小麦粉の代わりに米粉を日常使いするコツは? 簡単すぎて苦手意識がなくなるレシピ本『まいにち米粉』著者・高橋ヒロさんインタビュー

暮らし

公開日:2022/8/4

高橋ヒロさん
高橋ヒロさん/撮影=福井裕子

 米粉を使ってさっと作れるパンやお菓子、料理を紹介する『まいにち米粉 パンと料理とお菓子』(池田書店)。使い慣れていないと扱いが難しそうな米粉を使ったレシピを、初心者でも失敗なく作れるようにできるだけシンプルにまとめてくれている、ちょっと画期的なレシピ本だ。

 著者の高橋ヒロさんは、子どもの小麦アレルギーをきっかけに何百もの米粉のレシピを繰り返し作ってきた米粉専門家。キッチンに小麦粉は常備しておらず、毎日の料理も全部米粉でまかなっているという。

 2022年7月にはまた小麦粉が値上がりするといい、さらに米粉に注目が集まっている今。米粉を日常使いできたら、体にもやさしいし、家計の負担も少しは減るかもしれない。初心者でも米粉を上手に日常生活に取り入れるコツを、高橋ヒロさんに聞いた。

(取材・文=齋藤久美子)

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揚げ物の衣やとろみづけ…。毎日の料理にも大活躍!

まいにち米粉 パンと料理とお菓子
まいにち米粉 パンと料理とお菓子』(高橋ヒロ/池田書店)

――米粉というとパンやお菓子のイメージが強いですが、『まいにち米粉 パンと料理とお菓子』を読んで料理にもいろいろ使えることに驚きました。

高橋ヒロさん(以下、高橋):エビチリや麻婆豆腐にとろみをつけたり、シチューやカレーのルウ代わりに使ったり、米粉って意外と万能なんですよ。小麦粉のようにダマにもならないから、テクニックもいりません。失敗なしでちょうどいいとろみをつけてくれます。

――揚げ物の衣にも使えるんですね。

高橋:そうなんです。フライドチキンも天ぷらも、米粉を使って揚げるとサクッと歯切れのいい食感に仕上がります。米粉は小麦粉よりも吸油率が低いから、冷めてもベチャッとならないし、カロリーも抑えられるんです。本当においしいのでぜひ試してみてください!

――ほかにも米粉を活用できる料理はありますか?

高橋:お好み焼きやチヂミの生地に使うと、表面はカリカリ、中はもっちりになっておいしいですよ。慣れてきたら、餃子の皮やうどんを作ってみるのもおすすめ。想像以上のおいしさにハマってしまう人も多いと思います。

まいにち米粉 パンと料理とお菓子 P60-61

パンやお菓子に挑戦するなら、まずは準備10分のクッキーから

かんたん、おいしい 米粉のクッキー
かんたん、おいしい 米粉のクッキー』(高橋ヒロ/池田書店)

――1冊丸ごと米粉クッキーのレシピを掲載した『かんたん、おいしい 米粉のクッキー』(池田書店)も拝読しました。どれも本当に簡単ですね!

高橋:初めて米粉を使う人でも作りやすいように、ほとんどのレシピを作業時間10分で作れるようにしてあります。植物油やバターなどオイルの種類を変えるだけで、サクサク、サクホロ、しっとり…といろんな食感になるのも、おもしろいですよ! 贈り物にも喜ばれますしね。

――米粉のレシピって難しそうなイメージがあったんですが、高橋さんのレシピはとってもシンプルですよね。このレシピが生まれるまでにご苦労はありましたか?

高橋:米粉の種類や材料の配合を少しずつ変えたりしながら、何度も焼き比べしましたね。クッキーも実は米粉だけで作ると歯固めみたいなカチカチのクッキーができあがるんです(笑)。それでアーモンドプードルとかきな粉とかほかの粉を少し混ぜて、食感を調整してみたり…。ほかのお菓子やパンのレシピも、全部そんな感じで1つひとつ作っていきました。

かんたん、おいしい 米粉のクッキー P20-21

――シンプルなレシピの裏にそんな努力があったとは…! パンのレシピも、混ぜて、1回発酵して、焼くだけ、と簡単ですよね。

高橋:パンも手間なく作れるように不要な工程をできるだけ省いています。それと、米粉には小麦粉のようにグルテンがないので、そもそもこねる必要がないんです。混ぜる時も、時間や回数を特に気にしなくていいから、面倒くさがりの人でも作りやすいと思いますよ。

――私は前に米粉パンを作って、大失敗をしたことがあるんです。その時は石のように硬いパンになってしまって…。

高橋:そういう人、けっこう多いんですよ。ずっしりと重いういろうのようなパンができました…とかね。レシピ通りに作ったのに失敗してしまうのは、そのほとんどが米粉の選び方が間違っているんです。米粉は、その種類によって粉砕方法も吸水率も違うから、米粉の種類によってできあがりに差が出てしまうんですよね。

まいにち米粉 パンと料理とお菓子 P20-21

米粉は“選び方”が超重要! 米粉の種類を間違えなければ失敗しない

――初心者はどんなふうに選べばいいでしょうか。

高橋:最近は「製菓用」「パン用」「料理用」と表示されていることが多いので、それもひとつの目安になります。ただ、メーカーや生産者によって基準がまちまちなので、私はあまり参考にしていません。料理に使うなら、比較的どの米粉を使っても大丈夫。パンやお菓子は米粉選びを間違えると失敗しやすいので、初めて作る場合はレシピが推奨する米粉を使うのが一番いいと思います。

――それで本書には推奨の米粉が記載されているんですね。もし推奨の米粉が手に入らない場合はどうしたらいいでしょう?

高橋:吸水率の実験をしてみると米粉の系統がわかります。米粉に米粉と同量の水を入れて溶いてみて、とろとろと溶けたらふんわり系のシフォンケーキやパンに適した米粉、団子状になったらどっしり系のチーズケーキやクッキーにおすすめの米粉です。

まいにち米粉 パンと料理とお菓子 P122

――米粉で失敗しないためには、“選び方”が大切なんですね。

高橋:そうなんです。米粉選びさえ間違えなければ、パンもケーキも本当に簡単でおいしいものができあがります。これまでに失敗した経験がある方は、きっと米粉の選び方に問題があっただけ。「私には才能がない…」なんて思わずに、米粉の種類を変えて再チャレンジすればきっとうまくいくと思います!

――ちなみに高橋さんのご自宅では何種類くらいの米粉を使っているんですか?

高橋:うちには仕事上、常時30種類くらいの米粉があります。でも一般家庭で使うなら、1~2種類で十分。クッキーや料理を作るなら料理用の米粉がひとつあればいいし、さらにパンやシフォンケーキも作るならパン用や製菓用の米粉を買い足せばいいと思います。

――忙しい人にこそ作ってほしいレシピは?

高橋:パンは2次発酵もベンチタイムもいらないから食べたい時にさっと作れるし、クッキーも準備10分で作れる、ケーキも粉をふるう必要がないし…全部おすすめかもしれません。余った米粉も料理に使えば無駄にならないですしね。クッキーや料理はスーパーでも手に入りやすい「料理用」の米粉で作れるので、まずはこの辺からチャレンジしてみると米粉の魅力を実感してもらえるかもしれません。

――最後に、高橋さんにとっての米粉の魅力を教えてください。

高橋:うちは息子が小麦アレルギーだったので米粉生活を始めたんですが、使い続けて思ったのは、お米って日本人にとって昔からなじみがあるもので、わたしたちの体にもきっと合っているんですよね。地産地消にもつながりますし。以前は小麦粉の代わりとして取り入れていたけれど、今は使いやすく、何よりおいしいから選んでいるような気がします。米粉を使ったパンや料理が自宅でも簡単に、しかもおいしく作れることが、本書を通してもっと広まってくれたらうれしいですね。