300万人以上が涙! ゾウが訪れるボツワナの窓、飛散防止のテープが貼られたウクライナの窓…世界の人々と、自室の窓から見える景色を共有したら
公開日:2022/11/25
隣のマンションと小さくちぎれた空しか見えない自宅の窓からの景色が、どうしても嫌いになれない。それは、窓からの景色は私と世界との接点であると同時に、私の日常を映し出す鏡のように思えるからだ。窓は私たちの生活を物語る。あなたの家の窓からはどんな景色が見えるだろうか。その景色を見ながら、あなたは何を思うだろうか。
『世界の家の窓から 77ヵ国201人の人生ストーリー』(主婦の友社:編/主婦の友社)は、世界中の窓辺を訪れることができる写真集だ。この本のもととなったのは、2020年3月、世界中がステイホームを余儀なくされ、窓からの景色を見るしかなくなったコロナ禍初期に、ベルギー人のグラフィック・デザイナー、バーバラ・デュリオさんが立ち上げたFacebookグループ「VIEW FROM MY WINDOW(VFMW)」。「自宅の窓からの風景を写した写真1枚」と「状況を説明するコメント」だけをシェアするこのグループは、欧米を中心に爆発的人気を呼び、たった1カ月で全世界の200万人以上が参加。CNNやBBCなど有名メディアでも多数取り上げられるなど大きな話題となり、現在では世界100カ国以上から300万人を超える人々が参加している。
この本では、その投稿の中でも、世界77カ国201人の写真とエピソードを厳選。コロナ禍によって海外に行くことが減った昨今だが、多様な国のリアルな窓辺の風景を見れば、世界をすぐ身近に感じることができる。
コロナ禍でも変わらない日常を過ごすゾウたちが訪れるボツワナの窓。摩天楼を望むカタールの窓。オーロラ輝くノルウェーの窓。ロバが牛乳配達に出かけるスーダンの窓。活火山の噴火が見えるアイスランドの窓。桜舞う日本の窓。ガラスに飛散防止のテープが貼られたウクライナの窓…。「誰かの家の窓からの眺め」がどうしてこんなに心を揺さぶるのだろう。ひと口に窓と言っても、そこから見える景色はさまざま。撮影された写真は、ある人にとっては当たり前の景色なのかもしれないし、ある人にとっては特別な景色かもしれない。心弾むような景色もあれば、胸が張り裂けそうになる景色もある。だが、そのどれもが色鮮やかに、美しく目に映る。
写真に添えられたコメントも、私たちの想像を掻き立てる。3歳のときに両親に連れられて来て以来、人生のほとんどを難民キャンプで暮らしているという人。世界一周旅行中に国境封鎖に遭い、仮住まいで暮らしている人。つらかった結婚生活に別れを告げて新生活を始める人。愛犬の死、友人の死、家族の死を悼む人。自殺未遂を経て夢をかなえたという人…。そこには世界中の人々の人生が見え隠れする。窓辺に隠された一人ひとりの物語。その一つひとつを見ていると、そこで暮らす人々のことを考えずにはいられない。どの窓辺にいる人もどうか幸せであってほしい。そういう風に、この世界の平和を願わずにはいられなくなる。
コロナ禍で外出もままならない最中、世界中の窓辺の景色は多くの人々の心を救ったに違いない。そして、それは今も変わらない。ページをめくればめくるほど、静かな感動が胸を満たし、私たちの心を穏やかな気持ちにする。窓から見える景色がどんなに違っていても、きっとこの世界は繋がっている。そんなことに気づかせてくれるこの優しい写真集を、あなたにも手にとってほしい。
文=アサトーミナミ