人気料理人の“賛否両論”笠原将弘氏による「鶏むね肉」専門書! むね肉を攻略して、節約&おいしい食卓を

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公開日:2022/11/19

 人気和食店の店主「賛否両論」の笠原将弘さんが、11月に1冊丸ごと「鶏むね肉」に特化したレシピ本『和食屋がこっそり教えるずるいほどに旨い鶏むねおかず』(笠原将弘/主婦の友社)を上梓した。

 鶏むね肉は、低カロリー・高タンパクだから健康にいいし、値上げが続く昨今に手頃な価格で手に入る家庭のお助け食材。…のはずなのだが、「今日は鶏むね肉で1品作ろう♪」と前向きにはなれない人が多いのは、その扱いの難しさからかもしれない。

 炒めもの、揚げもの、蒸しもの、焼きものと幅広く使えるのだけど、一歩間違えると食感はパサパサに。私自身もこれまで何度も失敗し、鶏むね肉にはなんとなく苦手意識を持っている。

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 でも笠原さんのレシピならもしかしたら克服できるかも…という期待を抱き、本書の中から何品か作ってみることにした。

 実は笠原さん、実家が焼き鳥屋を営んでいたため鶏肉への思い入れは人一倍強く、本書の冒頭でも「子どものころから毎日のように、鶏肉を食べていた。今でも一番好きな肉はと聞かれれば鶏肉と答える」と語るほど。「ポイントさえ押さえて料理すれば極上の一皿に変身してくれる」という。

 笠原さんのレシピ本はいつもそうだが、料理を趣味にしている人でも「へ~!」と感じるようなプロのテクニックがちりばめられていて、レシピ通りに作るだけで驚くほどおいしい料理が完成する。今回はどんな仕上がりになるんだろう…ワクワクしながらまずは第1章「家族が好きな鶏むねそうざい」の中から「鶏むねのから揚げ」にチャレンジ!

基本はそぎ切り。2度揚げでカラリ! 「鶏むねのから揚げ」(p.16)

鶏むねのから揚げ

 わが家でも鶏肉のおかず人気No.1といえるから揚げ。笠原流のポイントは、カットする時は火通りのいい「そぎ切り」、そして「2度揚げ」でカラッと揚げることだ。

 カットの仕方はこちらを参考に。繊維にそって3つに切り分けてから繊維を断つように切るとやわらかく仕上がる。

和食屋がこっそり教えるずるいほどに旨い鶏むねおかず p.10

 作り方は鶏肉を一口大に切り分け、しょうがのすりおろし、みりん、しょうゆ、こしょうをもみ込み、15分ほど置く。汁けをきって小麦粉、片栗粉を加えて「どろっとするまで」もみ込み、1切れずつ片栗粉をまぶして5分ほど置く。170度の揚げ油で3分ほど揚げ、一度引き上げて3分ほど置き、再び170度の油で1分ほど揚げれば完成だ。

 レシピのポイントを守って作ってみたら、衣はちゃんと香ばしく、肉は感動レベルのやわらか~い食感! 写真では伝わりにくいが、揚げたてのから揚げの切り口からは肉汁がじゅわっとあふれるのが目に見えるほどだった。

 このから揚げ、マヨソースをからめれば鶏マヨに、チリソースなら鶏チリに、ほかにも酢鶏や南蛮漬けと自在にアレンジできる(本書にはアレンジレシピも掲載)。一日頑張って帰ってきた夕飯にこんな一皿が待っていたら、疲れもきっと吹き飛ぶはず。

作り置きを活用すれば10分で! 「よだれ鶏」(p.42)

よだれ鶏

 海外で現地の旨いものを食べることがなによりの楽しみだという笠原さん。第2章「旅先で見つけた世界の鶏むね料理」では、中華や韓国、アジア、フランス、イタリアなどの世界の料理を教えてくれている。

 そこで2品目は手軽に作れそうな「よだれ鶏」をチョイス。冷蔵庫で3日ほど保存できる「旨ゆで鶏」を作っておけば、帰宅後10分で食卓に運べる時短な一皿だ。

和食屋がこっそり教えるずるいほどに旨い鶏むねおかず p.12-13

「旨ゆで鶏」の作り方は、鶏むね肉(厚さを均一にする)、ねぎの青い部分、昆布、水、酒、薄口しょうゆを鍋に入れて火にかけ、煮立ったらアクをのぞいてごく弱火で7~8分ゆで、火を止めてキッチンペーパーをかぶせ、冷めるまでおいておく簡単なレシピ。

「よだれ鶏」はこれを一口大にカットして、ゆでたもやし、細ねぎの小口切りとともに盛りつけて、たれ(いり白ごま、花椒、旨ゆで鶏のゆで汁、しょうゆ、酢、砂糖、ラー油)をかければできあがり!

 しっとりとやわらかい肉の食感は申し分なし、花椒を効かせたたれも絶品だった。そしてもう1つ私の心を射抜いたのが、旨ゆで鶏の残ったゆで汁。鶏や昆布の旨みが凝縮されていて、冷蔵庫にあった半端野菜を入れてスープを作ってみたら、子どもが「何このスープ!! すごくおいしい」と言って何度もおかわりをしてくれた。

旨いつまみで今すぐ飲みたい時は「ゆで鶏錦木(にしきぎ)」(p.78)

ゆで鶏錦木

「旨ゆで鶏」の残りを使っておつまみをもう1品。

「ゆで鶏錦木」というわさびを効かせた珍味で、大根おろし、青じそ、焼きのり、削りがつお、ねりわさび、しょうゆを手でほぐした旨ゆで鶏にあえるだけの簡単なレシピだ。それなのに、味はとっても上品。飲み始めた1品目にこんな小鉢が出てきたら、グッときてしまう。

 第4章「鶏むね肉の極上つまみ」のページには、「ゆで鶏クレソンキウイあえ」とか、鶏肉で納豆を巻いて焼いた「納豆巻き焼き」とか、料理屋さんに出てくるような(でも家で手軽に作れる)粋なおつまみがいろいろ紹介されている。

 実用的なおかずはもちろん、鶏の皮の有効活用法や下味を付けて保存する方法など、日々の料理に使える小技も教えてくれる本書。この1冊を手元においておけば、鶏むね肉がきっとどんどん好きになっていくはず!

文=齋藤久美子