すべては「思い込み」から生まれる――「会話の沈黙が怖い」「部下に怒れない」などのお悩みをスッキリ解決! 専門医が明かす、不安との付き合い方
公開日:2022/10/16
日曜の『サザエさん』が始まるくらいの時間帯から、翌日の出勤を憂鬱に思う「サザエさん症候群」に悩まされたことがある人は多いはず。漠然とした不安感もこみ上げ、つい現実逃避をしたくなる。
けれど本書『不安ちゃんの正体』(自由国民社)を手に取ると、そうした不安感と上手く付き合えるようになるかもしれない。
著者の岩田千佳氏は、東京・神保町でクリニックを営む心身医学専門医。本書では漠然とした不安を「不安ちゃん」と呼び、様々なシチュエーションで現れる不安ちゃんの正体や対処法を解説している。
すべての不安は「思い込み」から生まれる
岩田氏によると、私たちが抱えている不安は「思い込み」から生まれているのだそう。人間はその人独自の経験に基づいた「脳のクセ」によって、五感で収集した情報を判断しているのだとか。
例えば、何かをする前から「失敗したらどうしよう」と不安を抱えるのも脳のクセによって「私にできるはずがない」と無自覚なまま自分にダメ出しをしているからなのだそう。
いわば私たちはVRゴーグルならぬ「思い込みゴーグル」をつけ、それぞれの脳のクセによって作りだした世界を現実だと思い込んで不安を募らせている状態なのだとか。
そして厄介なことに、一度思い込んでしまうと「思い込んでいる」ということに自分で気づけず不安が募っていってしまうそうだ。
そのため不安と上手く付き合うにはまず、「思い込みゴーグル」をつけていることに気づき、自分の置かれた状況を冷静に観察することが大切なのだと語る。
例を挙げると、職場で上司が怒っているように感じて不安になった時は「また脳のクセが出たな」と自分を客観視することが効果的。こうすれば不安が広がらずにマイナスのスパイラルが生まれるのを阻止できるのだとか。
自分が感じている不安は思い込みから生まれたものなのかもしれない……。そう考えることが不安を解消する第一歩になるのだ。
沈黙に気まずさを感じるのも「不安ちゃん」の仕業
不安は日常のふとした場面で襲ってくる。例えば、「会話が続かずに沈黙するのが怖い」という対人関係の不安は“あるある”だろう。別に黙っていてもいいのになんとなく気まずさを感じ、無理やり話題をひねり出して疲れてしまうことも多い。
こうした気まずさも実は「不安ちゃん」の仕業。「黙っていると陰気な人間だと思われそう」や「話しかけないと嫌っていると思われてしまうのでは」などの思い込みで、相手にどう思われるのかを心配し、不安ちゃんの海に飲み込まれている状態になっているのだそう。
また、「話しかけなければ」と思う一方で「こんな話をしたら変に思われるかも」や「私の話なんて聞きたくないだろう」という自信のない不安ちゃんが顔を出し、居心地を悪くしている可能性もあるのだとか。
そんな状況に悩まされている人に、著者はこんなメッセージを送る。
相手にこう思われていたら?という不安ちゃんがいるだけで、実際はあなたが黙ったままでも、相手はそれほど気にしないものなのです。
自分の感じ方次第で世界の見え方は変わる。本書との出会いを通して、そう気づくことができたら不安ちゃんに怯えない日常を送れそうだ。
不安から部下を怒るのが怖い時はどうしたらいい?
近ごろ増えているのが、部下を怒ることが怖い上司。年齢差が大きく世代間ギャップがあると、常識だと思っているものが違いすぎて溝が生まれてしまったり、自分の言動に部下がどう反応するか予測できず不安を抱いたりすることもある。
「もし、自分が怒ったことで部下が会社に来なくなったら降格になるかもしれない」などという不安から、部下との接し方に悩んでいる方は意外と多いのではないだろうか。
こうした不安を解消するにはまず、世代間ギャップなど関係なく、そもそも人それぞれ見ている世界が違っているので、理解し合うことが難しいことに気づこう、と著者は言う。
その上で、部下の気持ちに配慮しながら言動の背景や根拠を丁寧に質問。すると、相手に対してあった「思い込み」による誤解が解けるので、その後、自分の想いや考えを伝えようとアドバイスする。
この対処法は、上司と部下との接し方に悩みがちな中間管理職の人にとって心強い味方となってくれそうだ。
なお、本書には「恋人のスマホを見たくなる」という恋愛中ならではの不安との向き合い方や、多くの方が抱えているお金に関する不安の解消法も詳しく解説。構えなくても気軽に読めるので、心がモヤっとした時のために手元に置いてみてはいかがだろうか。
文=古川諭香