ビールは「炭酸水」、マッコリは「乳酸菌」!?  大人女子の韓国旅は、まさかのラスボス参加で泥酔地獄/大久保佳代子『まるごとバナナが、食べきれない』③

文芸・カルチャー

公開日:2022/10/28

大久保佳代子著の書籍『まるごとバナナが、食べきれない』から厳選して全6回連載でお届けします。 今回は第3回です。家族、恋愛、友情、仕事、そして…ひとりで生きること。数々のバラエティ番組で大人気活躍中の大久保佳代子さんが、「変化と分岐の40代」を食の思い出を通してユーモラスに描きます。“妙齢の女性”たちに元気を与え、「わかる!」「あるある!」と共感を集める等身大の人気エッセイをお楽しみください。毎年恒例のお正月旅行。新メンバーに独女タレントのラスボス・島崎和歌子さんが参加!

まるごとバナナが、食べきれない
『まるごとバナナが、食べきれない』(大久保佳代子/集英社)

和歌子姉さんと韓国で食べた深夜のグラタン

まさかのラスボス参加。二泊三日の地獄の韓国旅行

Marisol 2016年5月号

 正月、飲み友・いとうあさこさんと旅に出る。もはやコレは毎年の恒例行事になっていますが。今年も行ってきましたよ、二泊三日の韓国旅行に。

 行き先を韓国に決めた理由は三つ。①休みが合わず長期旅行が難しかったから。②森三中の黒沢さんが韓国に滞在していたから。③韓国を訪れた坂上忍さんの『アナザースカイ』を見たから。

 私を主に惹きつけたのは③。街の韓国料理屋に次々と入っては、食べて飲んでを繰り返し、「うめ~‼」と叫んで泥酔する……坂上忍さんの姿を見たときに「私もアレがやりたい‼」とうっかり思ってしまったんですよね。

 今年は新メンバーとして独女タレントのラスボス・島崎和歌子さんが参加。

 大御所を連れての韓国旅行となったわけですが、これがもう、一言でいうと地獄のような日々でして。

 

 何が辛かったって、まずは酒の量ですよ。

 寒い時期だったので「温かい鍋が食べたいね」と。

 一日目はプデチゲを食べに行くところからスタートしたんですけど。このプデチゲが韓国の軽めのビールとよく合ってしまってねぇ。

 和歌子さんはそのビールを〝炭酸水〟と呼び「韓国は乾燥しているから水分補給が必要だ」ってわけのわからないコトを言いながらガブガブ飲んじゃって。

 さらにはマッコリを〝乳酸菌〟と呼び「体に良いから、コレはアルコールじゃない」という勝手な認識でまたガブガブ飲んじゃって。一軒目から信じられない量の空き瓶がテーブルに並ぶことになったっていう。

 

 この時点でかなり酔っていたものの、妙齢女子の宴はまだまだ終わらない。

 二軒目は黒沢さんが「どうしても行きたい」というホルモン焼き屋へ。コレがまた美味しくってねぇ。韓国の魔法の味噌ダレがマッコリに合ってしまうわけですよ。

 とはいえ、さすがに私も限界。「ぼちぼちホテルに戻ろう」という流れになったハズなのに……立ち寄ったスーパーから出たら、目の前の店で和歌子さんがビール片手にグラタンを食べていたっていうね。

 

 そして、ここから始まってしまったわけですよ。「え~もう帰るの?」を連呼する〝魔の和歌子タイム〟が。

 これが東京なら「明日早いんで」とタクシーに飛び乗り逃げ切れるけど、ここは韓国。さらに敵は私達が明日もオフだと知っている‼

 そこからはもう記憶が曖昧なのですが……気遣い屋のあさこさんが初めて見せた「マジか⁉」と本気でイヤがる顔、そして、和歌子さんが両手に抱えたペットボトルの水をホテルの廊下で落とした隙に自分の部屋に逃げ帰ったこと、それだけはうっすら記憶に残っているっていう。この状況が二日目も続きましたからね。

 

 ある意味「坂上忍さんのように韓国で泥酔したい」という願いは叶った。

 美味しいお酒を沢山飲んだ、美味しい物も沢山食べた、ハズなのに……。最終日、二日酔いの和歌子さんをホテルに残し、黒沢さんとあさこさんと食べたタッカンマリが一番美味しかったのはなぜでしょう?

 

 酒飲みと一緒の旅は楽しい、だがしかし、自分よりも酒が強い酒豪との旅は辛い。それが今回の旅で学んだこと。

 帰りの空港では、和歌子さんの「え~もう帰るの?」が飛び出す前に逃げるように解散。蜘蛛の子を散らす勢いで終了した妙齢女子旅。

 次回はどこに行きたいか? う~ん、しばらくは遠慮しておこうかな。

韓国で〝魔の和歌子スイッチ〟を押してしまった深夜二時のグラタン。その後はホテルの前の日本居酒屋へ……。二泊三日でマッコリを軽く五十本は飲んだであろう今回の旅。次の旅行は同じペースで飲める人と行きたいですね♡

<第4回に続く>

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