性格正反対の高校生男女が授業の一環で疑似夫婦に!? 2022年秋アニメ放送中の同居ラブコメ漫画『夫婦以上、恋人未満。』

マンガ

公開日:2022/10/28

夫婦以上、恋人未満。
夫婦以上、恋人未満。』(金丸祐基/KADOKAWA)

 高校生がいきなり夫婦に? 2022年10月にテレビアニメも放送している話題のラブコメ漫画が『夫婦以上、恋人未満。』(金丸祐基/KADOKAWA)である。

 さえない男子高校生・薬院次郎(やくいんじろう)が通う学校には、男女が一組になって共同生活をする「夫婦実習」という授業があった。彼とペアになったのは、クラスカースト上位の陽キャ美少女・渡辺星(わたなべあかり)だった……。

 本作のキーワードは “同居”である。男女が一つ屋根の下で暮らす「同居もの」はラブコメの王道の一つ。陰キャな次郎は星に圧倒されながら共同生活を送るのだ。同居の日々はドキドキの連続。そこで積み上げ、変化していく感情が本作の見どころである。

 またヒロインたちのキャラクターもいい。皆とにかくチャーミングでいじらしいのだ。ていねいに描かれる彼女たちの心情やその変化にも注目してほしい。

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「私と本気で夫婦ごっこをしてみない?」ドキドキの同居がスタート

 次郎の通う青瞬高校では、3年生になると「夫婦実習」が課せられる。これは男女一組が疑似夫婦になって一緒に住むという授業だ。学校が同居生活をカメラとセンサーでチェックしており、夫婦としてどれだけ協力し合ったかをリアルタイムでポイント化する。

 この評価によって卒業ができなくなる可能性があるため「同棲!」などと浮き足立っている場合ではないのだ。とはいえ年頃の男女、ドキドキしないはずはないのであるが……。

 次郎は幼馴染の桜坂詩織(さくらざかしおり)との疑似夫婦を夢見ていた。しかし現実は甘くない。ペアになったのは接点がほぼなかった星。詩織は、勉強もスポーツもできてイケメンというハイスペック男子・天神岬波(てんじんみなみ)と疑似夫婦になっていた。

 星はスタイル抜群の美少女で、気が強いが明るい性格。陰キャを自認している次郎は彼女と上手くやれる気がしない。ただ星は「しっかりした疑似夫婦になり成績を上げよう」と提案してくる。なぜならポイントを獲得して学年順位を上げれば、成績上位の疑似夫婦同士で“ペアを入れ替える権利”を得られるからだ。

 実は星は天神に思いを寄せており、彼と「夫婦実習」をすることをあきらめていなかった。天神&詩織夫婦と「ペア交換」ができれば次郎にとっても最高である。

私と本気で夫婦ごっこしてみない?
お互い好きな人の為に夫婦を演じて
Aランク取ればハッピーエンド
本番の練習にもなるしいいでしょ?

 こう言って張り切る星にのせられて、次郎も“いい疑似夫婦”を目指して「夫婦実習」をがんばり始めるのだが……。

憧れの彼のためにがんばるヒロインは意外とチョロい?

 同居生活が始まり、見えてくるのが星のキャラクターだ。派手なルックスで気が強いが、意外と家庭的で思いやりもある。そして惚れた相手にはめっぽう弱い。天神が他の女と夫婦なのが嫌だと泣き、天神のために弁当作りをがんばる。

 一方で次郎のことは「根暗!」「コミュ障!」と呼び、かなり雑に扱っていた。最初のうちは。星たちはポイントを稼ぐため、パジャマをお揃いにし「あーん」と言って食べさせ合う。こんな“夫婦ごっこ”いや“新婚夫婦ごっこ”に、女性慣れしていない次郎は動揺を隠せない。

 星はそんな彼をからかいつつ、成績のために良き妻になろうとする。だが気がつくと、いや最初からなぜか、彼女は次郎にドキドキしていた。

 星はモテそうな強キャラだが、実際は“何もかも初めて”の純情な少女だったのだ。

 なお彼女は特別“チョロい”わけではない。考えてみれば同居とは、たくさん話をして理解を深め、相手の優しさや頼もしさに触れることだ。結果どうなるかは容易に想像がつく。まさに同居マジックである。

 星は天神とペアになるため夫婦実習に本気で取り組む。ただ取り組むほど次郎と仲良くなっていく。結果として彼が気になる存在になってしまうのだ。

夫婦実習を通じて次郎も変わる? 陰キャ男子が意地をみせる最新刊

 フクザツなのは星の乙女心だけではない。次郎のことを明確に好きな女子もおり、彼を振り向かせようとアプローチしてくる展開も待っている。

 しかし彼女たちの気持ちやポジティブな言葉は次郎になかなか届かない。

 なぜなら彼は自分に自信がもてないからだ。次郎は勉強もスポーツも平均以下(というかやる気がないように見える)で、さえない高校生として、目立たず何となく生きてきた。そんな彼が成長をみせるのが最新のコミックス9巻である。

 青瞬高校では体育祭の準備が進んでいた。星と天神、体育が苦手だった詩織までもが張り切っている。ただ次郎は体育祭のようなイベントには居心地の悪さを感じ、皆のようにアツくなれないでいた。それでも、同居する星のがんばる姿を間近で見ることで少しずつ前向きになっていく。そして体育祭当日に起きたトラブルにより、次郎はある決断を迫られる――。

 星や詩織らヒロインたちの心情の変化をていねいに描いてきた本作だが、いよいよ次郎が変わるところが見られるのかもしれない。

 夫婦は互いに愛すると誓い、生涯を共にする契りを交わす。次郎と星はそれぞれ望む相手とペアを組みなおすために“いい疑似夫婦”になると誓った。はたしてこの誓いは守られるのだろうか。そしてこの誓いを押し進めた星の、フクザツな気持ちの行方は――。

文=古林恭