激動の働き方改革の時代を生き抜くために必要なのは、“個の力”。 自分の働き方を自分で決めるための一冊
公開日:2022/8/14
新卒採用でどこかの会社に入社し、そのままフルタイムの正社員として定年まで勤めあげる。そんな働き方が一昔前までは普通とされてきましたが、平成・令和と時代が進むにつれて働き方はどんどん多様化。その波はコロナ禍で一層強いものとなり、副業を認める会社も増えてきました。しかし、それは言い換えると終身雇用制度が崩壊しつつあるということ。もはや真面目に出社さえしていれば安泰とは言えない世の中になってきているとも言えます。
そこで必要となってくるのが、“会社ではなく個人の力、自分自身に「◯◯さんでお願いしたい」と声がかかること”だとするのが、本書『なぜか声がかかる人の習慣』(高橋浩一/日本経済新聞出版)。25歳で起業したものの事業が軌道に乗らず悩んでいた著者は、お客さんのある一言で自分の強みを認識。“自分が相手に伝えたい情報”と“相手の心が動くポイント”は必ずしも一致しないことに気づき、後者を重視した活動をして今に至ります。その経験から、自分の強みを認識し、仕事の自由度を上げていく方法を紹介するのが本書なのです。
この本で提唱する「声がかかる人になる」という試みは、起業したりフリーに転身したりする人だけに必要なことではありません。今の会社で定年まで勤めあげる予定の人でも、「声がかかる人」になることで会社におけるその人の重要度が高まり、労働環境や仕事の内容について会社と交渉できる立場になることができます。そうすれば、「やりたくない仕事ばかりで、本当にやりたい仕事やワークライフバランスが実現できていない」という状況を回避することができるのです。
そんなすべての働く人々にとってメリットのある「声がかかる人」になるためには、どんなことが必要なのか。本書では“声がかかる”の段階を「1 自分の身近な人から声がかかる」「2 知人の知人から声がかかる」「3 世の中から声がかかる」の3つのステージに分類。それぞれのステージから次のステージに上がるためにやるべきことを、例えば「1」だったら「身近な人にフィードバックをもらう、強みをアクションプランにする、実行した結果を人に共有する」など3つのステップに分けてわかりやすく紹介します。
とはいえ最初のステップの、「身近な人からフィードバックをもらう」という段階が既に、これまでそんなことをしてこなかった人間からするとかなりハードルが高いもの。そのため本書の後半ではフィードバックを得るための声のかけ方など、それぞれのステップを踏むための具体的な方法を紹介。さらに最終章では著者がよく相談される悩みについてケーススタディ形式で回答するコーナーも設けられ、最初の一歩を踏み出す勇気が持てること間違いなしの構成です。
自分はこれからどんな働き方がしたくて、そのためにまず何をすべきか。一息ついて自分の働き方を見つめなおせる夏休みに、ぴったりの一冊です。
文=原智香