渡辺直美の「NEO浮世絵」を筆頭に、着物の魅力を再発見させられる1冊――『KIMONOanne. Vol.4』

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更新日:2022/11/24

KIMONOanne. vol.4
KIMONOanne. vol.4』(TAC出版編集部/TAC出版)

 近ごろ、京都や浅草など「日本らしさ」が映える場所では、着物姿の若者たちを多くみかける。レースの半襟をつけたり、足元にスニーカーやブーツを合わせたり、色使いがポップだったり……とにかく自由でカワイイ! 実は現在、SNS世代の間では着物ブームが進行中。高額だったりルールが難しかったり(初心者にダメ出しする「着物警察」までいた)、なにかとハードルが高かった着物の世界だが、いまは自分らしさを気軽に演出できる自由な世界へと変化しているのだ。渡辺直美の艶やかな着物姿にひきつけられる『KIMONOanne. vol.4』(TAC出版編集部/TAC出版)は、そんな着物おしゃれの「最前線」を知ることができるオススメの1冊だ。

 なんといっても、まず目をひくのは「NEO浮世絵」をテーマにしたという渡辺の表紙と巻頭グラビアだろう。その鮮やかな色使いや高いファッション性は圧巻で、かつて多くの外国人が「浮世絵」に日本の芸術性を発見して衝撃を受けたというが、なんだかこのNEO浮世絵グラビアで、日本人の私たち自身が「KIMONO」の魅力を再発見させられるかのよう。とにかく「今」の着物の世界に勢いがあることを実感するのは間違いない。

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KIMONOanne. vol.4

KIMONOanne. vol.4

 続くページも「KINONO quatre saisons」「みんなの成人式写真館」などさまざまなテーマで、自由でポップな着物姿が次々に紹介されていく。モデルをしているのはプロのファッションモデルではなく、着物好きのアーティストや人気インスタグラマーたち。だからこそ「着物が好き!」という気持ちがまっすぐ伝わってきて、なんだか写真集のようで楽しくなってくる。

KIMONOanne. vol.4

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KIMONOanne. vol.4
コンセプチュアルな着こなしは思わずワクワクしてしまう。歌手のLiSA も登場(3枚目)

 さらに本書のうれしいところは、「私も着物の世界にトライしてみたい!」という気持ちにもちゃんと答えてくれるところだろう。着物1枚でできる着回し術、着物の下に着る下着の工夫、おしゃれな半襟や帯留めなどのアイテムとショップ情報、安くて可愛い着物を安く手に入れられる量販店情報……etc. いわゆる着物本にありがちな「小難しい着物のルール」ではなく、着物をリアルに「使えるファッションアイテム」にするための工夫をいろいろ教えてくれるのだ(着物男子向けの情報もあるので、着物が好きなら男女問わず参考にすべし)。

KIMONOanne. vol.4

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KIMONOanne. vol.4

 中でも「うさこま先生のタンスの肥やしジミ着物再生術」は、特別に着物を買いにいかなくても「私にもできるかも!?」と思わせてくれる秀逸な特集。うさこま先生は、おばあちゃんやお母さんのおさがりにありがちな「平凡」な着物を、洋服と組み合わせたり小物にこだわったりすることで見事にいまっぽくおしゃれに蘇らせてしまう。ヘアメイクの工夫まで教えてくれるので、気軽に最初の一歩が踏み出せそうだ。

 なお特別付録は大人気の江戸時代の絵師・伊藤若冲の「群魚図」をモチーフにしたオリジナルデザインの縮緬ふろしき。80×80cmと大判なので、普通にふろしきとして利用するだけでなく、着物のときのエプロンがわりにしたり、かごバッグの目隠しにしたりといろいろ使えるアイテムだ。

KIMONOanne. vol.4

 とにかく本書が教えてくれるのは「着物ってこんなに自由に楽しんでいいんだ!」ということ。着物のファッション性を魅せるだけでなく、ちゃんと使える実用性に落とし込んでくれているのもうれしい。本書をきっかけに、思い切ってあなたも「NEO KIMONOワールド」に飛び込んではいかが?

文=荒井理恵