『RWBY』を観たクリエイターから『RWBY』を作ったクリエイターへのアンサー。アニメ『RWBY 氷雪帝国』が描く新しい文化の交流点

アニメ

公開日:2022/8/5

RWBY 氷雪帝国
『RWBY 氷雪帝国』
©2022 Rooster Teeth Productions, LLC/Team RWBY Project

 肥沃な大河の交わる地に文明が生まれたように。文化の交流点に新しい作品が生まれる。日本のマンガ・アニメ作品のファンだったアメリカ在住のクリエイターが、ひとつの映像を作り上げた。3分28秒に自分の好きなものを詰め込み、研ぎ澄ます。カッコ良さをてらいもなく追求し、

 その映像は鬼気迫る緊張感に満ち溢れたものだった。

 インターネット上に配信されると、たちまち全世界から大きな反響を呼んだ――それが「RWBY “Red” Trailer」だった。

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 3DCGで作られたこの映像は日本のマンガ・アニメを愛するものならすぐにわかるようなオマージュがたくさん織り込まれていた。かわいい女性キャラクター、巨大な武器、銃器から巨大な鎌に変形するメカニック。地面につきそうなほど大きく赤いマント。そしてアクロバティックな殺陣、キメキメのアクション。2012年に配信されたその映像は、アメリカ国内だけでなく日本のマンガ・アニメファンのもとにも届いた。当時は3DCGアニメが珍しかったこともあり、目の肥えているマンガ・アニメファンも注目。これはすごい!と大きな反響を呼ぶことになった。やがて、 “White” “Black” “Yellow”と主人公が違う全4色のトレーラーが発表され、そして2013年に長編となるWEBアニメシリーズが制作された。それが『RWBY Volume 1』である。

RWBY 氷雪帝国

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RWBY 氷雪帝国

 物語の舞台は、ダストやオーラといった魔法的な要素と科学技術が発展したレムナントと呼ばれる世界。そこでは人類を脅かすグリムと呼ばれる怪物と、人類を守るハンターが戦っていた。15歳の少女ルビー・ローズはそんなハンターに憧れて、養成所であるビーコン・アカデミーに入学する。彼女はそこで大企業のお嬢様ワイス・シュニーと、獣人ファウナスのブレイク・ベラドンナ、そしてルビーの異母姉妹ヤン・シャオロンとともにチームRWBYを結成。さまざまなミッションに臨むことになる。

 本作を制作したRooster Teeth社は、同社のサイトで次々と新作の配信を開始。スクールカースト(生徒間の序列)、人間と獣人の差別問題や、複雑な家庭問題などを堂々と取り込み、アニメ的なビジュアルでありながらも奥深いストーリーを展開し、世界中のファンの注目を集めた。セリフは全編英語だったため、日本のファンの間ではコア的な人気を集めていたが、2014年にワーナー ブラザース ジャパンが日本語吹き替え版の制作を発表。ルビー・ローズ役に早見沙織、ワイス・シュニー役に日笠陽子、ブレイク・ベラドンナ役に嶋村侑、ヤン・シャオロン役に小清水亜美を起用してDVD/Blu-ray Discを制作。劇場でイベント上映を実施するという大規模な展開が行われた。そして、漫画家/イラストレーターの三輪士郎によるコミカライズも『ウルトラジャンプ』(集英社)で連載。日本においても『RWBY』はメジャーな作品として注目を集めることになった。

 日本のアニメが好きなクリエイターが手がけた、日本アニメリスペクトの作品の、日本語吹き替え版が日本で流通する。そしてその作品が日本のファンやクリエイターのもとに届けられる。すばらしい循環がここに生まれたのである。原作・監督のモンティ・オウムは残念ながら本作の制作途中に病気で亡くなってしまったが、その遺志をスタッフたちが引き継ぎ、10年経った現在も『RWBY』はシリーズを継続している(現在はVolume 8まで公開中)。また、日本でも2017年に日本語吹き替え版を特別編集した「RWBY Volume 1-3: The Beginning」として全13話がTV放送され、さらなる人気の広がりを見せている。いまや国境や人種を感じさせない、グローバルな作品として多くのファンから受け入れられているのだ。

RWBY 氷雪帝国

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 2022年で「RWBY “Red” Trailer」から10年。この収まらない熱に応えて、日本のアニメスタジオで新作が制作されることになった。それが『RWBY 氷雪帝国』だ。アニメーション原案:虚淵玄(ニトロプラス)、シリーズ構成・脚本:冲方丁、アニメーションキャラクター原案:huke、監督:鈴木利正、そしてアニメーション制作:シャフトといった数々の名作を手掛けてきたメンバーが中心となり、「RWBY」の世界を徹底的に分析し、作りあげたオリジナルエピソードが展開する。映像としては3DCGがメインではなく、手描きアニメが主体。オリジネイターである故・モンティ・オウムやメインスタッフたちが何度も夢想したであろう、ファンタスティックなアニメが実現するのだ。

『RWBY 氷雪帝国』の第1話は、原作『RWBY』Volume 1 の冒頭に、初期に公開されたTrailerの要素を組み合わせることで補完した内容のストーリーとなっている。作画であらたに描かれるルビーのアクションなど、驚くべき完成度の高さに驚いたファンも多いはずだ。そして第4話から本格的に『氷雪帝国』としてのオリジナルのストーリーが始まる。ここからは、ワイスを中心にキャラクターたちの内面に迫る展開が繰り広げられ、今作独自の世界観がつむがれるという。

RWBY 氷雪帝国

RWBY 氷雪帝国

『RWBY』を観たクリエイターから、『RWBY』を作ったクリエイターへのアンサーが送られる。国境を越えた文化の交流点に新しい作品が生まれた。

『RWBY 氷雪帝国』でどんな物語が描かれるか。ぜひ、最後まで注目していただきたい。

文=志田英邦