「キングオブコント2021」で優勝を果たした空気階段。ふたりのラジオ番組公式本『空気階段の踊り場』に詰まった、濃厚すぎる5年間
公開日:2022/9/15
遡ること15年前、筆者が受験勉強の合間に聴いていた深夜ラジオ。今はスマホアプリを使えば、全国のラジオ番組を好きな時間に視聴できますが、当時はガラケーのラジオ機能でFM放送を聴いていました。
放送が終わったラジオを後追いで聴く方法もなかったので、好きな番組は毎週同じ時間にリアルタイム視聴が必須。あの頃は、放送内容のみならず、その瞬間しか聴けないライブ感を楽しんでいたように思います。しかし、社会に出て仕事に追われるうちに、いつの間にかラジオから遠ざかっていました。
突然自分語りをしてしまい恐縮ですが、そんな筆者が今、毎週楽しみにしているラジオ番組が『空気階段の踊り場』(TBSラジオ)です。お笑い芸人・空気階段のふたりがパーソナリティを務め、「踊り場」の愛称で親しまれている同番組は、2017年にスタートしてから現在まで約5年間放送されています。
彼らのラジオがリスナーに愛されている理由は、人気若手芸人がパーソナリティを担当しているだけではありません。そもそも「踊り場」がはじまった2017年の空気階段の状況は、アルバイトをしたり、水川かたまりさんはご両親からの仕送りを受け取ったりして生計を立てる、いわゆる“売れない芸人”でした。「踊り場」は、そんな彼らが昨年のキングオブコントで優勝し、人気者になるまでの軌跡を追う、ドキュメンタリーとしての魅力があるのです。
たとえば、空気階段の私生活も赤裸々に語られています。5年前、放送で彼女いない歴=1万1077日のもぐらさんが恋をした女性・ともみちゃんとの馴れ初めや、ラジオを通しての愛の告白、結婚、出産……と、彼の人生の節目は、すべて「踊り場」のエピソードトーク内でリスナーに報告してくれます。一方、水川さんは、最近は同棲している彼女(通称:ミニーちゃん)とのエピソードをもぐらさんに曝露されるなど、気付けばリスナーにすべてをさらけ出してしまっています。また、生放送番組ではありませんが、放送中にふたりがガチ喧嘩をしたり、自分の家族に突然電話をかけてガチャ切りされたりと、収録とは思えないライブ感も魅力のひとつです。筆者が本稿の冒頭で触れた「一瞬も聴き逃せないライブ感を楽しむ」という、学生時代のラジオライフを「踊り場」が思い出させてくれました。
そして2022年8月、ついに番組公式本『TBSラジオ「空気階段の踊り場」公式本 2017-2021』(空気階段、TBSラジオ/扶桑社)が発売されました。同書には、これまで「踊り場」と空気階段がたどってきた、濃厚すぎる5年間がみっちり詰まっています。
「踊り場クロニクル」の項では、記念すべき第1回の放送から、彼らがキングオブコントで優勝した2021年10月の放送回までの、大まかな内容をすべて記録。そのほか、生まれてはすぐに消えていく番組コーナーを振り返る「歴代コーナープレイバック」、印象深いふたりのトークを書き起こした「トーク傑作選」……と、ファン垂涎の企画が多数収録されています。ちなみに、先述の「もぐら、初めて彼女ができた瞬間」は、トーク傑作選として掲載されているので、公式本を読めば、最近「踊り場」を聞きはじめたリスナーも、もぐらさんの告白大作戦の全貌を知ることができます。
キングオブコントで優勝し、押しも押されもせぬ人気者になった空気階段。そんなふたりの“これまで”を知るにはうってつけの一冊。「踊り場」リスナーはもちろん、「空気階段って一体何者?」と思っている人にもおすすめです。
文=とみたまゆり