人が脱落していく一番の原因は「見栄」。「規模」や「地位」に捉われすぎてはいけない/君は誰と生きるか
公開日:2022/11/18
いい出会いは、
結局こんな人のところにやってくる
「ところで、君はどんな人を応援したくなる?」
「えっと、一言で言えば、がんばっている人ですかね」
「うん、そうだよね。例えば、高校野球がなんであんなに人の心を打つかっていうと、選手たちが純粋な気持ちで自分の力を出し切ってるからだよね。そしてもう一つ、応援してる人たちもただ純粋に自分のチームを全力で応援してるだろ。あの純粋な姿に、人は感動するんだよ」
僕はマウンドにいる球児たちにも感動するが、スタンドで声を枯らして応援している人たちの姿を見て、ふいに涙を流してしまうことがある。
「人って不思議な生き物でね、油断すると楽をしたくなる半面、がんばってる人を見ると、なぜか感動して応援したくなるんだよ。この話から何を伝えたいかわかるかい?」
「自力を出すということですか」
「そのとおり。感が冴えてきたね」
師匠の好きなところは、間違っているときは間違っているとはっきり言うが、ほめるときは全力でほめてくれるところだ。
ただ単に「人をやる気にするために、とにかくほめまくりましょう」という打算的な理論の人より、よっぽど愛を感じるし、やる気が湧いてくる。
「人間関係にも言えることなんだけどね、人って、特に成功者と呼ばれる人って、ただ出会って名刺交換したくらいでは力を貸してはくれないんだよ。その人がどんな在り方で生きているか、今現在、どんな努力をしているか、をしっかりと見抜くものだ」
「小手先のテクニックは通用しないということですね。わかる気がします」
「そもそも、そういう人は忙しいし、いろんな人が下心を持って近寄ってくる。だから本物にしか反応しない。その点はシビアだよ。大切なことはね、やっぱり自力を出すってことなんだよ。そこをしないでいくら人と会っても、それは時間とお金をただ使うだけ。それだけで誰かが力を貸してくれるほど、世の中は甘くない」
なるほど。さっきまでの自分に言ってやりたくなる。
「でもね、逆に自分のできることを全力でやっている人を見落とすほど、世の中は厳しくもないんだよ」
「と言われますと?」
「本物の成功者ってね、未来の本物を見抜く目を持ってるんだよ。登ってきた自分の経験から磨かれた観察眼もあるし、何より、過去の自分と同じ匂いをした人を見抜くんだ」
本物は本物を見抜く——。
これはこのとき初めて聞いた言葉だが、僕自身、この日以来、この言葉がとても好きになり、いろんな若い人に会うときに使うようになった。