ドラマもアニメも絶好調の“かのかり”宮島礼吏最新作は、男女7人“禁断の”同居ラブコメ『紫雲寺家の子供たち』
公開日:2022/8/23
「実は君達は本当のきょうだい ではない」家族がテーブルを囲む中で言われたのがこのセリフ。そこには10代の男女7人がいた。『紫雲寺家の子供たち』(宮島礼吏:作、雪野れいじ:作画協力/白泉社)で描かれるのは家族の情か、それとも禁断の愛か――。
著者は累計1000万部を突破し、2022年に実写ドラマとTVアニメ2期がダブルで製作・放送されている『彼女、お借りします』(講談社)の宮島礼吏氏だ。
少年少女たちの甘く、リアルな心情描写に定評がある宮島氏の最新作とあってファンならずとも期待せずにはいられない。
■きょうだい? 7人が一つ屋根の下!
一代で財を成した紫雲寺家の7人きょうだいは、全員がスポーツ・勉学・そしてルックスの良さを兼ね備えており、学校はもちろん、メディアでもその名が報じられるほどであった。物語は長男・新(あらた)を中心に描かれていく。
まず1話のラストで、父親にいきなり言われたのが、本稿の冒頭のセリフ。彼らは皆、紫雲寺家の養子で、7人のうち双子の2人以外は血が繋がっていないのだという。皆一様にぼうぜんとし、動揺を隠せないきょうだいたち。ただ最年長・長女の万里(ばんり)が「血の繋がりが無いと言われても、今さらきょうだいじゃないなんて思えない」と言い、その場はおさまる。
それでも、明らかになった事実によって既にくすぶっている、あるいは芽生えた“特別な感情”が、彼らの関係と運命を変えていく。
■個性豊かな美少女5人! あなたの推しは?
ここで個性的な魅力をもつ5人姉妹を含む、紫雲寺家の子供たちを紹介する。
【紫雲寺新(しうんじ あらた)】
主人公で紫雲寺家の長男で高校2年生の16歳。今まで一緒に暮らしてきたきょうだいたちと血の繋がりが無いと宣告され、姉と妹の間で気持ちが揺れ動くように。正義感が強く、きょうだい想いだ。
【万里(ばんり)】
名門大学に通う18歳の長女。スタイル抜群の美人で、性格は優しく穏やか。きょうだいの最年長で、特に新をかわいがっているが、血縁が無いという事実を聞いて新を意識するように……?
【清葉(せいは)】
17歳の高校3年生。高校でトップの成績を誇る才女。クールな性格で「合理姫」の異名をもつ。事実へ冷静に向き合いつつも、新が気になるようす。
【謳華(おうか)】
新と双子として育てられた16歳の高校2年生(実際には血縁は無い)。成績は優秀、陸上部と水泳部を兼任してどちらでもエースになっている文武両道少女。明るい性格で男女関係なく好かれるタイプだが、新には普段から当たりが強めで、お節介も焼いている。
【南(みなみ)】
高校1年生の15歳。能力は運動神経に全振りしており、中学テニスでは3連覇を達成した未来のオリンピックやプロも夢ではない天才少女。新になついており、マイペースで元気な性格だ。
【ことの】
末っ子にあたる中学3年生。小動物系のルックスと控えめな性格だが実は大胆な面も。事実が明らかになる前から、新に異性としての好意をもっており告白済みだった。現在は行動が抑えられなくなっており、新だけではなくきょうだい全員から心配されている。
【志苑(しおん)】
南と実の双子で美少年の高1男子。冷めた性格で彼女もち。南とは別の意味でマイペース。兄の立場にある新を常日頃からかっている。
文章だけでも5人姉妹の“キャラクターが立っている”のが分かるはずだ。読者の方は、ぜひ推しを決めてみてほしい。
■男女7人の感情の行方と考察が捗りそうな物語の展開に期待!
本作は単純に、血の繋がりが無い5姉妹と新との同居ハーレムラブコメ、ではない。全員が養子だった事実を知る前から、いくつもの伏線も張られている。
清葉は部屋で人知れず涙を流していた。南は活躍を期待されながら、ひそかに身体の不調を感じていた。また思い余って新に告白し、強い想いを抱いたままのことの。そして事実を子どもたちへ伝え「約束を果たした」と満足げな父親のもとを訪れる万里……。
そもそもこれだけの人数を養子にした理由は何なのだろう?
いっぽう新は、周囲のプレッシャーや視線を浴び、「これのどこがハーレムラブコメなんだ…」とモヤモヤしながら溜息をついていた。血縁が無いと知ってからも彼のスタンスは基本的には変わらない。今のところは。
本当のきょうだいじゃないなんて聞かされても
何が変わるわけでもねー…
女子高のロンリー男子ライフ継続中ってだけだろ
こんな新に対し、姉妹たち5人それぞれが特別な意識をするようになり、ちょっかいをかけ始める。1巻のラストは衝撃的なヒキになっているので心してほしい。
美少女5人の感情と、物語の多くの謎や伏線は、考察するのも楽しそうである。読めば続きが気になりすぎるはずだ。Twitterの投稿によれば、作画協力の雪野れいじ氏は1巻の続きにあたる8話9話を鋭意制作中。そして1巻巻末に掲載されている宮島礼吏氏のメッセージでは「終わりは決めており、全13巻で完結する」とのこと。
しっかりと練られ、ていねいに描かれている『紫雲寺家の子供たち』。まずはぜひ1巻をじっくりと楽しんでみてほしい。
文=古林恭