「聴く読書」をはじめたら、夫や子どもたちにも変化が! 「読むよりも聴きたい」オーディオブックを6年愛用する親子が語る、“聴く読書”の可能性
公開日:2022/10/8
書籍などの朗読を音声コンテンツとして聴くことができるオーディオブック。耳を傾けるだけで本を読破できるため、本を読む時間がない人でも聴ける、という良さがある。
以前はビジネスパーソンが通勤中などに聴くコンテンツとして注目されることが多かったが、現在はサブスクで聴き放題になるサービスもあり、ライフスタイルとして楽しむ人が増えているようだ。
広島県の山間で牧場を営みながら、3人の子どもを育てる福元奈津さんもそのひとり。もともと本好きで、子どもが生まれてからは読書をするタイミングを見つけられず、オーディオブックで「聴く読書」を楽しむようになったそう。家族で聴くようになってからは、夫や子どもたちにも変化が表れているとか。その楽しさやメリットについて聞いた。
(構成・文=吉田あき)
6年前に聴きはじめ、今は「聴き放題プラン」の会員に
――どんな人たちがオーディオブックを楽しんでいるのか気になるところですが、福元さんの場合はもともと読書がお好きだったそうですね。
福元奈津さん(以下、福元) はい、大好きです。子どもの時から本に囲まれていたし、人生のどの時期においても本屋、図書館へ足しげく通ってきました。
――それが、読む本ではなく、オーディオブックを聴くようになった理由とは。
福元 仕事や家事、子育てがあると、読書をするのが難しくて。オーディオブックなら、家事をしている時や移動中でも聴けますから。現在6歳の次女がまだ生後11カ月で、ますます目が離せなくなった2016年頃に、初めて購入しました。当時はスマホを持っておらず、デジタル音痴で、ネットでサービスを購入することに抵抗がありましたが、最初に買った本が500円程度の安価だったのと、300ポイントの値引きが使えたので、試してみようと。
――その時に買った本というと?
福元 アーサー・ビナードさんの『釣り上げては その1』(audiobook.jp)です。アーサーさんのお声は、小さなお話会などで間近で聴いたことがありましたが、パソコンからご本人の声がそのまま流れてきて、「贅沢!! これはオーディオブックならではだ!!」と興奮しました。読む読書でも同じ詩を読んだことがありましたが、聴いた時に感じる空気感は、それとは少し違っていたことを覚えています。
――読みたい本を見つけたことが最初の購入につながったのですね。文字での読書から、聴く読書への移行は大変ではありませんでしたか?
福元 大変さはまったく感じませんでした。ただ小説などは、文字で読む時に比べると、ナレーターの声や話し方によって色付けされることがあります。聴きはじめは違和感を覚えることもありますが、「想像ではもっと○○なんだよなぁ~」と折り合いをつけて聴くこともできますし、どこに違和感を覚えたのかを家族で話しあうことで、気づきがあったり、より深く本を味わえたりもします。
――今はaudiobook.jpで「聴き放題プラン」の会員になっているそうですね。
福元 2021年5月からなので、もう1年以上。会員登録をすると1冊もらえるキャンペーン(※現在はキャンペーン終了)があり、そのラインナップに、子どもの頃に好きだった『モモ』が入っていたこともあって。コロナ禍で図書館も利用できないし、「自分が好きだった本を娘たちに聴かせるチャンス。どうだろう? 楽しめるかな?」という気持ちでした。今は、スマホやタブレットを持っているので、好きな時に好きな場所で楽しんでいます。たくさん聴く月も、ほぼ聴かない月もありますが、私たち家族にとってはありがたいサービスです。
文字の読書とは別の楽しさがある
――小さな子どもでも集中して聴けるものでしょうか。
福元 長女や次女は、スーッと耳を澄ませて聴き入っていました。小さな頃から絵本や物語を読み聞かせていたし、聴くこと自体に違和感はなかったのかもしれません。まだ2歳10カ月だった三女は、わりとすぐに飽きてしまいました。姉たちが面白がっているから一緒に聴いてみるけれど、どちらかというと、絵本の読み聞かせや、別の遊びが好きなようです。
――お子さんには、どんな時に聴かせていますか?
福元 寝かしつける時や、車で移動する時が多いですね。子どもが朝起きたがらない時も、いいですよ。今朝も、6歳の次女が朝起きたくないとぐずったので、昔話の『屁っこき嫁様』を聴かせたら、しばらくして布団から出てきました。「おはよう。はい、着替えながら聴いてね~」と声をかけ、着替え終わって、しっかり目覚めたのを見届けてから、「おもしろいねぇ。続きはあとでまた聴こうね~」と途中で切り上げました。育てた豆の殻剝きなど、少し時間がかかる作業を一緒にする時に、娘たちから言われて聴くこともあります。
――読み聞かせとは違った効果や味わいがありそうです。
福元 本を読んであげるのは好きですが、時間を取れないこともあるし、自分以外の方の音読では新たな発見もあって面白いですよ。子どもたちの姿が目の片隅に入るくらいの場所で家事や仕事をしながら、親子で聴く時間が、ありがたい体験になっています。
――本来ならひとりでする読書を、親子で共有できるのはいいですね。
福元 はい。聴いた後のおしゃべりも楽しくて、『日本の昔ばなし』(audiobook.jp)では、セリフや言い回しを取り入れて会話したり、別の登場人物のセリフで返したり…そんな劇のようなものまねごっこを楽しみました。「どうしてあんなことをしたんだろう?」という問いに対して、考えを出しあうことや、子どもの「“蚕だな”って何?」みたいな質問で話が広がることも。本でも読後の感想などを話しますが、オーディオブックだと、最近は忙しくて本を読めていなかった夫も一緒に聴けるので、ストーリーを共有しやすいのも嬉しい点です。
――小学校4年生の一番上のお姉さんは文字の読書もお好きだとか。読書とオーディオブックの両方を楽しんでいるのでしょうか。
福元 文字の読書とオーディオブックは別物のようで、今でも本は毎日のように読んでいますし、ひとりでオーディオブックを楽しむこともあります。『女子高生と魔法のノート』(audiobook.jp)は、長女のリクエストで購入したもの。妹を保育所まで車で迎えに行く短い時間などを使って、細切れに聴いていました。最近は姉妹で楽しめる短い昔話や童話も多いですね。たとえば、『ホビットの冒険』(audiobook.jp)。長女いわく、「読むよりも聴きたい。話し手さんもいい」そうです。
ナレーションは本選びのポイントのひとつ
――すでに聴く読書の面白さをつかんでいるようですね(笑)。聴くとより魅力が伝わるような本のジャンル、というのはあると思いますか?
福元 昔話は向いているように思います。たとえば、『日本の昔ばなし』は語り口調ですが、ナレーターさんがいろんな登場人物になりきり、間(ま)や声の強弱で緩急をつけているのが、お芝居や落語のようで面白く、繰り返し聴いています。方言も味わい深かったです。名作アニメ『まんが日本昔ばなし』に近いイメージでしょうか。家族揃って聴くようになったきっかけは、長女が父親に勧めたからなんですよ。
――家族でおすすめしあえるのはいいですね。ナレーターさんの力量や、本の内容とマッチしているかどうかの相性も、オーディオブックを選ぶ上で重要なポイントだと仰っていました。
福元 はい。夫は『八日目の蝉』の後半に出てくる娘役、蓮佛美沙子さんのナレーションが印象に残ったそうです。表現力と聞き取りやすさが良かったと。長女が聴いていた『女子高生と魔法のノート』の朗読は大人数で、主人公役は声優さん。アニメっぽい声が新鮮でしたが、長女はむしろ、アニメに出てくるかわいい女の子みたい、と喜んでいました。少し違和感を覚えるナレーションもありますが、気になるのは最初だけで、十分に楽しめています。
――購入前のサンプル版が参考になりそうです。ほかにも、おすすめ作品を教えてもらえますか?
福元 私自身はもともと小説や物語が好きなのですが、オーディオブックでは、仕事のヒントがもらえるビジネス系や自己啓発本を読むことが多いです。『人生やらなくていいリスト』『日産 驚異の会議 改革の10年が生み落としたノウハウ』『考えないヒント―アイデアはこうして生まれる』『1分で大切なことを伝える技術』など。『聞く、ほぼ日。』も面白かったです。audiobook.jpの聴き放題から選ぶことが多いですね。
――久しぶりに読書に目覚めたという夫の紀生さんがハマった作品も、気になるところです。
福元 夫は、Audibleで「ハリー・ポッター」シリーズ、『はてしない物語』『山女日記』『火車』『坂の途中の家』『対岸の彼女』『バナナの魅力を100文字で伝えてください』などを。「登場人物はこんなふうに感じるのか」「理解できるなぁ」など新しい発見があり、自分自身から離れてリフレッシュできるそうです。作業中に聴くので、聞き取りやすさが第一優先だとか。今では、私が読んだことがない小説をおすすめしてくれることもあるんですよ。
――すごい変化ですね。娘さんたちのお気に入りというと?
福元 矢崎源九郎「子どもに聞かせる世界の民話」シリーズは、短編で無理なく楽しめるし、落ち着いた語りで聴きやすいようです。もうじき4歳になる三女も楽しんでいますね。
小4の長女と小1の次女が姉妹で聴いていたのは『ニルスのふしぎな旅』。以前アニメを観ていたので理解しやすいようです。『モモ』は、長いお話なので何回かにわけて。次女には難しいかな〜と思いましたが、本人は楽しそうでしたね。
『ホビットの冒険』は、長女は聴きたいのですが次女はお姫様が出てくる童話のほうが好みで…今、途中まででお預けになっています。『銀河鉄道の夜』『注文の多い料理店』『セロ弾きのゴーシュ』などの名作もおすすめです(以上、すべてaudiobook.jp)。
その時に気になる本を聴くことで、仕事のヒントにもなる
――オーディオブックを聴くようになって、良かったことは?
福元 私自身が聴きたくてはじめましたが、夫が聴くようになって驚きましたし、読み聞かせができない時の代わりになったり、子どもの切り替えスイッチになったりと子育てにも役立っています。家族経営の自営業を営む私たちにとっては、その時々で気になる本を聴くことで、仕事のヒントにつながるし、視野が広がり、頭や心が柔軟になっていることを実感しています。
――気になった時、すぐに聴けるのはオーディオブックのいいところで。子どもたちにとっても、読書習慣がつくなどの良い影響がありそうです。
福元 そうですね。たとえば昔話は、何度も繰り返し聴くことで愛着が湧くようなお話だと思うので、オーディオブックを通してその経験ができていると思いますし、たくさん本に触れることで、ますますお話好きになったような気がします。聴けば聴くほど語彙力も増えて、それが本を読む時にも役立っているようですし。長女の場合は、面白いことがあったんですよ。
――というと…?
福元 最近ハリー・ポッターシリーズを全巻読破したのですが、きっかけは父親なんです。もともと長女は本の虫で、知りたがり。父親が作業場で流しているのを細切れに何度も耳にしたり、私が家事をしながら聴いて声を出して笑ったりするのを見て、気になっていたようで。夫婦でその話をしている時、いくら質問しても、「自分で読んでごらん、おもしろいよ~」としか言われないから、仕方なく文字の本を読みはじめたようです。「お父さん、お母さんは誰が一番好き?」「それはどうして?」と質問をすることもあれば、場面の感想やその後の予想を夢中で話すこともあり、賑やかに楽しんでいました。
――オーディオブックをきっかけに、読む本の幅が増えるパターンもあるのですね。
福元 はい。オーディオブックは、詩、俳句、ことばあそびも向いていると思うので、未就学児を含め、子ども向けの良質な作品がもっと増えたら嬉しいです。工藤直子さんの『ともだちは緑のにおい』なんて、小さな子どもが音読を通して全身で味わうにはとても良い世界観なんだけどなぁと。そういった経験を親子で味わう楽しみも格別だと思います。
――これからオーディオブックをどのように活用していきたいですか?
福元 電子書籍は目が疲れやすいのと同じで、オーディオブックを聴くことで耳も疲労します。小さい子ほど、何となく疲れを感じたり、聴きたくないっ! という時もあるんだろうなと。だから、子どもたちには紙の本も積極的に勧めていますし、外で遊ぶ時間や、音のない中で集中して作業をするのも貴重な時間。時には、まったく聴かない時間があっても良いと思います。その場にいる全員の耳に届くので、それぞれがしたいことにも目配りしたいですし。家族の体調はもちろん、季節や生活のリズムも考えながら、「もうちょっと聴きたい」くらいで切り上げることを心がけながら、活用していきたいです。
■ audiobook.jp
会員数は250万人を突破、日本語オーディオブック書籍ラインナップ数で日本一のオーディオブック配信サービス。プロのナレーターや声優を起用し、独自で収録したこだわりの音声作品を提供する。定額の聴き放題(月額プランは950円/入会から2週間は無料)、またはチケットプランを選んで利用可能。
■ Amazonオーディブル
人気のナレーターが朗読した本を「聴ける」音声エンターテインメントサービス。2022年1月より定額聴き放題制に移行し、月額1500円で12万以上の対象作品を楽しめる。初めての人はAudibleまたはAmazonサイトからの登録で「30日間無料体験」も可能。