自分の頭で考え、選択するコツとは?「反対語」探しで柔軟な思考力を鍛えよう

ビジネス

公開日:2022/11/10

カギは「反対語」にあり! 思考力がある人のアタマの中身
カギは「反対語」にあり! 思考力がある人のアタマの中身』(福嶋隆史/大和出版)

 人生は、選択の連続だ。

 シェイクスピア作『ハムレット』の台詞である。近年のコロナ禍において、私たちは多くの選択を迫られてきた。優先すべきは医療か経済かなど、比べようもないものを比べ、選ぶことを求められている。

 選択するには、「その言葉が使われている意味」を理解しなければならない。医療を優先した場合と、経済を優先させた場合で、私たちの暮らしの何が変わるのか……。言葉が持つ意味を比べ、選択できる状態にすることが「区別する能力」である。この力が重要であると教えてくれるのが、『カギは「反対語」にあり! 思考力がある人のアタマの中身』(福嶋隆史/大和出版)だ。

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 本書のキーワードは「反対語」。突然だが、「姉」の反対語とはなんだろうか。「妹」なら比べたのは年齢、「兄」であれば性別を比べて答えたことになる。反対語とは、観点を変え対比することで、いくつも作り出せるものだ。このテクニックを使って、一見すると反対とは思えない言葉を「反対語」として定義しようというのがこの本。

 それでは、以下に気になったものをいくつか紹介しよう。

「夢」と「目標」

 似たニュアンスを持つ「夢」と「目標」。これらを反対語と定義するには何が必要だろうか。本書では、「夢は◯◯だが、目標は△△である」という対比の形で説明ができれば反対語と定義できるとしている。◯◯と△△の部分には反対の言葉、もしくは否定の表現が入る。

 例えば以下の通り。

【反対の言葉】夏は暑いが、冬は寒い。
【否定表現】夏は暑いが、冬は暑くない。

 ここでは、反対の言葉を使って考えてみよう。夢はいつ叶えられるかわからない、達成まで時間がかかるもの。一方、目標は来週のテストや次の大会など、近いうちに行われるものに対して設定されることが多い。つまり「夢は(時間的に)遠いが、目標は近い」となるのだ。

「医療」と「経済」

 次は冒頭でも少し触れた「医療」と「経済」を比べてみよう。ここでは、コロナ禍においてどちらを優先するか?と問われたと想定する。ゴールは「医療(優先)は◯◯だが、経済(優先)は△△だ」のように、対比的に説明すること。

 この場合、まず医療・経済を優先する行動とは具体的には何か?を挙げていく。人流を「抑える/抑えない」、旅行や食事などの行動を「制限する/制限緩和する」などが挙げられるだろう。医療を優先して人流の抑制や行動制限をすれば、感染者数の減少が期待できる。個人を守る方法であると言えるだろう。対して経済を優先し制限を緩和する政策は、コロナ禍以前と変わらない経済活動が期待できる。感染者は増えるが、それ以外の人たちで経済を回し続け社会を守ることが可能だ。

 よって『医療は個人を優先するが、経済は社会を優先する』が正解の一つとなる。自分という個人、他人の集まりの社会、という点において反対の意味で対比しているのがわかるだろう。

「幸運」の反対語は?

 ここまでは2つの言葉の意味を整理し、反対語であることを確認・定義してきた。次は、「幸運」の反対語になり得る言葉を考える。早速だが、幸運という言葉はどんな時に使うだろう。

「ポケットから100円が出てきた!」
「雨予報が外れて濡れなかった!」

 こんな瞬間が思い浮かばないだろうか。本書では「幸運は一時的なものである」と述べている。これをヒントに、一時的ではなく長続きする幸せが幸運の反対語になり得ると推測できる。整理すると「幸運は一時的だが、□□は長期間続く」となる。

 幸運より幸せが長く続くイメージの言葉を探してみよう。朝から晩までいい気分。そんな時、「今日はなんだかハッピーだったな」と思うのではないだろうか。ハッピーは日本語で「幸福」。ということは、『幸運は一時的だが、幸福は長期間続く』と説明でき、「幸運」の反対語は「幸福」であると言えるのだ。

 著者の福嶋隆史氏は、公立小学校の教師を経て、小学生~高校生向けの国語塾を創設したという経歴の持ち主。本書で紹介されたワークは、塾の生徒たちも解いてきた問題なのだそう。子どもたちの回答例も紹介されているが、その柔軟な思考に刺激を受けること間違いなしだ。選択の連続である人生を乗り切るため、私たち大人も思考力に磨きをかけてみてはいかがだろうか。

文=冴島友貴