渡辺直美、坂本龍一…1000人の成功者にインタビューした著者が見つけた、8つの成功法則とは?

ビジネス

公開日:2022/11/10

NYに挑んだ1000人が教えてくれた8つの成功法則
NYに挑んだ1000人が教えてくれた8つの成功法則』(高橋克明/KADOKAWA)

 全米向け日本語新聞『ニューヨークBIZ』の発行人であり、インタビュアーである高橋克明氏は、「発行人インタビュー:ガチ!」という、紙面の連載を長年担当してきた。高橋氏がニューヨークを訪れる日本の各界の著名人に会い、1対1、予定調和なしの「ガチンコ(真剣勝負)」で話を聴くこの連載がはじまったのは2006年。次第に人気を呼び、同紙の経営危機を幾度も救った名物企画となっていった。

 20年近くの中で、1000人以上のトップランナーにインタビューを行ってきた高橋氏はある時、自身の「シビれた言葉」「刺さった言葉」を通して「彼らに共通した成功法則を見つけよう」と決める。本書『NYに挑んだ1000人が教えてくれた8つの成功法則』(KADOKAWA)では、高橋氏が発見し、言語化した成功の法則が、8つのカテゴリで語られる。

 たとえば、「人の話は聞かない」こと。もっとも、これは文字通りに受け取ってはならない。人からの親切なアドバイスや忠告には耳を貸すべきだという前提の上で、自分の本当にやりたいことや叶えたい夢については、他者の意見を求めるのではなく、自分で判断すべきだというニュアンスだ。

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 本書で言えば、渡辺直美さんが「人の話を聞かず」成功した好例だ。ニューヨークならではのエンターテイメントを勉強するため、2014年に芸能活動を少し休止し、3カ月の期間限定留学に行く。コスパを度外視したこの選択は彼女の大きな分岐点となり、やがて2021年、ニューヨークに移住しての活動を開始する。

 コロナ禍の真っただ中だったこともあり、周囲の人間のほとんどに引き止められた渡辺さんだが、海外での活動が子どもの頃からの夢だった彼女は、その心の声に従う。現在の渡辺さんの豪快な笑顔から、夢をあきらめることに世界情勢やタイミングがどうというのは言い訳でしかないと、高橋氏は確信したという。

 または、「仕事人間になる」こと。仕事人間という言葉からは、楽しみを知らない幅の狭い人間という印象もあるものの、高橋氏がインタビューをした1000人は、何よりも仕事が趣味よりも楽しいと考え、仕事に夢中になっている人たちばかりだったという。

「結局、生きている時間の中で、音楽を作ることがいちばん楽しいんですよ」と語る坂本龍一さんや、「(やることが)変わっていくと、いつも新鮮でいられるよね」と語る木梨憲武さんの姿から、仕事が単なる金銭、ひいては社会的地位を得るための手段ではなく、人生を充実させるための大きな礎であることが実感できる。

 こうした成功者たちの言葉は、いかにもな「いいことを言おう」という演出のもとで登場するわけではない。むしろ、気張らない語り口の中でさらりと登場し、だからこそ、それぞれの人たちの血肉――人生哲学と不可分なものであることがわかる。そして、そうした哲学が確かな形で引き出されるのは、真摯に目の前の人への対峙を続け、理解のための前準備を欠かさない高橋氏の姿勢があってこそのものだろう。これが大げさではないことを、ぜひとも本書を読んで納得していただきたい。

 ところで、冒頭に述べたように(また、本書のタイトルにもあるように)、本書に“大文字”として登場する成功法則は8つだが、実はエピローグで、9つ目の成功法則が語られる。それは……いや、これは本書にこれから触れる読者のための、大きな楽しみにとっておこう。

文=若林良