悩んで悔やんで、それでも人は前に向かって歩いていく『恋のはじまり』/斉藤朱夏のしゅか漫画⑩
公開日:2022/10/15
恋のはじまり。それは一体どこからなのだろうか。
友達・憧れ・クラスの人気者…この中でも好きの種類は様々だ。
likeがloveに変わる瞬間を気にもしてなかったけど、
気にならないぐらい一瞬なのかもしれないと感じた。
今回紹介するのは、蒼井まもる先生の「恋のはじまり」(講談社)。
こちらも表紙の絵とタイトルに一目惚れした一冊。
高校生になれば彼氏ができると思っている、蜂谷ななみ。
だが現実はそう甘くはないと思い知らされ、恋に対して諦めモードになる。
そこでサッカー部のイケメン水野くんと出会う。
恋愛初心者の青春ラブストーリーが始まる。
個人的に「蜂谷」という苗字からの
「はっち」という愛称の響きに愛着が湧いた。
その可愛さに読者である自分も思わず「はっち」と呼びたくなっちゃう。
恋愛初心者のふたりがまた初々しくてたまらない。
初めてだからこそかっこつけてみたり、背伸びしてみたり…
その背伸びが、ある意味子どもから大人への入り口になるのかなと想像したりする。
恋愛にはルールがないから正解がわからない。
誰かが「こうなったら恋のはじまりだよ」とか教えてくれたらいっそ楽だけど、
こんなルールが生まれたら窮屈に感じてしまうだろう。
なんだか矛盾だ。
友達ではなく恋人として、その人の一番になれたらいいけど
友達から一歩踏み出すのは、細い道を落ちないように歩いている感覚だ。
それならいっそ友達のまま隣に居るほうがいいんじゃないのかな、なんて思う。
友達よりも近い距離にいるはっちは一番楽しいけど一番辛い立ち位置に見える。
自分にとっての幸せを考えるのは難しいし、
安全な道を歩きたくても、恋する気持ちがそうさせてくれない。
はっちの人を真っ直ぐに想う気持ちが青春そのもので、
いいなぁ 高校生!突っ走れ若者よ!と大声をあげたくなっちゃう。
走り続ければ見えることもたくさんあるよね。
連絡を取り合うふたりのシーンは
コミュニケーションの難しさを丁寧に描いている。
はっちはいつものように連絡したつもりが文字だけだと伝わりにくくて誤解されてしまったり、いざ顔を合わせてみてもうまく言葉が伝わらなかったり、
ギクシャクしている時のコミュニケーションほど難しいものはないと
ふたりに激しく同意をしてしまった。
お互いに深く考えすぎて、思考がなぜかいつもよりマイナスなほうへ向かう。
でも、こうして人はきっと悩んで悔やんで前を向いて歩くんだと思う。
学生生活の甘酸っぱい瞬間を思い出したい方や
いま学生のあなたに読んでほしい一冊です。