相手がズレた話をはじめたときに、方向性を戻すには/悪魔の傾聴③

ビジネス

公開日:2022/10/15

『東京貧困女子。 彼女たちはなぜ躓いたのか』(東洋経済新報社)や、2度も劇場映画化された「名前のない女たち」シリーズ(宝島社)など、長年、AV女優や風俗、介護に関する社会問題を取材している、ノンフィクションライターの中村淳彦氏。3000人超を取材してきたインタビューのプロが、ついに明かす「悪魔の傾聴テクニック」が1冊に。『悪魔の傾聴 会話も人間関係も思いのままに操る』(飛鳥新社)の中から、本音を知りたい相手に使えるテクニックを、全5回でお届けします。

悪魔の傾聴
悪魔の傾聴』(中村淳彦/飛鳥新社)

相手がズレた話をはじめた場合

【NG】 話を遮るのは失礼なので、終わるまで聞き続ける

【OK】  間ができたときに、すかさず質問を入れて話を戻す

 コロナ前に、何人か生徒を集めて全5回の「ライター講座」をやりました。

 講座終盤に、誰かをインタビューして記事にする課題をだしました。

 意外にも生徒たちは、記事を書くことよりも、その前段階のインタビュー取材に大苦戦して、最低限の情報を聞くことができたのは2割程度でした。

 失敗した複数の生徒から質問されたのが、「相手が意図と違う話をしたら、どうするのか?」ということでした。

 傾聴しているとき、相手の話が聞き手の目的や意図からズレることは日常的に起こります。本音を引きだしたい悪魔の傾聴では、相手が話したいことを話すだけでなく、聞き手が聞きたいことを語ってもらう目的があります。

 遠慮することなく、相手が話しているときに質問して、話の方向性を戻しましょう。

 相手の話がズレるパターンは無数にありますが、よくあるのは相手が自分のことではなく、第三者のことや誰かから聞いた二次情報を延々と語ることです。

 相手の本音を聞きたいのに第三者の話をされても、まったくの無駄な情報なので、なんとかしなければなりません。

 

ズレた話を聞き続けたら、元に戻せなくなる

 無駄な話がはじまったと思ったら、できるだけ早く察して、相手の話を聞きながらタイミングを計りましょう。

 人の話は延々に語られるわけでなく、必ず一呼吸置く、「間」ができます。

 間ができたとき、すかさず質問を入れるのです。多少、強引でもかまいません。

「で、〇〇さんは、そのときどう思ったのでしょうか?」
「で、〇〇さんは、どのような行動をされたのでしょうか?」

 一段落ついたり、間ができた瞬間、こんな感じで簡潔な質問を入れます。

 相手はまったく違う話をしていても、こちらが「で、」と終止符を打つことでその話は終わります。「〇〇さんは、〇〇でしょうか?」と、相手の名前を入れて問いかけることで、相手も第三者のことを語ったことが本来の話題からズレていたことに気づきます。

「第三者のことではなく、あなた自身の話が聞きたい」という聞き手の意思に腹をたてる人はいません。

 質問されたことで、相手は話の方向性がズレていたことを自覚して、聞き手が欲している相手自身の話に戻してくれるでしょう。

 気をつけるのはタイミングを見ることと、ズレをなるべく早く矯正することです。

 必要ないと思いながら20分も30分も聞いてしまうと、もう元に戻せなくなります。なる早、が肝心です。

POINT 話がズレたら、タイミングを見てなる早で戻す

<第4回に続く>