人生の9割は「親との関係」で決まる!? 親のささいな言動が小さなトゲとなって子どもの心の奥に残り続ける/親子の法則
公開日:2022/10/29
親の言動が「心のトゲ」に変わる理由
子どもにとって、親が発した言葉は絶大な影響力を持ちます。たとえ親に悪意がなくても、子どもは「自分を否定された」と感じることがしばしば起こります。
たとえば、「あなたはいつもやることが遅い」「何をやらせてもドジ」というたぐいの、親にとってはまったく他意のない言葉だったとしても、子どもは親の言葉をまともに受け取り、「自分はそんな人間なんだ」と思い込むようになっていきます。
きょうだいのいる人であれば、親がきょうだいばかり褒める(気がする)、というケースもよくあることです。
きょうだいは子どもにとって親の愛を奪い合うライバルなので、たとえ自分がけなされていなかったとしても、「親は自分よりもきょうだいのほうが好きなのかもしれない」「自分は愛されていないのではないか」と思いがちなのです。
そもそも親は、子どもを自分がこの世に生み出したという事実があるので、「子どもに対して遠慮なく、何を言ってもかまわない」と無意識のうちに思ってしまいがちなのでしょう。もっとも子どもの側にも甘えがあり、「親はなんでもゆるしてくれる」と思っているところもあるので、どっちもどっちだったりするのですが。
心理学では、幼少期の経験が「人生脚本」となり、大人になってからもその人の考え方や行動パターンに影響するといわれています。
私の知人である50代女性・美香子さん(以降、本書の登場人物はすべて仮名)は、母親に「あなたは私の子どもにしては出来が悪い」と言われて育ったそうです。
母親自身は子どものころに成績がよく、足もクラスで一番速かったといいます。戦後のどさくさの時期に思春期を送った母親の口癖は、「ちゃんとした時代だったら私はもっと勉強して、医師か弁護士になりたかった」というものでした。
成績がオール5だったという母親に対し、美香子さんはオール3。運動神経もよくなく、足が遅いこともコンプレックスでした。
もともと気弱で、自分をアピールしたり、意見をはっきり言ったりすることが苦手な美香子さんは、母親の言うとおり「自分はとりえがなくダメな人間なんだろう」と思うようになっていきました。
「よくできた自分」と「できない娘」を比べてなにかと娘をこき下ろし続け、優越感を誇示するのが好きだった母は、やがて妙な行動に出始めます。
美香子さんが高校受験を控え、夜遅くまで勉強していると、「何もそんなに頑張ることないのに」とお酒とスルメを持って美香子さんの部屋に入ってくるようになったのです。「無理していい高校に行くことなんかないわよ。ほどほどのところにしておきなさい」と口にするようになりました。
美香子さんは母親の言葉を真に受け、地域でもっともレベルの低い普通科の高校に進学。周囲の生徒が享楽的で、知的な刺激がないことに愕然とします。
「こんなところで終わるわけにはいかない」と大学受験のときに本気を出して勉強すると、半年間で偏差値が15上がり、第一志望の大学に合格できました。
そのとき初めて「自分は小学校のころに授業をまともに聞いていなかったから成績がよくなかっただけで、地頭はよかったんだ」と気づいたのだとか。
そして、「あなたはできない」と母親が言い続けたのは、平和な時代に生まれ育った美香子さんに対する嫉妬であり、「娘に自分を超されたくない」「自分のほうが上だと思い知らせたい」という気持ちによるものだったのでは、と思うようになりました。