優しくて、ゆっくりとしたふたりの空気が心地いい『隣の席の、五十嵐くん。』/斉藤朱夏のしゅか漫画⑪
公開日:2022/11/19
本屋さんに行って、隅々まで本棚を確認して気になるものを探すのも好きだけど、電子書籍でしか掲載されていない漫画を探すのも大好き。
最近は電子書籍でも漫画を買うことが多くなった私。
移動中に手軽に読めるのはやっぱりいい、時代はこうして変化していくんだろうなって思う。
今回紹介するのは、各電子書籍サイトで連載中の『隣の席の、五十嵐くん。』(瞳ちご、ひなた/Bコミ)だ。
スクールカースト上位の賑やかな男の子や派手な女の子がちょっと苦手な、クラスの隅っこにいる大人しめな女の子・今井椿。新学期のクラス替え、隣の席になったのは大柄で不愛想でちょっと怖い感じの学校の有名人・五十嵐くん。
一緒の委員会になり少しずつしゃべるようになったふたり、普通の女の子がゆっくりとちょっとずつ恋をするそんなお話。
まだ完結しておらずこの物語がどんな風に進んでいくのだろうと、早く続きが気になってしょうがなくなり、読み始めたら時間を忘れるぐらい物語に入り込んでいた。
椿と五十嵐くんの派手でもなくふたりしかわからない空気が読んでいてとても心地よかった。
優しくゆっくり流れるその空気が少しいいなぁって羨ましくなる。
そのゆっくりが、とてつもなくいいのだ。
一個一個を噛みしめ、初めてがたくさんだから口から心臓が出るぐらいドキドキしたり。
私なんか……と思っている椿が少しずつ自分を出せるようになる瞬間がグッとくる。
恋のお話でもあるが、学校生活での友達関係が妙にリアルに描かれている。
学生の時に自己主張をするのってやっぱり緊張するし、人の目が気になってしまう。
原因は自分ではないのにいつの間にか発言をしなかった自分が悪いみたいな空気が流れたり、強く当てられてしまったり、歪んだ空気が流れる瞬間がある。
そう思うと学生の時っていろんな空気が流れているし、その空気の変わる瞬間って一瞬な気がする。
そんな空気をたくさん感じさせてくれる漫画だ。
五十嵐くんの芯の強さがまたかっこいい。
君は君、僕は僕、と外見で物をを判断しなかったり
しっかりと人を注意できたりする姿に、こういう人っていつも大切なことを教えてくれるし、ハッとさせられることが多い。
ゆっくりと進む恋の物語だけど、今現在学生のみんなにも読んでいてほしい作品だなと思う。
登場人物に自分と似ている人がいれば、その発言や行動を見て周りがどう思っているかわかるかもしれない。