“OL兼芸人”だった私を育ててくれた「めちゃイケ」。語りつくせない思い出と感謝/大久保佳代子『まるごとバナナが、食べきれない』⑤
公開日:2022/10/30
大久保佳代子著の書籍『まるごとバナナが、食べきれない』から厳選して全6回連載でお届けします。 今回は第5回です。家族、恋愛、友情、仕事、そして…ひとりで生きること。数々のバラエティ番組で大人気活躍中の大久保佳代子さんが、「変化と分岐の40代」を食の思い出を通してユーモラスに描きます。“妙齢の女性”たちに元気を与え、「わかる!」「あるある!」と共感を集める等身大の人気エッセイをお楽しみください。約20年続いてきた人気バラエティ番組「めちゃ×2イケてるッ!」がついに終了して――。
語りつくせぬ思い出が詰まった『めちゃイケ』めし
台湾で食べた海鮮粥。あれは〝忘れられない味〟
Marisol 2018年5月号
約20年にわたり続いてきた『めちゃ×2イケてるッ!』が、ついに終了。
「いつか終わる」のはわかっていたけど、どこかで「終わるはずがない」と思っていた……。それだけに、岡村さんから終わりを告げられた瞬間は「えっ‼」という心からの驚きと「とうとう来たか」の狭間で「ん~っ」という唸り声しか出なかったっていうね。
その実感が湧いてきたのは最近。皆さんがこの原稿を読む頃には終了しているんですけど、今はまだ収録中。「あと何回」「あと何回」と指折り数えてはジワジワと「本当に終わるんだな」を感じる毎日なんですよ。
私にとって『めちゃイケ』はテレビに出るきっかけを与えてくれて、一流の出演者やスタッフの中で〝OL兼芸人〟だった私を育ててくれた、大切な番組。
また「何をするにも本気が面白い」と、お金と労力を惜しまずに思い切り注いでくれるのが『めちゃイケ』でね。
今でも忘れられないコントキャラがマッサージ師のホァンさん。なんてことない、台湾人に扮した私がパンツを見せながら、その日ターゲットの男性ゲストをマッサージするっていうセクハラ三昧のコーナーなんですけど。
それもまた「メンバーの前に現れた私が、北京語ペラペラだったら面白い」という理由だけで語学学校の『ベルリッツ』へ。基礎から北京語を習い、さらには、プロからマッサージのトレーニングまで受けたっていう(笑)。
そんなホァンさんの初ロケで訪れた台湾もまた、忘れられない。というのも、初の大掛かりなロケへの緊張に加え、成田空港ではなく羽田空港出発という心の油断が重なり……パスポートを忘れるというまさかの失態から全てがスタート。
一日遅れで台湾に到着し、ギリギリ収録はできたものの、その日の夜はクタクタで。そんな私にスタッフが用意してくれたのは高級ホテル、さらには「お部屋に夕食のルームサービスが届きますから」という夢のような言葉までかけてくれてね。
なのに届いたのは、まさかの海鮮粥ひとつ(笑)。でも、それが本当に美味しくって。
遅刻してしまった申し訳ない気持ち、慣れない芸能人待遇への戸惑いと嬉しさ、初めて感じた達成感、いろんな思いが入り混じる中、台湾の夜景を見ながら食べたそれは、今でも忘れられない味として私の中に残っているんですよ。
番組に参加したばかりの頃は、ナインティナインの二人の側にいるだけで緊張した。
それでいて、ロケ先の北海道から「翌朝までに東京に戻らなきゃいけない」ナイナイのために呼んだ六人乗りのセスナ機に、まさかの私が「明日、会社があるので」とちゃっかり着席していたり。今振り返ると「恐ろしい」の一言に尽きる思い出も(笑)。
語り尽くせぬ思い出が『めちゃイケ』には詰まっています。
最終回は誰とどんな気持ちで見るのかな。一人はイヤだな。きっと泣いてしまうと思うから。たんぽぽの川村エミコちゃんでも呼んで盛り上がろうかな。
思い出に浸るのは、きっとそのあと。それを終えたら私はスタッフに連絡するんだろうな。感謝の気持ちを改めて伝える……のではなく「合コンどうなっていますか?」と。ほら、番組が終わったらフジテレビとのパイプがなくなっちゃうから。社員さんと出会う機会もグンと減るから。
光浦さんも私も『めちゃイケ』のせいで婚期逃した感は否めないですからねぇ。そこは責任取ってよと。
番組が終わる前に合コンの約束だけは取り付けておこうと思ってます。
「番組に参加したばかりの頃は「お弁当下さい」の一言すら言えなくて。何も食べずに収録を終えたことも。緊張の日々と見えない未来、そこで得た初めての達成感。あの時、台湾で食べた海鮮粥の味は、きっと一生忘れないだろうな。