綾部祐二が語る【英語】「一瞬でできるようになる勉強法」「楽な勉強法」なんて、ない《インタビュー②》

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公開日:2022/8/20

「夢はハリウッドスター」。そう公言している綾部祐二さんが、その夢に近づくためアメリカへ渡って早5年。これまで沈黙を続けてきた彼が、この度初のエッセイ集『HI, HOW ARE YOU?』を発売し、“空白の5年間”を明らかにした。

 インタビュー第2弾では、「1万点中4点」だと評された「英語」に重点を置き、綾部さんの思いや、これから広めていきたいという勉強法について話を聞いた。

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僕が英語をどうしても覚えたいのは、世界中の人としゃべりたいから

――ハリウッドスターになるという夢を叶えるためにも、英語の上達は必須だと思いますが、なかなか苦戦しているようですね。

 今、英語はハリウッドスターになるためのツールではなくって、僕の一つの「夢」なんです。「ハリウッドスターになりたい」という強い気持ちと同じくらい、「英語がしゃべれるようになりたい」と思っています。もちろんアメリカに住んでいるので、英語がしゃべれないと生活するのに困るというのもあるんですが。僕が英語をどうしても覚えたいのは、世界中の人としゃべりたいからですね。ハリウッドスターになれるかどうかは、運もあって努力だけではどうにもならないですが、英語は正しい努力をすれば必ず習得できると思うんです。だからこそ何をやっているんだ、って話なんですけど。

――英語が夢の一つとなったのには、何かきっかけがあったりしたんですか?

 もともとは英語がしゃべれたらカッコいい、みたいなことだったんですね。で、ハリウッドスターになるためには、もちろん英語を手段として習得しなければと思って。でも、渡米してアメリカにいればいるほど、なんでもない日常の会話がしゃべれるようになりたいと強く思うようになりました。例えば、日本だったら京都のちょっとしたおみやげ屋さんに入って、「わあ! 素敵ですね、このちょうちん。これ、こちらで作っているんですか?」「へ~。あんまり見ない色ですよねぇ」とか、なんでもない会話ができるじゃないですか。こういうことを普通にアメリカでもしたいわけですよ。

――しかし、英語はなかなか手強かったと。

 はい……。英語学習者には、「外国の人と会話を楽しみたい」っていう気持ちが少なからずあると思うんですね。その気持ちの倍くらい努力できる人はすぐにしゃべれるようになっちゃうんですよ。でも、会話をしたいっていう気持ちよりも、大変なことをするの嫌だなあっていう気持ちが大きくなると諦めちゃう。そういう人のほうがきっと多いと思います。でも僕はアメリカまで来てやってるから、やめるわけにいかないでしょ。だから毎日、「ちょっとでもやらなきゃ、ちょっとでもやらなきゃ」って……。今日だって昼間ずっとそう言ってたんですよ? なのに、バイクの洗車して終わりましたから。

――(笑)。

 とにかく机に座ってじっとしているってことができないんですよ。本も読めないし、勉強も嫌いだし……。「うわーーーーーーっ!」てなっちゃう(笑)。それでも、色々試したんですよ。自分で単語とか文章とかを録音して、その音声を聴きながら、セントラルパークを歩いてみるとか。でも、結局音楽を聴いちゃうんです、自分の好きな。気持ちよくなってきちゃって、気づいたら違うやつ聴いちゃってるんですよ。でもこれだけは言わしてください。僕、邦楽は聴かなかったですから! 5年間ずっと、洋楽だけをちゃんと聴いてたから(笑)。

「英語を使うんだ」ということをもっと強く意識しなくてはダメ

――5年間で、綾部さんの性格に合う勉強法には巡り合えなかったんですか?

「一瞬でできるようになる勉強法」「楽な勉強法」だなんて、そんなものはないですよ。まず、そこからみんなに伝えていかなきゃならないなと思います。まだまだ自分でもやれてないですけど、それでも5年間でだいぶ「こういうことをやっていくべきだな」というのが、わかってきました。だから今後はそういったことを、みんなが遠回りしなくても済むように、YouTubeなどを使って自分なりに英語学習について発信していけたらいいなと思います。

――その内容を少しお聞きしてもいいですか?

 メインは、「英語を『これから使うもの』としての意識をもって学んでいくべきだ」ということを伝えていこうと思っています。ただ覚えるだけじゃなく、「英語を使うんだ」ということをもっと強く意識しなくてはダメなんだと。テストのために暗記する、それもいいと思います。でもそれと同時に、「今習っているこれは、日常のどんな場面で使いたいんだろう」っていうことを常に意識して勉強することが、実践につながると考えています。5年前に戻ったときに、こういう教え方をしてくれていたら、だいぶ楽だっただろうなと思うから、いち早く発信していこうと思っているんですよね。

――それはすなわち、反面教師となって教えていくということでしょうか?

 その面もあると思います。僕がやろうとしていることって、ダイエット系YouTuberで例えると、まだダイエット途中で、全然健康な体じゃない人が「こんな良いダイエット方法があるよ!」って発信するようなことだと思うんです。もちろんそれに対して、「いや、お前結果出てねえじゃねえか」っていう声も出ると思いますが、ストイックに頑張れる人が僕の方法を実行したら、絶対に痩せていくと思っています。それはなぜかといったら、僕が英語力ほぼ0の状態から学んでいる人間で、そのうえで、英語教師のワイフやネイティブ並みにしゃべる人たちとの勉強のデータ、彼女たちが持っているノウハウを頭の中に入れているからです。実際、英語が堪能なワイフは、僕がどこで引っ掛かっているのかわからないんです。その点、僕は英語が“わからない”人の気持ちがわかる。そして、御存じのとおり芸人なので、「勉強する能力」はなくても、「伝える能力」は他の人よりも長けているという自負がある。だから、ワイフや関わってきたネイティブ並みの人たちから得てきたものを、僕を通して出すってだけです。もちろん、僕の解釈が間違っていないか、しっかり確認しながら進めていきますけどね。

――なるほど。綾部さんがやろうとしていることは、英語がわからない人に対する教え方の伝授、という面もあるんですね。

 そうですね。だから、多くの人は「なるほど、こうやって学べばいいんだ」、「こんな角度で教えてあげればよかったんだ」ってなるような気がしています。

――結果、そういう綾部さん流の英語の教え方に辿り着くことができたのだから、思っていたほど英語が伸びなかったのも決して悪くはなかった、と捉えることもできますよね。

 まったく真逆です。これは、もう、ハッキリと言えます。一番の理想は、5年で英語がペラペラにしゃべれるようになっていて、そのうえで先生としてみんなに教えることができていたことです。でも、こういう状況になってしまった。だから、とりあえず今自分が持っているデータは早くみんなに伝えておいたほうがいいと思って、発信しようとしています。すなわち、「今これしかできない」という表現でしかないです。何も誇れるもの、正しいものなんかないです。もっと勉強すればよかったなという後悔、悔しさそれだけです。

――ご自身で言うほど英語が全くしゃべれないというわけじゃないですよね? 「英語力0で渡米して、ここまでできるようになった!」ということをもう少しアピールしてもいいのではと思うんですが……。

 それをやっちゃダメだと思っています。例えば、こないだ野良猫を見つけて、「わ~、かわいい~!」って撫でてたんですよ。そしたら、知らない外国人の方が僕のところまできて「◎△$¥●&%#キャット?」って言うんです。その時、僕が聞き取れたのは「キャット」の部分だけ。だから、「イエス」って言ったんですね。そしたら、ワイフが「ノーノーノー」って代わりに会話をしてくれて、「『それ、君の猫なの?』って聞かれているのに、イエスじゃないでしょ」って。そんなことすらも聞き取れてないんです。これで英語ができている、だなんて言っちゃダメなんです。

――綾部さんは、自分にとても厳しいですよね。

 厳しい……そうですね、自分でもかなりストイックだと思います。だって、タバコを十何年間か吸っていたのに、やめようと思ったらその日でやめられましたから。やめようって思った瞬間から、自分に厳しく頑張れるんです。でも、これがまた矛盾しているところで、自分に厳しい人は英語だってできるようになるはずなんです。ただ、僕は勉強ということに関しては、その厳しさが全く反映されない……。こんなカッコつけて取材を受けてて、「こうなんですよ」とか語っちゃってるのに、まじで今日洗車で終わっちゃったんだから。明日も終わっちゃうよ、大谷翔平選手を観に行っちゃうんだから。ダメだよ、本当に。

――なんとも不思議ですね(笑)。

 ほんとに。僕の中に、「泥棒」と「警察」がいるんです。勉強をサボっちゃう、ダメなことをしちゃうっていう「泥棒」がいて、でもそれを取り締まる「警察」もちゃんといる。罪を犯しては捕まえて、犯しては捕まえて……って、ずっとやってるんです。

■著者プロフィール
綾部祐二(アヤベユウジ):
2000年デビュー、03年、又吉直樹とお笑いコンビ「ピース」を結成。10年にブレイクを果たし、一躍人気タレントに。人気絶頂の16年、アメリカに拠点を移すことを発表。9本あったレギュラー番組すべてを降板し、17年10月にニューヨークへ移住。
22年5月には渡米5周年を機にロサンゼルスへ移動し、YouTubeチャンネル『YUJI AYABE from AMERICA』を立ち上げるなど、夢の実現に向け精力的に活動している。