ブンデスリーガとJリーグの大きな違いとは?/サッカー日本代表:浅野拓磨『考えるから速く走れる ジャガーのようなスピードで』
更新日:2022/12/5
2022年11月23日(水)日本中が歓喜に沸いた。FIFA ワールドカップの初戦、優勝候補の強豪・ドイツに2対1で逆転勝利した日本! FWの浅野拓磨選手がゴールを決めた瞬間、感動して涙した方も多いのではないでしょうか。
今回は、今最も注目されてるサッカー日本代表:浅野拓磨選手の書籍『考えるから速く走れる ジャガーのようなスピードで』をご紹介します。
「誰よりも深く考えなければ、誰よりも速く走ることはできない」……。7人兄弟の3番目という大家族に生まれ、サンフレッチェ広島の10番からあっという間にプレミアリーグ・アーセナルに完全移籍した浅野拓磨選手。
“世界最速”とも評されるサッカー選手は、試合中にいったい、どんな景色を見ているのか? 海外でいま直面している悩み、そして、日本代表への強烈な思いとは――。
浅野拓磨選手の思いが詰まった『考えるから速く走れる ジャガーのようなスピードで』を、ぜひご覧ください!
※本作品は浅野拓磨著の書籍『考えるから速く走れる ジャガーのようなスピードで』から一部抜粋・編集しました
ブンデスリーガ奮闘録
ブンデスリーガとJリーグはこんなに違う
「ブンデスリーガのレベル」については、いろいろな人からよく聞かれます。ただ、Jリーグとはサッカーそのものの性質が違いすぎると感じていて、比べようがありません。
「日本と世界」という意味でその違いを比較するなら、日本代表の一員としてブラジル代表やベルギー代表など世界トップレベルの国と対戦すると、やはり、選手個々のレベルの違いを痛感します。その点は、世界からトップレベルの選手が集まるブンデスリーガでも同じ。同じドイツ国内でも、ブンデスリーガ一部と二部のあいだにも「個のレベル」における差は感じています。
たとえば、一対一の局面。ブンデスリーガと日本では、守備のやり方に大きな違いがあります。
Jリーグでプレーしていたころは、ボールをもっている自分のタイミングやペース、リズムでプレーすることができました。でも、こちらでは同じ感覚でプレーすることができません。ボールをもっているときだけじゃなく、オフ・ザ・ボールの動きも同様です。
Jリーグでプレーしていたころの自分が、対峙する相手に対して〝自分の間合い〟で仕掛けられた理由は、まず、ぼくの武器がスピードであることを相手の選手が理解していたことにある気がします。ボールをもって前を向き、一対一の状況になったとき、相手はぼくのスピードを警戒して、積極的にボールを奪いに来ません。それが構えた雰囲気でわかってしまうから、自分の間合いで勝負できる。
一方、ドイツでは、ぼくの武器がスピードであることを相手がわかっていたとしても、それに合わせて構えるプレーを選択しません。一対一の状況になったら、迷わずボールを奪いに来る。
こちらの守備はよく「一発でかわされる」といわれますが、そのぶん、一発でボールを奪うチャレンジをしてきます。だから、向き合った相手の足がどれだけ遅くても、一発のタックルやボディコンタクトで奪われてしまうことがある。日本のようにスピードを警戒して下がりながらサイドに追い込み、タイミングを見計らって身体を入れてくるという〝数段構え〟の守備を、ブンデスリーガの選手たちはほとんどしません。
そうした守備の特徴は、ブンデスリーガだけではなく、ヨーロッパのリーグ全体に共通していると思います。Jリーグと見比べてみるとわかるかもしれませんが、そういう守備が定着しているから、個人の局面ではワンプレーで攻守が入れ替わりやすい。相手がチャレンジしてくるからこそ、相手をかわせることもあれば、奪われることもある。とにかく、対峙する相手の迫力が違う。一対一の守備に対する方法論の違いは、日本人の攻撃的な選手なら最初に感じる違和感で、その違いは決して小さくありません。
<第6回に続く>