ここまでバラして大丈夫!? ベストセラー作家が教える、超実践的な「小説の書き方」
公開日:2022/8/16
「小説を書きたい」と思っている人は意外と多いに違いない。だが、頭のなかで構想を練るのと、実践するのはまったく違う。実際に書いてみようとすると、上手くいかないことの連続。思ったように小説が書けずに歯痒い思いをした経験がある人は決して少なくはないだろう。
そんな、小説を書くことに悩んでいる人におすすめしたいのが、『プロだけが知っている小説の書き方』(森沢明夫/飛鳥新社)。『虹の岬の喫茶店』『おいしくて泣くとき』などの著作で知られるベストセラー作家・森沢明夫さんが小説の書き方を教えてくれる1冊だ。本書では、実際の書き手から寄せられた悩みに対して、一問一答形式で小説の書き方を解説。作家自身のノウハウを一方的に公開するものではなく、双方向のやりとりで生まれた書籍であるため、書き手目線の、実践的な内容となっているのだ。
たとえば、本書にはこんなQ&Aが掲載されている。
Q.物語の設定を考えるうえで、大事にしていることは何ですか?
A.キャラクターを「熟知」すること
小説を書くためには、舞台設定、人間関係の設定、ストーリーの流れの設定など、いくつかの設定が必要となる。なかでも、森沢さんがいちばん大切にしているのは、キャラクター設定。面白い物語を書くためには、キャラクターが最も重要なのだそうだ。
具体的には、キャラクター1人ひとりの個性を片っ端から書き出しつつ、脳内で映像化していく方法。名前、性別、身長、体格、年齢、髪型、性格、服装といった基本的な情報から、細かい部分までひたすらキャラクターの特徴を書き出してみよう。小説のなかですべての個性について触れる必要はなく、これは、あくまでも、著者自身がキャラクターを熟知し、自然に動かすためのもの。特に、性格について書き出す時には、生い立ちを含めることが大切なのだという。
キャラクターの過去に物語のカギとなる出来事を設定しておくと、伏線のタネにもなる。森沢さんの場合は、主人公についてはA4の紙がぎっしり埋まるくらい、サブキャラでも半分から7割が埋まるくらいはその個性を列挙しているそうだ。面倒くさがらず、キャラクターをきちんと設定することで、キャラクターが活き活きと動き始めるのだ。
Q.人物描写がうまくいきません。
A.キャラクターの「行動」を表現しよう
人物描写は、力の差が現れやすい部分。気をつけたいのは、「人物を説明するための文章」を書いてはいけないということ。「物語の流れのなかで、自然と読者に人物を理解させる文章」を書くように心がけなければならないと森沢さんは語る。
たとえば、主人公を「締め切りを守れない怠惰な小説家」と設定した場合、
パターン1(「説明」が書かれた文章)
残念なことに、ぼくという小説家を漢字二文字で表すならば、「怠惰」ということになるだろう。正直、自分でもちょっと不思議なくらい時間にルーズなところがあるのである。
などと、主人公に説明させてはいけない。主人公の行動でそれを描くべきなのだ。
パターン2(「行動」が書かれた文章)
「はいは〜い。大丈夫ですよぉ。まさにいま書いているところですんで。あと少しで脱稿できると思いま〜っす」
万年床に転がったまま口から出まかせを言うと、ぼくは担当編集者との通話を切った。
ったく、そんなに、せかさないでよねぇ――。
胸裏でぼやいて、「ふう」と大袈裟なため息をこぼす。
ふたたび編集者から電話がかかってこないよう、スマホの電源を切った。
はい、これで邪魔者はさようなら、と。
用なしになったスマホを枕の下に隠して、代わりに読みかけの漫画を手にした。
大丈夫。どうせ締め切りなんて、一日や二日過ぎたところで、どうってことはないのだ。
ぼくは漫画のページを開いて、ふたたび愉悦のSFワールドへと潜り込むのだった。
物語を動かすことで人物を描写していくと、読者の頭のなかには映像が流れ出し、キャラクターの性格がはっきりと伝わってくる。なるべく説明文は使わない。そのことが意識できれば、描写力は格段にアップするに違いない。
その他にも、この本には、プロットの書き方や推敲の仕方、バトル描写のレベルアップ術まで、「こんなに教えちゃって大丈夫?」と思わされてしまうほど、小説を書くための実践的なメソッドが披露されている。森沢作品の制作の舞台裏も明かされるため、彼の作品と合わせて読むのも面白そう。この本を読めば、創作が何倍も楽しくなるとともに、普段読んでいる小説をより深く読むこともできそうだ。
最短距離で面白い小説を書きたいならば、本書を読んで、自分の小説をもっともっと磨いてみよう!
文=アサトーミナミ