あなたの悩みは無意識な脳のクセ=認知バイアスに気づけば解決できる!? 明日を生きやすくする手がかりが見つかる一冊

暮らし

公開日:2022/8/7

「脳のクセ」に気づけば、見かたが変わる 認知バイアス大全
「脳のクセ」に気づけば、見かたが変わる 認知バイアス大全』(川合伸幸:監修/ナツメ社)

 友達の子どもにプレゼントを贈るとき、なんとなく男の子には青いもの、女の子には赤いものを選ぶ。眼鏡で白衣を着ている男性を見ると「お医者さんだろう」と思う。在宅勤務をしている人は、社内で仕事をしている人より楽をしていると思ってしまう……。これらはすべて、先入観や直感など、論理に基づかない判断によるもの。人は時として、そんな自分でも気が付かない無意識のうちに行われる判断によって損をしたり、誰かを傷つけたりしてしまうことがあるといいます。その無意識の不合理な判断や選択=“認知バイアス”を自覚することができれば、人間関係での失敗を防いだり、ビジネスでも正しい判断を下したりできると教えてくれるのが本書『「脳のクセ」に気づけば、見かたが変わる 認知バイアス大全』(ナツメ社)。監修者である川合伸幸さんは、名古屋大学情報科学研究科教授であると同時に、日本学術振興会特別研究員などさまざまな団体に所属する心理学博士。本書では、そんな川合さんが紹介する100以上の認知バイアスを「人間関係」「組織停滞」など5つの章に分けて、日常的でわかりやすい例とともに紹介します。

 例えば「人間関係のバイアス」の章では、ケンカをしたときに、お互いの主張に反論したりするのではなく、「◯◯のくせに」と相手の人格やスペックを攻撃してしまう“対人論証”、初対面の相手が寝ぐせそのままで現れたら「きっと仕事もできないんだろうな」と身なりとは関係のないところまで否定的に考えてしまう“ホーン効果”など、ついついやってしまいがち、思ってしまいがちなパターンを例に挙げながら、21の認知バイアスを紹介。

 そして「組織停滞のバイアス」の章では、組織の方針転換が難しい理由として“システム正当化バイアス”、“サンクコスト効果”、周りが残業していると、自分も残らなくてはいけない気がしてくる心理に潜む“ハーディング効果”、部下を指導するうえで役立ちそうな“予言の自己成就”、“知識の呪縛”など、さまざまな立場や環境の人を想定したバイアスが取り上げられています。

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 他にも「消費者と市場のバイアス」では、人が消費行動を行う際に働くバイアスを、「差別と偏見のバイアス」では性差別から自分の集団だけひいきするという、偏見に基づいて誤った判断をしてしまうような認知バイアスを紹介。また、「思想と政治のバイアス」では人がフェイクニュースを信じる理由などに繋がるバイアスがわかりやすく解説されています。

 ちなみに本書で真っ先に取り上げられているのは、「自分の認知は歪んでいない」=「自分はいつも正しい判断をしていて、認知バイアスなんてない」というバイアス。つまり自分の中にある認知バイアスに気づいた時点で、すでに問題は解決に向かっていると本書は伝えます。そのうえで最終章では、自分が持つ認知バイアスに気づいた人のため、バイアスの軽減法やバイアスとの付き合い方も紹介。

 これまで「なぜかうまくいかない」と思っていたことが意外な角度から解決できたり、自分の人生を楽にできたりするきっかけがつかめる一冊です。

文=原智香