多くの人たちの合意は「空気」や「情緒」による同調圧力でできている!?/本当の頭のよさを磨く脳の使い方

暮らし

更新日:2022/12/7

 今日の正解が、明日は不正解かもしれない時代。不透明な世の中を生き抜くためには「本当の頭のよさ」が必要かもしれません。

 脳科学者の茂木健一郎さんは「情緒に流されない力」「地図を読み換える力」「アニマルスピリッツ」「妄想する力」の4つが「本当の頭のよさ」の源泉だといいます。

 『本当の頭のよさを磨く脳の使い方』では、アインシュタインからイーロン・マスク、マーク・ザッカーバーグまで、歴史に名を残す天才や世界的起業家たちを分析し、脳科学から「本当に頭がいい人」になる方法を解き明かします。

 あなたはいま、人の意見に左右されずに、物事を正しく判断できていますか?

※本作品は茂木健一郎著の書籍『本当の頭のよさを磨く脳の使い方』から一部抜粋・編集しました

本当の頭のよさを磨く脳の使い方
『本当の頭のよさを磨く脳の使い方』(茂木健一郎/日本実業出版社)

はじめに

◉正しく判断する力が失われている

 コロナ禍における政府の対応やメディアの報道と国民の反応、ウクライナのロシア侵攻におけるSNS上のインフルエンサーと呼ばれる人たちの感情的な反応とそれに呼応するフォロワーたち……近年のさまざまな出来事に対する反応を観察していると、僕は正直、非常に残念に思います。

 

 日本では、多くの人と違うことを言ったり、違うように振る舞ったりすると批判され、「炎上」することも。

 しかし、その日本の多くの人たちの行動、民意、世論といったものが合理的判断に基づいた正しいものなのかというと、それは違います。

 多くの人たちの合意は、情緒と同調圧力によってできています。

 

 たとえば、マスクをつけない、ワクチンを打たないという人たちがいます。彼らは社会の中で「はみ出し者」で、彼らを揶揄する際に「似非科学に染まっている」「陰謀論者たち」というような言い方をします。

 しかし、一方の彼らを叩く側の多数派の集団が医学的知識を正しく理解しているかというと、そうでもないのです。「ツイッターでなんとか先生がマスクをしたほうがコロナにならないって言っていたから正しい」なんていうものは、科学的な論拠ではありません。「コロナは陰謀だと、なんとか先生が言っているから、ワクチンを打ちません」と言っている人とロジックの構造は一緒です。

 

 ロシアがウクライナを侵攻する直前、大半の専門家が「ロシアのウクライナ侵攻は起こらない」と言っていました。それを鵜呑みにした多くの人たちが「軍事侵攻をするのでは……」と言う少数派の人たちに対して、感情的に批判するようなツイートも当時、散見されました。

 しかし、いざ侵攻が始まると、大多数の人が瞬間的に「ロシア憎し」「ウクライナかわいそう」と感情的に反応しました。一方で保守派のインフルエンサーの中には感情的に「ロシア悪くない」「ウクライナ謝れ」論をぶち上げる人もいて、それについてもフォロワーたちが追随していました。

 

 結局、多くの人は科学的・論理的な根拠もないまま、誰かの意見に引っ張られて声を上げているのです。これでは「ツイッターで情報を発信する人」の思うツボです。

 フォローする相手を間違ったら一生がぐちゃぐちゃになってしまう。そんな状況で「合理的な判断ができている」「物事を正しく理解している」とは言えません。

 僕には、コロナやロシア/ウクライナの狂騒で露呈したのは、日本人の知性の薄っぺらさ、乏しさだ、と感じられてならないのです。

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