星空と出合いに/前島亜美「まごころコトバ」㉝
公開日:2022/7/22
家庭用プラネタリウム「ホームスター」を起動しながら星について話をするpodcast番組が始まり、パーソナリティを務めることになった。
星にまつわる仕事。出演が決まった時の知らせは、とても嬉しいものだった。
田舎で育った私にとって星空はとても身近にあるもので、毎日のように星を見上げて生活をしてきた。
幼いころ、空手の稽古が終わったあとに「もっと強くなりたい」と思いながら見上げる星空が大好きだった。悔しい思いをしても、悲しい出来事があっても、あの星の下で深呼吸をすれば、また向き合う力をもらったように思う。
雲さえなければ星も月もはっきりと見えるため、ニュースなどで特別に輝く星があると聞くと窓を開け、カエルの鳴き声を聞きながら家族と空を眺める時間が好きだった。
星に囲まれて育ったからか、プラネタリウムにも自然と興味を持っていた。本格的に通うようになったのは中学生時代。仕事の合間が3時間ほどできた時は、よくプラネタリウムに足を運んだ。
1番好きなプラネタリウムは、東京ソラマチにある「天空」。ソラマチで買い物を楽しんだあとにプラネタリウムで癒されるのが隙間時間の楽しみだった。
ドーム型の天井に映る満天の星空を見ると疲れが癒え、悩みごとからも離れられる気がした。椅子を倒して視界いっぱいに広がる星空を眺めながら、いつか星に関わる仕事がしたい、プラネタリウムのナレーションをしてみたいとあこがれを持っていた。
そんな星が好きだった私も、時間に追われ日々を生きているとすっかり星に触れることがなくなっていたことをpodcastの番組を通して気づいた。
収録中にスタジオ内で家庭用プラネタリウム「ホームスター」を起動させると、スタジオが星空でいっぱいになった。
久しぶりに眺めた星空。思わず息がもれ、空を見上げる時間はとても大切なものだったと改めて気づき、初めてプラネタリウムを見た時の高揚感を思い出しながら見入ってしまった。
最近では「星の瞬き」機能というものがあり、家庭用プラネタリウムで流れ星を見ることもできる。
流れ星。頭上を流れる光を見た時、思い出した場所があった。
数年前、出雲大社に行きたいと一人旅に思い立った。島根県での宿泊先を探していると気になる文字が目に入った。
一棟貸し。ホテルや旅館という形式ではなく、古民家に泊まることができるという。さらに、地域の方々が協力して運営しているため、朝食は近くの家に伺い手料理を食べられると。
惹かれる要素しかなく、予約をすることに。車の免許がなかった私は特別にと移動手段もお手伝いいただきながら、泊まる家に到着した。
自然の真ん中にある家。それでいてきれいで、あたたかみがあって、歴史も感じるような言葉にできない魅力が溢れていた。
観光が目的のための宿だったはずが、この家での時間が目玉のように楽しんだ。
農作物にもこだわりがあり、夜ご飯は食材を自分で料理して食べられるシステムだった。初めて使うキッチンなのに、この場所に流れている生活に身を委ね楽しむかのように、ひとつひとつの道具を愛おしく思いながら料理をし、あたたかいご飯をいただいた。
ヒノキ風呂にゆずを浮かべ、これ以上ないくらいの幸せを感じたあと、夜風にあたろうと庭に出てみることに。
そこで見た星空。
あの星が、人生で一番の星空だった。
遮るものがなく広大で、星の光がまっすぐ目に飛び込んでくるようで、思わず呼吸を忘れるくらいの美しさだった。
時間を忘れ眺めていると、視界の中でなにかが動いた。急いで注目すると、それが流れ星だと気づいた。それも一度ではなく、何度か見ることができた。
「これが、これが流れ星なんだ。初めてみた。初めて本物を見られた」
感動に気づけば涙が流れていた。
夜のしんとした空気、暗闇に飲み込まれそうな怖さもあったが、その上で星が輝くからこそあんなにも美しく見えたのかもしれないと感動した。
人の繋がりが作り出すあたたかな場所で、澄み切った自然の美しさを強く感じたあの感動は忘れられない。
星を見に、遠出をする。星のために、旅をすることはとても素敵なことなんだと思った。
ホームスターで星空を自宅に映すたびに、あの空を思い出す。
身近な癒しをくれる家庭用プラネタリウムと星のある生活を送りながら、時間と余裕ができたときに本物の星空と出合いに、どこまでも足を延ばしにいきたい。
まえしま・あみ
1997年11月22日生まれ、埼玉県出身。2010年にアイドルグループのメンバーとしてデビュー。2017年にグループを卒業し、舞台やバラエティ番組などで活躍。またアプリゲーム『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』(2017年)でメインキャストの声を演じ、以後声優としても活動中。
Twitter:@_maeshima_ami
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