働く人のリアルなお弁当生活が真似したくなる! “佃煮のタッパーにパスタを詰める”“お弁当箱は便利な景品”…元気になれるお弁当本
更新日:2022/11/4
好きなおかずを詰めることができて、外食に比べて経済的で体にも良さそうなお弁当。メリットが多いのはわかっているけれど、なかなかお弁当作りが続かないという人もいるだろう。本書『私たちのお弁当』(クウネルお弁当隊/マガジンハウス)は、そんな人にお弁当の良さを改めて伝えるとともに、お弁当を作る元気をくれる1冊だ。
雑誌『クウネル』での、さまざまな仕事に就く人のお弁当を紹介する連載を単行本化した、2005年刊行の1冊。中にはケータリングを仕事にする人もいるが、登場する人のほとんどは会社員や主婦、デザイナーなど、生活の中で普通に料理をする人々だ。彼らの共通点は、お弁当が日常の一部と化していること。お弁当作りの目的は、誰に見せるでもなく、シンプルに「自分や家族がランチや夕飯に食べる食事を作る」こと。そのため本書には、レシピ本やSNSに登場するお弁当のような華やかさはないが、生活に馴染み、それでいておいしそうな温かいお弁当の数々が並んでいる。
お弁当の写真とおかずの解説に加えて、彼らの仕事や生活スタイル、日頃何を大切にしてお弁当を作っているのかというストーリーも紹介。忙しい仕事の合間にさっと食べられるもの、体にいいもの、力仕事のためのボリューム重視のものなど、みんなのこだわりがわかって面白い。豪快な男性のお弁当や、中国出身の料理上手が作る中華を取り入れたお弁当など、各人の個性がお弁当に表れているのも楽しい。
また、お弁当作りにそれほど時間をかけないという人が多く、彼らが紹介する限られた時間でおいしいお弁当を作るコツは参考になる。作り置きを詰める、定番のオリジナル調味料を使う、野菜とメインをグリルやフライパンでいっぺんに焼くなど、「これなら自分にもできそう」と思えるノウハウが満載だ。実際に筆者自身もこの本から、レンジでできるピーマンとパプリカのスフレ風や、おかずの詰め方などを学び、自分のお弁当に取り入れた。
お弁当が日常化している人たちならではのエピソードも興味深い。使い勝手が良いためにミスタードーナツの景品のお弁当箱をずっと使っていたり、佃煮のタッパーにパスタを詰めていたり、「隣同士のおかずが混ざった味が好きだから、仕切りは使わない」という人も。手作りのお弁当が好きな人なら、そのリアルなこだわりや、「結局そこに落ち着いた」ポイントに、思わず共感してしまうのではないだろうか。
いわゆる「映え」を意識したお弁当やレシピ本の真似が苦手な人も、本書を読めばお弁当の良さをしみじみ実感できるはずだ。食べたいものやその日の体調、気分によって、好きなように楽しめる手作りのお弁当。お弁当作りがちょっとしんどくなったときも、「そうそう、お弁当ってこうだったよね」と、お弁当の原点に帰れるバイブル的な1冊だ。
文=川辺美希