「ジョジョ」と「地球の歩き方」がコラボした“奇妙な”地球の歩き方とは? 旅を語る荒木飛呂彦インタビューも収録!

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公開日:2022/8/26

地球の歩き方JOJOジョジョの奇妙な冒険
地球の歩き方JOJOジョジョの奇妙な冒険』(地球の歩き方編集室/学研プラス)©荒木飛呂彦 & LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

 35周年のアニバーサリーを迎えた「ジョジョ」と旅行ガイド「地球の歩き方」がコラボした『地球の歩き方JOJOジョジョの奇妙な冒険』(地球の歩き方編集室/学研プラス)が2022年7月に発売された。同年4月1日から予約が開始されると、この史上最高に“奇妙な地球の歩き方”はAmazonの全書籍総合ランキングで1位となった。

 アニメ化、実写ドラマ化もされた世界的な大ヒットコミック『ジョジョの奇妙な冒険』(荒木飛呂彦/集英社)は、“ジョジョ”というあだ名をもつ主人公と仲間たちが、世界各地で冒険を繰り広げる物語である。1987年から現在まで、時代と世界を股にかけて第8部まで描かれてきた。

地球の歩き方JOJOジョジョの奇妙な冒険 P7
©荒木飛呂彦 & LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

 本書は、この物語の舞台となった場所、杜王町のモデル・宮城県仙台市からヨーロッパ、アジア、アメリカ大陸までの各地を紹介。つまり書かれているのは、ワールドワイドな聖地巡礼旅のススメなのだ。さらに集英社の徹底協力のもと、ほぼ全ページにわたって「ジョジョ」本編からのセリフやコマの引用、そしてジョジョ愛に溢れたパロディを詰め込んでいる。その量はあなたの想像以上で、資料価値も高く、ファンは読むだけでも楽しめるはず。

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 本書が発売された時点では、コロナ禍は落ち着いておらず、気軽に旅行できない日々が続いている。旅行が趣味の方なら今は本書を読んで、きたるべき“奇妙な冒険の旅へ出る時”に備えておくのはいかがだろうか?

「ジョジョ」ファンとすべての旅人に捧ぐ! 史上最高に奇妙な「地球の歩き方」

 書き出しにはこう書いてある。

本書は『ジョジョの奇妙な冒険』の世界を旅するためのガイドブックです。

地球の歩き方JOJOジョジョの奇妙な冒険 P4-5
©荒木飛呂彦 & LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

 つまり本書を片手に「ジョジョ」を読んでも、本書を持って旅に出ても「ジョジョ」にどっぷりと浸ることができ、冒険を楽しみ尽くせるという寸法だ。エリアガイドでは、ストーリー内での旅の足跡と、コマとセリフの引用によって各地のスポットを解説。そして実在が確認できない作中の舞台の解釈と説明(モデルかもしれない場所も写真入りで紹介)、土地の歴史や名物、おすすめの場所などを書いたプチコラム、荒木氏の取材時の思い出コメントなども掲載している。

地球の歩き方JOJOジョジョの奇妙な冒険 P150
©荒木飛呂彦 & LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

 また「スターダストクルセイダース旅プラン」のページは、「ジョジョ」第3部の旅の期間である50日という制限でつくられており、旅のプロである「地球の歩き方」編集部の実力(とジョジョ愛)がいかんなく発揮されていると感じた。

 とにかくケタ違いの情報量。なのだが、本書の魅力はガイドブックとしてだけではない。この目次を見てもらいたい。

・本書の使い方
・ジェネラルインフォメーション
・ジョースター家の歴史
・杜王町のモデル仙台の歩き方
・インタビュー荒木飛呂彦 『ジョジョ』をめぐる冒険の旅
・ヨーロッパ(イギリス、イタリア)
・岸辺露伴と歩くルーヴル美術館
・アジア(香港、シンガポール、インド、パキスタン、アラブ首長国連邦、サウジアラビア)
・アフリカ(エジプト)
・スターダストクルセイダース旅プラン
・アメリカ大陸(アメリカ、メキシコ)
・『ジョジョ』に学ぶッ! 旅の準備と技術

地球の歩き方JOJOジョジョの奇妙な冒険 P8
©荒木飛呂彦 & LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

 本書は『ジョジョの奇妙な冒険』の作品紹介やキーワードといった基本的な情報ページ「ジェネラルインフォメーション」からスタート。そのうえで「ジョースター家の歴史」の項では、時代を股にかけて歩んできたジョジョたちの道のりを、年表にして解説している。

地球の歩き方JOJOジョジョの奇妙な冒険 P42
©荒木飛呂彦 & LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

 この他にも「旅」というテーマから作品を語る荒木氏のインタビューが9ページもあり、この内容も貴重だ。「旅の持ち物」と「旅で使えるジョジョ語」などの記事はファンなら大爆笑だし、第4部と第5部で登場した料理に触れるコラム「イタリア料理南北対決」は、ちゃんとためになる。また「地球の歩き方」編集長・宮田崇氏のコラムはジョジョ愛に溢れまくっており特にオススメしたい。読み物としても“ディ・モールト、ディ・モールト良い”のである。

おいしいものを食べて、散歩する。それが旅(荒木飛呂彦)

 本稿の筆者は「ジョジョ」の大ファンだ。子どもの頃は、週刊連載でリアルタイムに奇妙な冒険をワクワクしながら楽しんでいた。

 そんな私が本書を読み、本棚から久しぶりに「ジョジョ」の単行本を取り出して開きたくなった。前述の通り、セリフとコマがページにぎっしりで、思わず読み返したくなったからだ。何よりやはり「旅に出たい」という“黄金の精神”が生まれた。コロナ禍になる前からだが、私にはしばらく旅に出られるタイミングがなく、遠出をする気にもならないでいた。それが本書によって旅心(たびごころ)を刺激されてしまったのだ。

地球の歩き方JOJOジョジョの奇妙な冒険 P18
©荒木飛呂彦 & LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

 まずは仙台を聖地巡礼しよう。「定禅寺通」でアンジェロ岩を妄想したい。杜王港のモデルだろう仙台塩釜港で、友達を音石明に見立ててバトルごっこをしたい。そしてトラットリア トラサルディーの再現料理をつくったシェフ、彼が腕を振るう「リストランテ錦ケ丘」で満腹になりたい……。

 ずっと旅行に行っていない私のような人は「そもそも旅って何すればいいんだっけ?」などと迷うかもしれない。そんななか荒木氏のインタビューから、すごく大切な言葉が自分の腑に落ちたので紹介したい。

地球の歩き方JOJOジョジョの奇妙な冒険 P45
©荒木飛呂彦 & LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

僕は旅行って「散歩して、食べること」だと思うんですよ。だから歩いて地形を見たり、おいしいものを食べたりする以外のことはあんまりしないです。

 そうだった、これくらいシンプルでいいのだ。もう少しだけ世の中が落ち着いたら、行く場所だけ決めてそこを目指して冒険に出よう。付箋だらけの本書と最低限の荷物だけ持って。

 ただ奇妙な旅行になるかもしれないし、数奇な運命をたどることになるかもしれない。だが「ジョジョ」ファンならばこの言葉を思い出して進んでいってほしい。

「LUCK!」(幸運を)。「PLUCK!」(勇気をッ!)。

文=古林恭