財産が少なくても「相続」はトラブルだらけ! 国税OBだけが知っている失敗しない相続

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公開日:2022/9/29

国税OBだけが知っている失敗しない相続
国税OBだけが知っている失敗しない相続』(坂田拓也/文藝春秋)

 ほとんどの人に関係があるけれど、大半の人がいざそのときになってみないと考えない「相続」のこと。「うちは財産少ないから大丈夫」「兄弟姉妹、みんな仲がいいから大丈夫」と楽観している人も多いかもしれないが、実は「相続=争続」と言われるほどトラブルが起きやすいことをご存じだろうか。

国税OBだけが知っている失敗しない相続(文春新書)』(坂田拓也/文藝春秋)によれば、「相続が始まった途端、人は、自分でも思いがけないほど感情が吹き出し、相続人同士がぶつかる」ものなのだとか(実際、本の中にもトラブル実例がたくさん紹介されており、ちょっと不安になってくる…)。

 では、いざというときに困らないためにはどうしたらいいのだろうか? まずはトラブルの例を知って、心の準備をしておくのが得策だろう。本書は税を「取る側」「納める側」両方の事情に精通している国税庁OBの税理士たち(つまり相続のプロ)にトラブル実例や回避術を聞くというもの。本書を読んで知恵をつければ、いざそのときに「ん? これは少し注意しなければいけないポイントかも…」と危機回避できるかもしれない。ここでは本書を参考に相続税の基礎知識をいくつか紹介しよう。

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財産がないから申告なしでいいと思っていたら…

 相続においては「3000万円+法定相続人の数×600万円」を超えると相続税の課税対象となり、相続税の申告は故人が死亡した日の翌日から10か月以内に行うことが義務付けられている。「課税対象額より少ないから申告は不要」と判断しても、申告期限ギリギリになって故人のタンス預金が発見されたり、金の延べ棒が出てきたり、株が出てきたり…大慌てというケースはよくあるらしく、税理士事務所への駆け込みも少なくないという。本書によれば「できれば四十九日を終え、2、3か月過ぎた頃には申告の準備を」とのこと。自分で申告する場合でも、とにかく時間には余裕をもって対応するのが大事だ。

「1次相続」と「2次相続」を知らないと損することも!?

 多くの人に関係するポイントが「1次相続」と「2次相続」。最初に父親(または母親)がなくなったときを「1次相続」、次に母親(父親)がなくなったときが「2次相続」というが、この2回のタイミングでどう相続するかによって、通算の相続税の負担が大きく変わってしまうことがある。たとえば「配偶者控除」を利用して1次相続で妻がすべて相続して相続税をゼロにしても、2次相続で子どもの相続税の負担額が跳ね上がることも…。ちなみに税務署の多くはそうした節税策のアドバイスは一切してくれないし、納めすぎた税金も指摘してくれないとのことなので、自分でちゃんと把握しておくことが重要だ。

相続のスペシャリストはなかなかいない!?

 勉強して相続税を自分で申告することももちろんできるが、複雑な場合は税理士に頼むのもアリ。ただし相続税は複雑であり改定もよく起きるので、相続税に慣れていない税理士では「納め過ぎ」などのミスをしてしまうこともあるとのこと。なるべく相続税を熟知した税理士を探すようにしよう(ちなみに本書には本書の執筆に協力した国税OBの税理士たちの連絡先も出ている)。

 実際のトラブル実例はぜひ本書で確認してほしいが、そんなに突飛な例ばかりではないのに逆に驚くかもしれない。つまり相続トラブルは「誰にでも起こりうること」なのだ。あらかじめこうした本で「現実」を知ること、加えて親族と共有しておけたりすればさらに安心。未来のトラブル防止につながることもあるかもしれない。

文=荒井理恵