発行部数20万部超のロングセラーに学ぶ。悩みから解放されるためには「反応しない」ことが大切
公開日:2022/10/20
人生の悩みは尽きない。人間関係にくたびれて、誰の期待にも応えられず、将来への不安ばかりが頭を巡る……。そんな日々を過ごしていると、次第に自分は“何で生きているのだろう”と思い詰めることがあるだろう。悩みから抜け出すための術はあるのか。そう考える中で手に取ったのが2015年7月刊行で20万部超のロングセラーとなった書籍『反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」』(草薙龍瞬/KADOKAWA)だった。
本書は、僧侶である草薙龍瞬氏がブッダの教えにならい、悩みから解き放たれる術を伝えてくれる1冊だ。ブッダの言葉から連想されるとおり、本書の核には「仏教」の教えがある。そう聞くと、宗教やスピリチュアルといった言葉がイメージされて、いかがわしく思う人もいるかもしれない。しかし、ブッダの考え方は現実で使えるほどに合理的だ。
悩みを「ある」と理解して「反応」しないのが出発点
悩みの正体とは何か。本書は、すべての原因は「心の反応」にあると説く。そして、ブッダの教えとは「心のムダな反応を止めることで、いっさいの悩み・苦しみを抜ける方法」であり、その考え方を意識すれば「どんな悩みも確実に解決できる」ようになるという。
解決のためには、順を追って自分の心を理解する必要がある。まずは、悩みに対して「『ある』ものは『ある』」と理解してみる。そもそも、私たちが悩み、苦しむのは「漠然と悩んでいる状態」が続いているからだ。しかし、「満たされなさがある」「悩みがある」と現象そのものを理解すれば「どうすれば解決できるか」と、一歩進んで考えられるようになる。
悩みを受け入れてあきらめるのではなく「ある」と認める。すると、悩みの正体が見えてくる。ブッダは「苦しみの原因は“執着”にある」と説いた。執着とは、人の「怒り」「後悔」「欲望」といったすべての感情だ。こうした感情が込み上げてくるのは「心の反応」があるから。そして、悩みに振り回されないためには「ムダな反応をしない」という姿勢が必要になる。
苦しみの原因になりうる「判断」は人の「妄想」に過ぎない
本書にあるマインドセットは、日常生活で内に秘めておきたくなるものばかりだ。例えば、「第2章 良し悪しを『判断』しない」では、悩みの理由に「判断しすぎる心」があると説く。
目の前の出来事に対して「失敗した」「最悪」「ついてない」と感じ、落ち込むときは誰にでもあるはずだ。しかし、これらの判断は悩みを作り出す原因になる。本書では、自分がかつて大学へ行けなかった後悔から「自分には価値がない」と判断した挙句、せめて自分の娘は大学へ通わせようとスパルタ教育を施し、娘をリストカットまで追い込んだ母親の事例が取り上げられているが、問題の大小は人それぞれで、自身の勝手な判断で追い詰められるケースは容易に想像が付く。
判断は「決めつけ、思い込み、一方的な期待・要求」といった「執着」の一種で、本来は「アタマの中に存在しなかったはず」の「妄想」にしか過ぎない。それこそが判断の「真実」だと、本書は説く。では、妄想が生み出すムダな判断からどう抜け出せるのか。
方法として、まずは、単純に「あ、判断した」と判断の時点で気が付くのが必要で、心の中で「まぁ、判断に過ぎないけどね」と一言つぶやいてみるのもいい。そして、苦しみの原因になる余計な判断は「他人」との比較や、評価に由来することもあるため「人は人、自分は自分」と線引きするのも重要。その上で、気楽に生きるためには、自分を否定せず「素直になる」のも大切だと、仏教は教えてくれる。
筆者がそもそも本書を手に取ったのは、身近な場所での人間関係に悩んだのが理由だった。この本を読んでから、自分がどこか“強メンタル”を手に入れたかのような感覚もあった。得体の知れない悩みに苦しんでいる人たちはたくさんいるはず。そんな人たちに、きっと本書は寄り添ってくれるだろう。
文=カネコシュウヘイ