思わず移住したくなる! 突如スウェーデンに移住した会社員2人の生活を描く『北欧ふたりぐらし』

マンガ

公開日:2022/11/26

北欧ふたりぐらし
北欧ふたりぐらし』(だたろう/白泉社)

 やることの多い慌ただしい生活も、それはそれで楽しいが。日々何かに追われていると、時折ふと何にも縛られないゆるやかな時間を過ごしたくなる。普通はこういう時、ちょっとした気分転換をして、また現実へと戻ってくるもの。筆者も、そんな時はふらっと旅に出るようにしている。しかし中には、「自分に合った国に引っ越したい」と考え、それを実行してしまう強者もいる。

北欧ふたりぐらし』(だたろう/白泉社)は、日本人同士のカップルでありながら、突如スウェーデンに移住した2人の生活を描いた物語。2021年より、隔月刊コミック雑誌『ヤングアニマルZERO』で連載されている。

 本作の主人公は、考えすぎるがゆえに「ボーッとしてる」と言われてしまうおっとり系OL・末次ふゆ美と、言いたいことはズバッと言ってのける自由人気質な男性会社員・田岡陽平。

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北欧ふたりぐらし

北欧ふたりぐらし

 ある仕事で出会い、その後意気投合したふゆ美と陽平は、気づけば互いの合鍵を持つ間柄になっていた。そんな中、テレビでスウェーデン特集を見ていた2人。コーヒーやお菓子を楽しむ習慣「フィーカ」や終業時間の早さを見て、ふゆ美は「陽平さんと……スウェーデンで暮らしたい……」と一言。ここから、2人の移住計画は始まった。実はこの日の前日、陽平はスウェーデン転勤を打診されていたのだ。

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 そして数か月後、2人は本当にスウェーデンにいた。まずは陽平の「スカヴィフィーカ?(お茶しませんか?)」というお誘いでシナモンロールをお供にフィーカを堪能し、それから森を散策するなど、ゆったりと流れるスウェーデン時間を満喫していく――。

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 筆者は本書で初めて知ったのだが、スウェーデンでは「アッレマンスレッテン(自然享受権)」が憲法で認められており、スウェーデンに住む人はもちろん、旅行者であっても、森や川など自然に自由に立ち入ることができるそう。花やきのこを摘んだり、魚釣りをしたり、焚き火やキャンプも自由なのだとか。今までは日本が一番!と思って生きてきたが、これを知ってその心が揺らいでしまった。日常のお散歩コースが広大な森や美しい湖だなんて、羨ましすぎる! 仕事も夕方4時に終わるとくれば、毎日でも通ってしまいそうだ。

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 スウェーデン生活では、陽平は仕事を、ふゆ美は語学の勉強を頑張りながら、少しずつ現地の文化に触れ、吸収していく。スウェーデン人は、家にお客さんが来ると家中を案内してまわったり、夫婦であってもそれぞれ自立した生活を送っていたり、「ラーゴム(ほどほど)」の影響かIDの入手が予定より1ヶ月以上も遅れたり……日本人には想像できない自由さを当たり前として生きているのだ。

 その後も、スウェーデン人が本気になる「ミッドサマー(夏至の日)」のお祭りなど、新鮮な光景が次々と描かれていく。歌いながら強烈なお酒を飲み干し、老若男女問わず童謡のような歌で可愛いダンスを踊る光景には、筆者も思わず目を疑ってしまった。でも楽しそう……!

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 また、巻末の予告によると、2巻では幸せの国スウェーデンの“意外な一面”についても触れられるという。本当に、読み進めれば進めるほどスウェーデンのことを知りたくなってくる。

 こうしたゆるい生活を見ていると、当たり前のように忙しなく動いている日本人は、果たして本当にこれでいいのか?と考えずにはいられない。「いつも何かに追われていて余裕がない」「趣味って何だっけ?」という生活を送っている人は、この『北欧ふたりぐらし』を読んで、思い切って自由な時間を作ってみるといいかもしれない。筆者も、また次の旅の計画を立てて、ふらっとどこかへ行きたくなった。

文=月乃雫