「恩返しをしたい」浅野拓磨選手の強い思いとは――/サッカー日本代表:浅野拓磨『考えるから速く走れる ジャガーのようなスピードで』

スポーツ・科学

公開日:2022/12/3

 2022年11月23日(水)日本中が歓喜に沸いた。FIFA ワールドカップの初戦、優勝候補の強豪・ドイツに2対1で逆転勝利した日本! FWの浅野拓磨選手がゴールを決めた瞬間、感動して涙した方も多いのではないでしょうか。

 今回は、今最も注目されてるサッカー日本代表:浅野拓磨選手の書籍『考えるから速く走れる ジャガーのようなスピードで』をご紹介します。

「誰よりも深く考えなければ、誰よりも速く走ることはできない」……。7人兄弟の3番目という大家族に生まれ、サンフレッチェ広島の10番からあっという間にプレミアリーグ・アーセナルに完全移籍した浅野拓磨選手。

“世界最速”とも評されるサッカー選手は、試合中にいったい、どんな景色を見ているのか? 海外でいま直面している悩み、そして、日本代表への強烈な思いとは――。

 浅野拓磨選手の思いが詰まった『考えるから速く走れる ジャガーのようなスピードで』を、ぜひご覧ください!

※本作品は浅野拓磨著の書籍『考えるから速く走れる ジャガーのようなスピードで』から一部抜粋・編集しました

浅野家に生まれた奇跡

ぼくがサッカーをやる理由は一つだけ

 アーセナルへの移籍を決断したとき、森保さんにもらった言葉によって、ぼくは「自分は何のためにサッカーをしているのか」を思い出しました。

 その答えは、一つしかありません。

 自分を応援してくれる人たち、支えてくれる人たちに恩返しをすること。ぼくがサッカーをやる目的は、これ以外にありません。

 アーセナルに行くか、ドイツのクラブに行くかを決断するために考えたのは、「どちらのチームでプレーするほうが、自分を応援してくれるみんなに大きな喜びを与えられるか」でした。

「エミレーツ・スタジアムでプレーしている姿を見てみたい」

 森保さんの言葉が、ぼくの「恩返しをしたい」という気持ちにグサッとハマった。だから、アーセナルに行くことを決めて、大沢さんにもそう伝えました。大沢さんは「よかった」といってくれました。誰かに報告するたびに、みんなが「よかった」といってくれたんです。

 両親には、電話で伝えました。お母さんはものすごく嬉しそうな声で「よかったあー」と喜んでくれた。その日は朝からずっと、おばあちゃんの仏壇の前で「タクがアーセナルに行きますように」と手を合わせていたそうです。その話を聞いて、ちょっと鳥肌が立ちました。ぼくにとって〝おばあちゃんの仏壇〟は、とても特別な存在だから。

 ものすごい勢いで喜んでくれたのは、お父さんも同じでした。「もしドイツのクラブに決めていたら」を想像するのが怖くなるくらい、二人ともすごい喜びようだった。その反応を見て、自分の出した答えが間違っていなかったと確信しました。

 やっぱり、ぼくはみんなの応援の力に背中を押してもらっている。選手としては試合に出られる確率が高いチームを選ぶのが普通だけれど、自分にはもっと大切なことがある。

 それを基準として決断したら、みんなが喜んでくれた。だからぼくは、自分を応援してくれる人たち、支えてくれる人たちに恩返しをしたい。

 ぼくがプロの世界でサッカーをやりつづける理由を再認識できたという意味で、移籍に関する決断には、ほんとうに大きな意味があったと思います。

<第4回に続く>

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