呑まない、酔わない、自分を見失わない。おかげで何も始まらない――40代のうちに足掻いておけば…!?/大久保佳代子『まるごとバナナが、食べきれない』②
公開日:2022/10/27
大久保佳代子著の書籍『まるごとバナナが、食べきれない』から厳選して全6回連載でお届けします。 今回は第2回です。家族、恋愛、友情、仕事、そして…ひとりで生きること。数々のバラエティ番組で大人気活躍中の大久保佳代子さんが、「変化と分岐の40代」を食の思い出を通してユーモラスに描きます。“妙齢の女性”たちに元気を与え、「わかる!」「あるある!」と共感を集める等身大の人気エッセイをお楽しみください。乗り越えられない壁や老いにぶつかる40代。大久保さんにもたくさんの変化が!?
四十路の恋と後悔と
女が変化し分岐点を迎える、私の40代が詰まった連載
Marisol 2021年10月号
エッセイの連載がスタートしたのは私が42歳の頃。50歳までの約8年間、40代を共に歩んだ存在でもありました。
ガムシャラに突き進む時期を経て、勢いだけでは乗り越えられない壁や老いにもぶち当たる40代は、女性が大きく変わる世代。振り返ると、私自身にも沢山の変化がありました。
他人の結婚式の披露宴では常に泥酔。駅のホームで一人、引き出物の巨大な鯛の形のアップルパイにかじり付いた夜も。
元気な頃は、酒量も多ければ酔い方も酷くてねぇ。そんな酒の力を借りて男にジワジワとアプローチするのが当時の私の恋愛攻略法だったのに、今ではすっかりお酒も弱くなっちゃって。
呑まない、酔わない、自分を見失わない。おかげで何も始まらない。気付けば、恋愛から遠のくばかりの日々。
40代、男性の好みもだいぶ変わりました。「麻薬のような危険な男が好き」と言っていた私はどこへやら。今の私が求めるのはとにかく健康な男。もうね、体力は衰えるばかりだし、関節も痛いし、自分のことで精一杯。
危険な男に振り回される余裕なんて、大人の女にはありませんからね。
私にとって、40代は人生の分岐点でもあったと思います。
というのも、私の最後の恋愛は40代前半で。たまに思うんですよ。あそこで一発逆転を決めていれば、結婚していたかもしれないし、子どももいたかもしれないなって。
40代はまだそんなラストチャンスが残されているんですよね。でも、私はそのチャンスを掴もうとしなかった。仕事も楽しかったし、変なプライドもあったしね。
それを50歳になった私は少し後悔している。「あそこでもう少し足掻けばよかったな」と……。
全ては自分が選んだこと。一人で生きている今の自分は「しょうがないよね」と受け入れています。
そんな私を〝独身の星〟と言ってくれる人もいる。確かに、一人は気楽で楽しいこともある。しかし、私は言いたい、ここで言いたい。一人はしんどくて辛いこともあるんだよと。
仕事が早く終わった日、その後に訪れる長い夜が怖くて。一人でモスバーガーに寄り、オニポテをつまみつつ「今日も若いマネージャーに強くあたってしまったな」と反省しながら時間を潰すこともあるし。休みの日も暇を持て余して、さほど興味のない「恋愛リアリティーショー」なるものを〝無〟の感情で長時間観続けたり……。
辛いでしょ、しんどいでしょ、怖いでしょ~‼
年齢を重ねるたびに、足掻く気力も体力もどんどん減っていくのが現実。また、性欲も徐々に減少傾向に。性的衝動に突き動かされ恋愛をしてきた私としては「どこから恋愛を始めたらいいのか」わからなくなっているのもリアルな本音。
50歳になっても、訪れる変化に戸惑うこともありますが、私がひとつ心がけているのが「ここで終わりだ」とは思わないようにすること。
ラストチャンスは逃したかもしれないけれど、一人で生きていくと決めたわけでもない。この先、カタチの違う幸せに出会うことだってあるかもしれない。
諦めたらそこで試合終了。『スラムダンク』にもそんな台詞があるじゃないですか。って、一度も読んだことないんだけどね(笑)。
<第3回に続く>