Flower代表・秋さん(前編)/歌舞伎町モラトリアム⑤

エンタメ

公開日:2022/8/22

 自身もホストクラブに通いながらも、社会学として歌舞伎町を研究する佐々木チワワ。そんなチワワが歌舞伎町で活躍する様々な「エモい」ホストと対談し、現代のホストクラブについて語りつくす新連載、「歌舞伎町モラトリアム」。

秋さん

 今回は歌舞伎町で4年連続売り上げ1億円を突破し、現在は「Flower(SINCE YOU…GROUP)」の代表を務める秋さんに取材させていただきました。

ホストは自分の人生設計にはなかった

佐々木:秋さん肌も綺麗でめちゃくちゃお若く見えるんですけど、結構ホスト歴も長いし始めたのも遅いんですよね?

:24でホストを始めて、今8年目ですね。ホストをやる前はバンドマンでした。芸能事務所に入れる、ってのに惹かれて応募したところがたまたまV系だったので、そのままV系バンドマンになったんです。

佐々木:そこからのホスト。転身のきっかけは何かあったんですか?

:きっかけは、僕自分の中で人生設計をしていて、一応そのバンドで食って行きたいっていうのがあったんですけど。美容の専門学校を卒業したんですよ。叔父が美容室を経営していたので、25歳までにバンドで売れなかったら資格を使ってそこで働こうと思ってて。所属しているバンドが解散したとき、繋ぎでバーでバイトしようと思ったら系列のホストを勧められて。

佐々木:最初から「ホストやりたい!」ってわけではなかったんですね。

:正直、ホストに良いイメージを持ってなかったんです。なので最初は断ったんですが、そしたら「じゃあ内勤(ホストクラブの店舗運営スタッフ)はどう?」って話になって。1か月だけって条件で内勤として働くことにしました。

佐々木:こんなイケメンが内勤だったら、「なんであの人指名できないんですか」って思いそうな…。

:(笑)。で実際に働いたらホストのイメージが変わって。こんなに夢を持ってやってたり、こんなにキラキラした世界だったんだって。僕が元々音楽をやりたかった理由として、19歳の時にお母さんを亡くしてしまったんですけど、その時にすごい助けられたのが音楽だったんですよ。誰かの助けになれたらいいなぁっていう、誰かのために仕事をできたらいいなっていうのはすごい自分の中でも思ってて。その時に選んだのがバンドマンだった。ホストもその目の前のお客さんがすごい楽しんでくれて、「今日来てよかった」とか言ってくれる。ライブに来たお客さんとも重なるものがあって、そこからホストやってみるか!と。

佐々木:そこから8年も…! ホストの皆さんって結構、ほかの仕事は全然続かなかったのにホストだけは続いたみたいな話を聞くんですけど、続く理由って何かあるんでしょうか?

:他の人よりお金を稼げるっていうのが大前提であるんですけど。やっぱり普通に楽しいからですかね! 男子校ノリじゃないですけど。まぁ十分にすごいやつばっかだし、そういうのですかね。働いてる人たちの背中を見ていても、追いかけたくなるような人ばかりで。まぁ振り返っても大半酔っぱらってるんで、あんまり記憶ないんですけど(笑)。

ホストは個人性から団体戦

佐々木:ホストを8年やっていて、業界が変わったなと思うところはありますか?

:働きやすくなったのはめちゃくちゃ感じます。むかしは先輩に質問するのも怖くて、「今忙しいから!」とか突っぱねられてたんですけど。今は先輩の方から教えてくれたり。みんなで頑張ろう! って感じで個人戦から団体戦になったなと。だいぶ働きやすくなったと思います。

佐々木:ほんとに、ホストの子たちみてても従業員と友達! 仲間! みたいな感じで社員旅行も楽しそうでほほえましいですよね。逆に女の子の変化とかはありましたか?

:色々ありますね。最大はSNSが発達したことによる変化ですね。ラインだけじゃなくてインスタとかTwitterのDMから指名が来たり。

佐々木:最近はそういうSNSの使い方も代表が背中で見せないといけない風潮があるから大変ですよね…。そういうお店のことを意識するタイミングって、新人から始まって幹部になって、代表になって自分でお店をだして…と進むホスト人生の中のどこなんでしょう?

「幹部」の背負うもの

:新人の時は、あんまり役職関係ねぇやと思ってました。ただ楽しく仕事してたら、売れて役職が上がっていって。で幹部になる前に、「覚悟あるのか」って聞かれて。その時はいや覚悟ってなんやねん、何が変わるんだよって思ってたんです。でも実際幹部になってみると、役職のないプレイヤーの時とは、もう責任感が全然違うんですよ。店のミーティングとか店を今後どうしていこうとか、自分だけじゃなくて全体を見なきゃいけなくなった。責任感を持つようになったら、店のほかの幹部を見る目も変わって。当時の店の代表のこと見てかっこいいなと思ってて、いつか俺もなりたいって。

佐々木:そして今、実際に代表として自分のお店を持ったわけですね。

:代表になると、自分が店の顔になるんですよ。「あの秋の新店!」って。成功したら従業員のおかげ、失敗したら自分のせい。代表の仕事って店の売り上げを上げることで、今僕が社長になってやることが店の利益を上げることなんですよ。プレイヤーとは全く違くて、まだなって間もないですけど……うん、全然違いますね。

佐々木:後編ではまずそんな秋さんが出した新店のコンセプトなどを後編ではまず聞かせていただきます!

<秋さんのSNSはコチラ>
・Twitter:@aki_asakura6
・Instagram:aki_asakura
<お店の詳細はコチラ>
・Flower

佐々木チワワ(ささき・ちわわ)/2000年生まれ。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)在学中。10代から歌舞伎町に出入りし、フィールドワークと自身のアクションリサーチをもとに「歌舞伎町の社会学」を研究する。歌舞伎町の文化とZ世代にフォーカスした記事を多数執筆。現在、初の書籍『「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認』(扶桑社)が好評発売中。