家賃が高すぎ⁉ 3人のルームシェアは波乱の幕開けに…『おしりたんてい』スピンオフ!/すずのまたたびデイズ はちゃめちゃパティシエしゅぎょう③
公開日:2022/12/7
![すずのまたたびデイズ はちゃめちゃパティシエしゅぎょう](https://develop.ddnavi.com/uploads/2022/11/suzu_02.jpg)
おしりたんていスピンオフシリーズ第1巻。 主人公はラッキーキャットのすず! おしりたんていファイルシリーズから数年後。 ラッキーキャットの手伝いを続けるすずは、自分のやりたいことがわからず、もんもんとする日々。そんなとき、学生時代からの親友・あずきにさそわれ、もう一人の親友・グレねえと3人でルームシェアをすることに! あずきのかんちがいで実は超高額だった家賃を支払うために、アルバイトにあけくれながら、なかよし3人組の新生活(またたびデイズ)がはじまる!
ガタガタ……
ゴトゴト……
みんなで、なかよくお弁当をつまんでいると、車はとなり町のデコボコタウンに入りました。
あたりには、知らないお店がたくさんならんでいます。
グレねえが言います。
「けっこう、活気のある町だね。商店街もあるし、アタシたちの家はこのあたりかい?」
あずきが答えます。
「うん、そろそろね」
ガタガタ……
ゴトゴト……
けれど、あずきのことばとはうらはらに、車はなかなかとまりません。
お弁当はいつの間にか半分になっています。
活気のあるエリアをすぎて、あたりは、りっぱな家が立ちならぶ住宅街になってきました。
すずが言います。
「このあたりも静かでいいね。住宅街だし、あたいたちの家はこのあたり?」
あずきが答えます。
「うん、そろそろね」
ガタガタ……
ゴトゴト……
やっぱり車はとまりません。
お弁当は、もう空っぽです。
住宅街をすぎると、あたりの人気もなくなり、木々ばかりがさみしく立ちならんでいます。
グレねえが言います。
「……自然がゆたかでいいね。さすがにそろそろ、アタシたちの家はこのあたり?」
「うん、そろそろね」
ガタガタ……
ゴトゴト……
やっぱり車はとまりません。
今や3人を乗せた車は、森の中の道なき道を、不安げに進んでいます。
すずはだんだん、心配になってきました。
ひょっとして、あずきはこのサビオにだまされているのではないでしょうか。こんな森の中に家なんてあるはずがありません。
なにか悪いことにまきこまれるのかもしれません。すずはサビオを追いつめて、本当のことをはかせてやろうと、ひそかに、つめをとぎはじめました。
そのときです。
キキーッ! と車がとまりました。
「ついたよ! ここがあたしたちのおうち!」
あずきは車からとびだします。
そこにあったのは、森の中のお城でした。
物語の中でしか見たことのない、格調高いとんがった三角屋根、つたのはうレンガかべ、ゆるやかな曲線をえがく鉄の門をそなえた、見事なおやしきです。
木々を背景に、どうどうとたたずむようすは、まるでこの森の王様です。
すずもグレねえも、おどろいてことばもありません。
サビオが門を開き、げんかんとびらを開けてくれます。
「さあ、どうぞ」
中に入ると、おやしきは、ますますごうかでした。
「うわあ……!」
![すずのまたたびデイズ はちゃめちゃパティシエしゅぎょう](https://develop.ddnavi.com/uploads/2022/11/suzu-p28-29.jpg)
すずは開いた口がふさがりません。
そんなすずを見て、あずきは得意げです。
「すごいでしょ! 気に入ったでしょ!」
グレねえが、おそるおそるききました。
「……で、家賃は?」
するとあずきは、ますます得意げな顔になります。
「ふっふっふ。おくさん、きいておどろけ。なんとこの広――いおやしきが、今ならたったの、ひと月5万マドカ! びっくりプライスなのだ~!」
「そりゃすげえ!」
すずがこうふん気味に言いました。
グレねえはサビオにたずねます。
「本当かい?」
「いえ、うそです」
サビオはあっさり言いました。
しばらくの間、沈黙が落ちます。
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やがてあずきが、ロボットのようにぎこちない動きで、サビオをふりかえりました。
「……え?」
「お客様、ごじょうだんがお上手ですね。こちらの家賃は5万マドカではなく、50万マドカです。ほら、ちゃんと契約書に書いてあるでしょう」
サビオは、かばんから契約書を出して、あずきに差しだします。
「いち、じゅう、ひゃく、せん、まん……じゅうまん」
あずきは、やや青ざめた顔を上げました。
「……数えまちがっちゃったかも☆」
青ざめたのは、すずも同じです。
「ご、50万って! 3人でもそんな額、はらえねえよ!」
「たしかにすごい家だけど、アタシたちには分不相応かもね。もっと手ごろな家をさがそうか」
グレねえがあずきにそう言います。
しかしサビオは、契約書をグレねえにしめして言いました。
「契約を破棄されるということでしょうか? こちらの契約書にありますように、1年以内の契約破棄は違約金として3か月分の家賃をいただきます。それでもよろしいですか?」
「50万の、3か月分は……」
すずは指折り数えて計算します。
チッチッチッチ、チーン!
「150万マドカ!?」
さあ、大変です。
あずきはあわてふためきます。
「どうしよう! ギョンギョンのライブに行けなくなっちゃうよ! 小豆アイスだって買えないかも!? そんなのヤダー!」
ちなみにギョンギョンとは、あずきの大好きなアイドル歌手のことです。
すずも同じくらいあわてて言います。
「そ、そんな家賃、ボクシングの大会で優勝してもはらえねえぞ! い、いや、10連覇くらいすればはらえるかも!? うん、きっといける! よし、今からトレーニングするしかない!」
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あわあわするふたりをしり目に、グレねえは、ため息をひとつついて口を開きました。
「アンタたち、落ちつきな。――こうなりゃ仕方ない。どっちにしたってお金はかかる。だったら、はらくくってここに住むよ」
「ええ!?」
すずとあずきは、同時にさけびました。
「せっかくルームシェアするために出てきたんだからね。50万マドカの家賃ってのは、たしかに高い。だけど3人の力を合わせてバイトでもすりゃあ、なんとかなる」
サビオはグレねえのことばをきくと、ほほ笑みました。
「ワタクシもそれがよろしいかと思います」
グレねえは、まだ心が決まっていないようすのすずとあずきに語りかけます。
「もう覚悟を決めな。どうせヒマなんだろう? バイトざんまいも案外楽しいかもしれないよ。人生長いんだ、きっといつかいい思い出になるさ」
気風のいいグレねえを前に、すずもあずきも、思いきるしかありません。
「そ、そう、だよな……。やるしかない!」
「やるしか……ないのかあ~」
ふたりとも、まだ顔が少しこわばっています。
でも、考えてみてください。
ひょっとしたら、これはすずが「やりたいこと」を見つけるための大きなチャンスになるかもしれませんよ。
とにもかくにも、こうして3人の共同生活は波乱の幕開けとなったのでした。
![すずのまたたびデイズ はちゃめちゃパティシエしゅぎょう](https://develop.ddnavi.com/uploads/2022/11/suzu-p35.jpg)
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