌汁も大好きだし、喉にいい紅茶を飲んだりして、喉と体をあっためます。

——2つ目は？

吉武：毎日パックをすること！お風呂から上がったらすぐに、顔に導入美容液だけ塗ってパックをして、ボディクリームを塗り始めます。乾燥時間を与えない（笑）。女優さんのYouTubeで保湿が大事だと知って、毎日するようになりました。

——3つ目はどうでしょうか。

吉武：食べてる人を観るのが好きで、大食い動画を寝る前に観ます。SNSやコメントを確認した後に、そのままYouTubeに移動して。私のスマホだと「おすすめ動画」に大食い系がいっぱい出てくるので、それを順番に観ていくという。

——お腹、すきませんか…？

吉武：よく言われますけど、自分がそんなに食べられないから、普通じゃ食べられない量のご飯を食べるのを観るのが好きなんですよね。

——おすすめのYouTuberは？

吉武：よく観るのは、ロシアン佐藤さん。特大弁当を自分で作っていて、作る過程もあるんですが、「こんな大きなエビフライどうしたらできるの？」と思ってたら、一尾じゃ足りないから何尾も使って工夫されているんですよ。料理を観るのも好きだから、それを1度に観られるのはうれしい。真似はしないので、ただただ観て満足するだけですけど、完食するまで見届けてから寝ます！